高松 株式投資に「絶対」はありませんが、過去の歴史で確かなことは、「世界は必ず変化する」ということです。ですから、私たちは変化の正しい側にいる企業への投資を選好します。また、株価は1株当たり利益(EPS)×PERですが、私たちはPERの予測はしません。世界の今後の出来事や人々の心理の強気弱気は予測できないからです。ただ、EPSは徹底した調査、分析で予測可能と考えます。そして、株価は長期的にみると企業収益に収れんする傾向があるため、私たちは投資家の長期的なリターンを重視し、企業収益の将来予測に全力を挙げて取り組んでいます。

 この企業分析は、170名を超える株式アナリストや積極的に情報を共有するというティー・ロウ・プライスの企業文化によって支えられ、投資する企業については経営陣と直接面談を行い、継続的な対話を行うことで、独自の投資判断に役立てています。

 ポートフォリオの組み入れ上位銘柄であるアマゾンは長期に保有している銘柄ですが、今から4年ほど前の株価は700ドルを超え、最高値を更新していた状態でした。当時、当ファンドの投資家説明会でPERも100倍を超えており割高に見えるアマゾンをなぜ保有を続けているのかという説明をしました。当時の弊社のアナリストの分析によるとアマゾンの将来の企業価値は当時の株価でも魅力的だったのですが、その当時は割高だと思う投資家が多かったと記憶しています。しかし、現在の株価は3000ドルを超え、さらに成長を続けています。私どもが長期に魅力的な企業であると判断する企業の中には、このような株価の変化が起こる場合があると考えています。

 ――長期に株価が大きく値上がりしても、株価の下落時の下落率も大きく、投資に二の足を踏んでしまう人も少なくないと思います。ファンドの運用では、保有銘柄の売買をどのように行っているのですか?

川元 テクノロジー分野は変化のスピードが非常に速いため、それに対応するために機動的に運用することが重要だと考えています。たとえば、長期的に有望だと考える銘柄であっても、短期的に株価が大きく値上がりし株価に過熱感がある場合は、コアとなるポジションは残しつつ、一部をより上昇が期待できる銘柄に入れ替え、着実に利益を積み上げています。1年間の売買回転率は80%くらいに達し、絶えずポートフォリオをアップデートしています。決して「バイ・アンド・ホールド」で有望銘柄を保有し続ける運用ではありません。機動的な運用を行うことで、ショックで一時的に市場が急落するような場面では、割安になった成長企業に魅力的な水準で投資することも可能になっています。

 この機動的な投資判断の背景にもアナリストチームの分厚い調査活動の裏付けがあります。2019年は年間で1万1千回を超える企業ミーティングを実施していますが、コロナショックによって電話/ビデオ会議が普及したことで、経営陣とのミーティングは以前よりもより容易にできるようになりました。

 ――これから大きく成長が期待されるようなテクノロジー分野や企業は?

高松 当ファンドは、AI(人工知能)や5G(次世代移動体通信サービス)など特定のテーマに絞るのではなく、テクノロジー分野のあらゆるテーマの中から、その時々の旬なテーマを捉えて投資を行うことが特徴です。

 現時点では「クラウド・コンピューティング」「ハイクオリティ・インターネット企業」「産業エレクトロニクス・ソフトウエア」「サイバーセキュリティ」「AI」「ゲーム関連」の6分野に注目し、中でも、「クラウド・コンピューティング」に注目しています。クラウドで営業管理ソフトウエアを提供するセールスフォース・ドットコムや、人事関連ソフトのワークデイなどが成長を続けています。足元、リモートワークの普及によりサイバーセキュリティの需要は急拡大していますが、この分野はまだ大手企業が独占的な力を持っていません。現在の中堅、中小企業の中から、第2のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)になるような企業が現れても不思議ではありません。