2021年は「一億総通信料金見直し」の年! 20GBプランから5G戦略まで、モバイル業界の1年を読み解く

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●大手MNOの20GBプランが出揃う
KDDIおよび沖縄セルラー電話は1月12日、データ通信容量20GBで月額2,480円の新料金プラン「povo」を発表しました。
NTTドコモの「ahamo」、ソフトバンクの「SoftBank on LINE」と合わせ、これで大手移動体通信事業者(MNO)の、メインブランドでの20GBプランが出揃ったかたちとなります。

総務省の指導および要請を発端とした通信料金の値下げ競争は、これで一旦の収束を見ることになりそうです。

2021年、私たちの通信料金は果たして安くなるのでしょうか。
また5Gエリアとその利便性は向上するのでしょうか。
大手MNO 3社の戦略と通信料金から、2021年のモバイル通信の行方を占います。


各社の20GBプランの戦いがいよいよ始まる


●最もシンプル!戦いの先陣を切ったNTTドコモの「ahamo」
5G通信を利用できるメインブランドでの20GBプランで先陣を切ったのがNTTドコモでした。

2020年10月に、KDDIとソフトバンクがサブブランドでの20GB/4,000円前後の新料金プランを発表し、総務省がこれに「待った」をかけたことがNTTドコモの料金プランに影響を与えたことは間違いありません。

総務省は、KDDIおよびソフトバンクに「メインブランドでの20GBプランの発表がない」点を指摘し、分かりづらいと批判したのです。

これを受けて、NTTドコモは急遽戦略を転換。
本来は、ブブランドもしくは仮想移動体通信事業者(MVNO)サービスとして用意していたahamoを、メインブランドの新料金プランとして展開することで、総務省からの突き上げ批判を回避したのです。

NTTドコモは収益悪化などを理由にNTTの完全子会社化が行われた矢先でもあったため、他社に対して強い姿勢でユーザーの獲得へ動く必要がありました。
それが、圧倒的な価格メリットと5G通信も利用できる点を前面に押し出したahamoの発表へと繋がります。


ahamo発表当時、5G通信可能な20GB/月額2,980円は衝撃だった

NTTドコモはahamoの料金プランを徹底的にシンプルに設定しました。
・分かりづらい割引施策は一切なし
・5G通信も利用可能
・通信品質もNTTドコモの他プランと全く同じ
これらを強くアピールし、消費者が何も考えずにNTTドコモの通信網を手軽に利用できる仕組みを構築しました。

NTTドコモによる新周波数帯での5Gエリア展開戦略は、
・2021年3月末までに全国500都市
・2021年6月末までにアンテナ基地局1万局
・2022年3月末までにアンテナ基地局5万局(人口カバー率55%)
このように計画しています。

また、上記の計画以外にも、
・既存周波数帯を用いたLTE技術の発展(eLTE)による5Gエリア展開
・新規5G用周波数でも通信速度で劣るSub6の電波を複数束ねて高速化を図るキャリアアグリゲーション技術の採用(Sub6-CA)
・MEC等によるネットワーク全体の低遅延化推進
このように、複数のアプローチによって5G通信環境の改善とエリア展開を進め、快適に5G通信を利用できる環境も構築していく計画です。


さまざまな技術を並行展開し、低廉な通信料金とともに5G普及に邁進するNTTドコモ


●伝家の宝刀「カウントフリー」を採用した「SoftBank on LINE」
ahamoの料金的な圧倒的アドバンテージを、ただ指を加えてみているだけの他社MNOではありません。
ソフトバンクはahamo発表から約2週間後に、20GB/月額2,980円の「SoftBnak on LINE」を発表しました。

料金だけを見ればNTTドコモに揃えてきたかたちですが、そこにはソフトバンクらしいメリットも付与しています。
それが「LINE ギガノーカウント(カウントフリー)」です。


カウントフリーは実にソフトバンクらしい施策だ

ソフトバンクはこれまでにも、メインブランドでは「メリハリプラン」で特定の動画配信サービスやSNSのデータ通信容量をカウントしない「カウントフリー」を導入してきました。
また、ソフトバンクグループのMVNOであるLINEモバイルでも、LINEのデータ通信容量をカウントしない「LINEのデータフリー」などを採用してきました。

SoftBank on LINEは、LINEモバイルをソフトバンクへ吸収合併して作られる新料金プランでもあるため、LINEのデータ通信をカウントしないカウントフリー施策が引き継がれたのです。

Ahamoと同じデータ通信容量と料金でありながら、LINEという現在の私たちがコミュニケーションの中心として利用するSNSのデータ通信容量をカウントしないことで、十分に魅力的な料金プランとして提示することに成功しています。


LINEモバイルと違い、通信品質がソフトバンク本体と同等である点も大きなメリットだ

5G戦略では、既存の4G用周波数帯を5Gへ転用する計画を進めており、2022年3月末までにアンテナ基地局5万局を設置するとともに、速やかに5Gエリアを展開していく計画です。

4G周波数帯をそのまま5Gネットワークとして転用する件については、速度的なメリットが小さい一方、バックグラウンドの5Gネットワーク化などによって低遅延性や同時多接続性など、一定の効果が期待できるためKDDIなどでも力を入れています。


ソフトバンクは5Gを2020年代の社会を支える基幹技術に据え、全力の投資を行っていく


●選べる「トッピング」が面白いKDDIの「povo」
そしてKDDIがauブランド(メインブランド)として発表した新料金プランが「povo」です。
データ通信容量は他社と同じ20GBに揃えつつ、他社が「5分間通話無料」を含めた料金としてきたのに対し、これをオプション扱いとすることで月額2,480円に抑えてきました。

Povoでの驚くべき点は、KDDIとしては「異例の」シンプルさです。
これまでKDDIは、高額な基本料金を各種割引によって安くするという手法を主体としてきました。
そのため発表会や公式サイトなどでは割引最大適用時の料金が大きく表示されることが多く、「割引適用前の料金が分からない」、「実際に契約した際の料金が分かりづらい」などの批判も多く聞かれました。

それに対し、povoでは月額2,480円というのが基本料金であり、そのほかの割引は一切ありません。
非常にシンプルな基本料金であるとともに、「トッピング」と名付けられた各種オプションを日割りや月割りで自由に追加・削除できるため、料金体系が非常に分かりやすくなっています。


高い料金を利用条件によって割り引いていくのではなく、安い料金に必要な機能(料金)を追加していくという考え方

このトッピングという機能(概念)の導入によって、KDDIはNTTドコモともソフトバンクとも違ったメリットや特色を獲得しました。

トッピングとして用意されるオプション機能は、今後もユーサーニーズを拾い上げながら随時追加していく予定とのことです。



トッピングは専用アプリのボタン1つで簡単に追加・削除可能

5G展開では、ソフトバンク同様に4G周波数帯の5G転用を積極的に進めつつ、5G用周波数帯のエリア拡大も進めていく戦略です。

アンテナ基地局数では、2021年3月までに約1万局、2022年3月までに約5万局を計画しており、人口カバー率では90%を目指します。


4G周波数帯の5G転用による速やかなエリア展開を目指す

20GBプランでは最後発だったこともあり、料金やユーザーニーズへの柔軟な対応力でNTTドコモやソフトバンクより一歩リードした感のあるKDDIですが、5G対応では若干遅れを取っています。

povoでの5G対応は「2021年夏予定」となっており、具体的な時期も示せていません。
これは元々povoが、NTTドコモのahamoと同じようにサブブランドもしくはMVNOとして準備されていたものであったため、システム的な問題から5Gへの対応が若干遅れたのです。

5Gのエリア展開も今夏には主要都市で十分に利用できる程度には広がると考えられるだけに、早期の対応が望まれるところです。


5G対応への遅れについても、米印付きの小さな表記ではなく大きく丁寧に説明するあたりにも、同社の変革の一端を感じられる


●2021年、今年こそ「一億総通信料金見直し」のとき
このほか各社ともに、
・使い放題プランの値下げや新料金の新設
・系列サブブランドおよびMVNOの料金値下げ
これらがアナウンスされており、20GBプラン以外を求めるユーザーも料金プランの変更や見直しが迫られる年となります。

いずれも2月から4月にかけて行われる施策であり、とくに各社の20GBプランは3社ともに3月スタート予定です。

そのためモバイル業界の春商戦は、かつてない激戦および大繁忙となる可能性があります。


既存の料金プランにも大幅なテコ入れがなされる

既存プランのユーザーの中には、

「20GBでは足りないから私には関係がない」
「MVNOのもっと安いプランを使っているから変える必要はない」

このように考える方も少なくないと思います。
しかし、現時点で使い放題プランやMVNOを利用しているユーザーこそ、料金プランを慎重に検討・選択しなければいけないタイミングなのです。

20GBプランは料金構成がシンプルで、あまり迷わず選択可能ですが、使い放題プランは通信キャリアによって細かな割引条件やパックプランがいくつも存在しており、正しい選択をするのがとても大変です。

また20GBプランの登場によってMVNOの料金体系は今年大きく変革すると予想されています。
コストパフォーマンスを重視するMVNOユーザーであればこそ、今年発表される各社の料金プランには常に注目しておく必要があります。


MVNOを運営する日本通信がahamo対抗として発表した新料金プラン。今年はこういった大容量・低料金のプランがMVNOから多く登場すると予想される


使い放題を最大限活用するユーザーから、MVNOで必要最小限の運用コストを狙うユーザーまで、すべての人々が通信料金を見直すときが到来します。

面倒くさい、難しいと投げ出さず、今年の春以降に必ず一度は各社の通信料金を本気でチェックしてみてください。
きっと多くの人が、現在よりも安くなったり、より良い通信環境での運用が可能になることでしょう。


執筆 秋吉 健