奥渋エリアを訪れる日には、必ず足を運ぶお店がある。

作家ものの食器を中心に、アンティーク小物や一点もののアクセサリーなども扱う『暮らしの店 黄魚』だ。

黄魚を訪れたくなるのは、食器集めに凝っているのもあるけれど、それ以上に“会いたい人”がいるから……といったら大袈裟だろうか。

気さくで優しいあの笑顔を思い浮かべながら、久しぶりの訪問に弾むような足どりでお店へと向かった。

手作りしてきた「暮らしの店」

代々木公園駅から徒歩3分、渋谷方面へと抜ける八幡商店街にある黄魚。道路脇に置かれた、魚の絵が描かれた黄色い看板が目印だ。道路に面した窓からは、個性が光る器やカラフルな鍋が見える。

そんな黄魚の魅力を引き立たせているのが、店主の高はし こごうさんだ。

黄魚は、高はしさんが「娘にとっての自慢の母になりたい」という気持ちで、突然思い立って始めたお店なのだそう。店舗物件も親子で訪れたくなるように「公園」がつく代々木公園エリアで探し出したという、そんなエピソードも高はしさんの優しい人柄を表しているようだ。

店内に並ぶ作家ものの器やビンテージのカトラリーなどは、どれも高はしさんが目利きし、国内外で買いつけたもの。

また、店内の机や棚に使われているのは、高はしさんの私物や彼女がDIYで作ったものを利用し、ロゴやショップカードも開店当時に自ら作ったというから驚きだ。

ひとつひとつ丁寧に商品が並べられた店内は、個性的な中に手作りのぬくもりを感じる、どこか彼女を思わせるような温かい雰囲気がある。







とっさの1品さえも“特別”になる手作りの器

黄魚の食器は、異なる作家さんの器を並べても、自然と馴染むから不思議だ。

その秘密は、仕入れ前の目利きにある。

「器を仕入れる前に、自宅で料理を盛って実際に使ってみるんです。食事を引き立ててくれるか、ほかの器たちと馴染むか、使いやすいかを確認しています。子どもにとっての使いやすさを考えて、お皿の縁の形状に注目して選ぶこともあります」と高はしさん。

作家さんの器の魅力は、高いデザイン性だけでなく、長く使えること、毎日の食卓を彩ってくれることにあるという。

「洋服などは年齢とともに買い替える場面もあるけれど、器なら歳をとっても、生活スタイルが変化しても長く使い続けられます。何より、手作りの器を使うと幸せ感があるし、“ラク”なんです」

高はしさんいわく、作家さんの器は、食卓を綺麗に見せてくれる。例えば、副菜1品やコンビニで買ったお惣菜を小鉢に盛るだけでも、なんだか特別にしてくれるのだ。

また、木製やガラス製品を除く器の多くは、食洗機や電子レンジでの使用ができるとのこと。意外にも実用性が高いのも嬉しい。

店内には、ヨーロッパやアジア各国のアンティークショップで仕入れてきたというビンテージもののアイテムも。洗練されたものよりも、どこか懐かしさを覚えるものが多く、作家さんの器とも調和してくれる。







思わず虜になるような、一期一会の巡り合い

黄魚で取り扱う食器やビンテージ品は、一期一会。器のラインナップも作家さんによって入荷のタイミングが異なるので、訪れるたびに出会う楽しさがある。

今日ふと気になって手にとったのは、手のひらサイズの小鉢。高はしさんに尋ねると、竹下努さんという作家の器だと教えてくれた。それを聞いて、前回訪れたときも、竹下努さんの器を購入していたことを思い出す。

好きな作家さんを目当てにお店を訪れる人もいるという、その気持ちがわかった気がした。

ポテトサラダを乗せるのはどうだろう、なんて相談していると、「私はよく、しらすを盛り付けていますよ! あとはコンビニで買ったきんぴらとか」と高はしさんが笑顔で教えてくれた。

確かに、この器にコンビニのきんぴらを盛り付けたらそれだけでもう特別な一品になりそうだ。こんな風に彼女と少し雑談めいた話をする時間が、とても好きだ。

話しているうちにこの小鉢が一層愛おしく思えてきて、購入を決めた。

黄魚のアイテムは2,000円前後で購入できるものも多く、自分でも手に届くのが嬉しい。高はしさんが教えてくれたように、歳を重ねても、長く大事に使おうと心に決めて、店を後にしたのだった。







店舗情報

黄魚

住所:東京都渋谷区富ヶ谷1-9-19 代々木公園Qビル 1FA

アクセス:代々木公園駅 徒歩3分

電話番号:03-6804-9888

営業時間:12:00〜18:00

定休日:水・日・祝

新型コロナウィルスの感染拡大防止などにより、各店舗が臨時休業や営業時間の短縮を行なっております。おでかけ前に、営業状況など各店舗へご確認ください。

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