アニメブームの中で育った50代女性がもう一度見たい、リメイクしてほしいアニメ作品TOP20

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 日本で最初のテレビアニメ『鉄腕アトム』の放送が始まったのが1963年(昭和38年)。最高視聴率40%超えの驚異的人気を博し、ここからアニメ文化が花開いていく。

 アトムから3年を経て初の少女向けテレビアニメ『魔法使いサリー』(1966年〜)の放送がスタート。その後、『宇宙戦艦ヤマト』(1974年〜)、さらに『機動戦士ガンダム』(1979年〜)というヒット作からアニメの大ブームが始まっていく。時をほぼ同じくして少女たちが熱狂した『キャンディ・キャンディ』(1976年〜)や『ベルサイユのばら』(1979年〜)も放送が開始された。

 今や世界に冠たるニッポンアニメの創世記に生まれ、ヤマトやガンダム、キャンディ・キャンディやベルばらに熱狂し、大きな影響を受けて育ってきたのが今の50代であろう。

 そこで、アニメとともに人生を歩んできた50代の女性たちに「もう一度見たい、リメイクしてほしいアニメ作品」をアンケート調査した。

(※公開済みの男性編は『リメイクしてほしいアニメ作品ランキング、50代男性(オタク第1世代?)が選んだTOP20』

 まずは、300人の50代女性が選んだ作品TOP20を紹介しよう。なお、近年すでにリメイク済みの作品も含まれるが、アンケート回答者には現役アニメファンだけではなく、一般層の50代も含まれていたため、自分が子どものころにハマったアニメが実は、大人になってからリメイクされてるということを知らなかった人も多いようだ。

【50代女性がリメイクしてほしいアニメ作品TOP20】

(1人で1〜3位の作品を選んでもらい、1位=3ポイント、2位=2ポイント、3位=1ポイントで算出/アンケートは2021年2月フリージー調べ)

1位 キャンディ・キャンディ(1976年〜)147ポイント
2位 魔法使いサリー(1966年〜) 47ポイント
3位 アルプスの少女ハイジ(1974年〜) 46ポイント
4位 アタックNo.1(1969年〜) 41ポイント
5位 ベルサイユのばら(1979年〜) 38ポイント
6位 ひみつのアッコちゃん(1969年〜)31ポイント
7位 エースをねらえ!(1973年〜)29ポイント
8位 バビル2世(1973年〜) 28ポイント
9位 デビルマン(1972年〜) 21ポイント
9位 魔女っ子メグちゃん(1974年〜)21ポイント

11位 銀河鉄道999(1978年〜)20ポイント
12位 リボンの騎士(1967年〜)19ポイント
13位 タッチ(1985年〜)18ポイント
14位 はいからさんが通る(1978年〜)17ポイント
15位 キューティーハニー(1973年〜)16ポイント
16位 うる星やつら(1981年〜)15ポイント
16位 マジンガーZ(1972年〜)15ポイント
18位 Dr.スランプ アラレちゃん(1981年〜)13ポイント
18位 宇宙戦艦ヤマト(1974年〜)13ポイント
20位 ふしぎなメルモ(1971年〜)10ポイント

『キャンディキャンディ』に起こった悲劇

「なんとしてでも見たい」と多くの声が上ったのが『キャンディ・キャンディ』(1976年〜)。今回のアンケートでもダントツの人気だ。

 1976年に放送が開始され、劇場用の『キャンディ・キャンディ 春の呼び声』(1978年3月公開)、『キャンディ・キャンディの夏休み』(1978年7月公開)も製作され熱狂的ブームになった。東映社史では「当社テレビアニメの金字塔」と高く評価している。

 さらに台湾、香港、韓国などアジア各地で放送され、フランス、イタリア、ドイツでも少女たちの心をつかんだのだ。

 ところが、これほどの人気を博したというのに、原作・水木杏子と作画・いがらしゆみこの間で生じた本作の著作権帰属を巡る争いにより、原作漫画はすべて絶版、テレビアニメも再放送されず、1992年の劇場版『キャンディ・キャンディ』の公開を最後にリメイクはおろか、映像の二次使用もされていない。現在も「見たくても見られない」状態が続いている。

『キャンディ・キャンディ』のファンとしては欲求不満がたまり続けているわけだ。

 ここからは、上位の作品を選んだ理由や思い出などのコメントを紹介していきたい。(※以下、コメント部分は用字用語の変換以外は原文ママ)

●1位『キャンディ・キャンディ』

「大好きなのに、テレビで放送されることが一切ないのでどうしても見てみたい。少女漫画の最高峰だと思うのに……。ストーリーがとてもドラマティックで、主人公の前向きな姿に共感もでき、感動もいっぱいありました。アンソニーもテリュースもすてきで、恋愛漫画としてもキュンキュン要素が満載です」(50歳・大阪府)

「私は10歳だったけれど、当時の女の子はみんな夢中になった。今思い出しても胸がキュンキュンする」(54歳・東京都)

「子どもの頃はわからなかったけど第一次世界大戦という世界情勢も反映された壮大なストーリーで、今ならもっと深く観ることができるんじゃないかしら」(50歳・東京都)

「服装・髪形も可愛くて、キャンディみたいな女の子になりたいって、本気で思っていました」(51歳・大阪府)

「6歳の孫と一緒に見たいです」(54歳・東京都)

「明るく前向きなキャンディは、コロナ禍には必要なんです」(58歳・埼玉県)

ジャンルを確立した作品

 2位以下も、誰もが知っている作品が並んでいる。

 まずは『魔法使いサリー』(1966年〜)で、少女向けテレビアニメ作品の第1号であり、日本アニメ独特の「魔女っ子アニメ」というジャンルを確立した作品でもある。

 放送終了後も再放送が繰り返されたが、17話まではモノクロで制作されたため18話から再放送されていた。1989年には、前作の続編として制作された『魔法使いサリー』(第2作・1989年版)が放送された。

●2位『魔法使いサリー』

「今の子どもたちに見せてあげたい内容だから」(51歳・東京都)

「当時一緒に見ていた親友が、(最近)CSの東映チャンネルで見たと楽しそうに話してくれた。私も見たいです」(56歳・埼玉県)

「つえで魔法をかけるのは夢がある。最後に人間から記憶をなくされてしまうのが子ども心にとても悲しかったが、最も印象に残る作品だった」(55歳・東京都)

「幼いころ、妹と二人で仕事に出ている両親の帰りを待ちながら見ていた。この時間だけは寂しいと思わなかった。サリーちゃんは私にとっても友達です」(58歳・東京都)

見ているだけで幸せな気持ちに

 そして3位が、高畑勲演出作品であり画面構成の担当が宮崎駿という、のちのジブリコンビと、キャラクターデザインの小田部羊一らによって作られた『アルプスの少女ハイジ』(1974年〜)だ。

 日本国内のみならず海外でも放送され、さらに時代を超えて今なお愛されている。今回のテーマは「リメイクしてほしいアニメ作品」だが、本作に関してはリメイクを待たずとも「何度でも見たい」名作といえるだろう。

●3位『アルプスの少女ハイジ』

「みんなが知っている話だが、今の時代の子どもたちにも、これからの未来の子どもたちにも、ずっと見てほしいから」(57歳・神奈川県)

「自然の描写が美しく、何でもない食べ物がとてもおいしそうだったりして、見ているだけでいつも幸せな気持ちになれました」(54歳・大阪府)

「オープニングの『おしえて』の歌も大好き。気分がいいときに、つい歌ってしまいます」(56歳・東京都)

「小学校からの友達がCSで見たと楽しそうに話してくれたことがあります。私も見たいのですが、地上波では今は流れていないので……」(55歳・神奈川県)

このアニメが大好きでバレー部に入った

 少年たちのスポ根アニメの代表が『巨人の星』なら、少女たちのスポ根アニメは『アタックNo.1』(1969年〜)だ。もうちょっと言うと「『巨人の星』が生んだスポ根ブームを、女子バレーの世界に移植しようと試みた」と第1話の脚本を書いた辻真先氏が語っている(岩波ジュニア新書『ぼくたちのアニメ史』より)。

『サインはV!』とともに2大バレーボール漫画として知られ、当時のバレーボールブームをけん引した。2005年に上戸彩の主演でドラマ化もされている。アニメ全104話は動画配信サイトで見ることができる。

●4位『アタックNo.1』

「このアニメが大好きでバレー部に入った。今でもママさんバレーをやっています」(57歳・千葉県)

「ありえないアタックをできると思ってマネをした」(53歳・宮城県)

「私もこれでバレーボールを始めたし、イタリアの有名なバレーボールの金メダリストもこのアニメに影響されたと聞いたことがいます。アニメの影響力ってすごい」(56歳・神奈川県)

「鮎原こずえの闘志あふれる目は、星飛雄馬の炎メラメラに負けていない」(58歳・東京都)

今でもちゃんと言えます

 男装の麗人オスカルが主人公の『ベルサイユのばら』(1979年〜)は、ベルサイユを舞台にマリー・アントワネットの人生やフランス革命が描かれる壮大な歴史ロマン。アニメ化より先の1974年に宝塚歌劇団でミュージカル舞台化され大ヒット、繰り返し再演されている。アニメ版は海外での評価も高い。

●5位『ベルサイユのばら』

「フランス革命の話が好きだから」(50歳・群馬県)

「登場人物も、衣装も、宮殿も美しかった。最新の映像技術で豪華けんらんな世界を見たい」(57歳・徳島県)

リメイクは違和感を生じるから反対です。当時のままを見たい」(55歳・大阪府)

「オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ、アンドレ・グランディエ、ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン、今でもちゃんと言えます」(58歳・東京都)

“魔法のコンパクト”が大人気

『魔法使いサリー』の放送終了後、引き続き制作されたのが『ひみつのアッコちゃん』(1969年〜)。

 鏡の精から魔法のコンパクトをもらったアッコちゃんは、変身の呪文「テクマクマヤコン、テクマクマヤコン」や、変身を解く呪文「ラミパスラミパスルルルルル…」を使って、さまざまな人物に変身し事件を解決していくという物語。

 変身アイテムのコンパクトが女の子たちの間で大人気となるが、商品化しやすいようにとアニメ化の際に、大きな鏡からコンパクトに変更したという。アニメの人気にあわせ漫画版でもコンパクトで変身するようになった。後にリメイク版として『ひみつのアッコちゃん』(1988年版)が制作された。

●6位『ひみつのアッコちゃん』

「家の中にこもることが多いこの頃なので、アニメを見て、ありえない空想の世界を楽しみたい」(54歳・宮城県)

「クリスマスプレゼントに変身用のコンパクトを買ってもらい、友達にうらやまがられたのを覚えています。アッコちゃんのアニメを見ると、いつも両親(とくに父親)のことを思い出します」(58歳・東京都)

1部と2部を一気見したい

 続いて7位は、ただのスポ根とはひと味違い、少女マンガのテイストも加わった『エースをねらえ!』(1973年〜)がランクイン。放送当時は視聴率が伸びず、半年で放送は終了になったのだが再放送で人気が出て、『新・エースをねらえ!』(1979年〜)が放送されている。また1部の完全新作として映画『エースをねらえ!劇場版』(1979年)、さらにOVA『エースをねらえ!2』『エースをねらえ!ファイナルステージ』が製作されている。

●7位『エースをねらえ!』

「お蝶夫人こと竜崎麗香がすてき」(58歳・福岡県)

「テニスって、憧れのスポーツでした。当時はルールも知らなかったけれど、今は分かるから、さらに楽しめるかも」(58歳・東京都)

「最近は家にこもっているので、1部と2部を一気見したいです」(56歳・神奈川県)

男性編でも人気の作品

 ここまで少女アニメが並んだが、8位、9位には男性たちからも支持を集めた2作品があがった。しかし、男性たちから圧倒的な声があがった『宇宙戦艦ヤマト』でも『機動戦士ガンダム』でもない。

 第8位の『バビル2世』(1973年〜)は、男性編では10位。第9位の『デビルマン』(1972年〜) は男性編でも9位だった。デビルマンはテレビアニメと漫画が同時進行で制作され、世界観もストーリーも全く違う作品になった。

●8位『バビル2世』

「ロデム、ロプロス、ポセイドンというしもべたちが魅力的でした」(59歳・愛知県)

「故郷へ帰ることをあきらめた宇宙人・バビルが地球人と結婚して、ずっと時間が経過してバビル2世につながっていく。深い話です」(58歳・東京都)

●9位『デビルマン』

「主人公の不動明がかっこよかった。私が見たのは再放送だったと思う。ぼんやりとしか覚えていないので、いつかちゃんと見たいって思っています」(51歳・東京都)

「〈あれは誰だ 誰だ 誰だ〉から始まる阿久悠が作詞したテーマソングがいい。ちょっとダークな絵も好き」(58歳・埼玉県)

「デビルマンに変身するところをまた見てみたい」(54歳・兵庫県)

女の子の胸を躍らせるもの

 今回のランキングの締めは10位の『魔女っ子メグちゃん』(1974年〜)。『魔法使いサリー』、『ひみつのアッコちゃん』の流れをくむ、女の子が大好きな魔女っ子アニメだ。1年半(全72話)の長期放送となったことからも、その人気がうかがえる。

●10位「魔女っ子メグちゃん」

「今も主題歌を歌えます。毎週熱中して見ていました」(53歳・埼玉県)

「絵がおしゃれだった記憶があります。ファッションとか町の背景とか……。そこが好きでした」(50歳・北海道)

 女の子は、アニメに憧れや夢を重ね、成長していく。『キャンディ・キャンディ』が圧倒的に支持されるのは、今は見られないという欲求不満もあるが、キャンディの逆境を乗り越える姿やせつない恋愛などに胸を踊らせ、感情移入できたからだろう。
 
 アニメに限らず私たちは作品から、あの頃の夢や感動を得たいからこそ「もう一度見たい」と切望する。幸い今は、再放送を待つまでもなく、アニメ配信サイトなどで何度でも見ることができる。きっとキャンディのあの笑顔もまた見られる日が来ると信じて待ちたい。

(取材・文/水口陽子 編集/春原恵)