三井住友DSアセットマネジメントが設定・運用する「USテクノロジー・イノベーターズ・ファンド」がコロナショック前の高値を上回り、好調なパフォーマンスを続けている。(グラフは、「USテクノロジー・イノベーターズ・ファンド(為替ヘッジなし)」と米国株式等(円ベース)の2020年年初から2020年8月末までの推移)

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 三井住友DSアセットマネジメントが設定・運用する「USテクノロジー・イノベーターズ・ファンド」がコロナショック前の高値を上回り、好調なパフォーマンスを続けている。モーニングスターレーティングは、今年2月以降8月まで7カ月連続で最高位の5ツ★を継続し、北米株式に投資するファンドの中でも優れた成績だ。成長株投資の中核となる米国テクノロジー株式の勝ち組に投資するという同ファンドを実質的に運用するのは、成長株投資に強みを持つティー・ロウ・プライス。同ファンドの好調な運用成績の背景について、三井住友DSアセットマネジメントの松本和潔氏と、ティー・ロウ・プライス・ジャパンの高松浩二氏、川元聡氏に聞いた。

 ――ファンドは、すでにコロナショック前の高値を更新し、さらに上伸しました。この好調なパフォーマンスの要因は?

松本 コロナ禍に遭遇して社会が「デジタル化」を受け入れたことが大きいと思います。在宅勤務を余儀なくされてWeb会議システムを導入したとか、買い物をネットショッピングで済ませるなど、多くの人がデジタルサービスを利用し、その利便性を実感しました。それがきっかけとなって、ビジネスやプライベートの区別なくデジタルサービスの利用が一気に広がりました。

 マイクロソフトCEOのナデラ氏が「コロナによって2カ月間で2年分のデジタル化が進んだ」と言っているように、この数カ月の間にデジタル化関連投資やデジタルサービスの利用は加速しました。

 ファンドの組入れ銘柄には、巣ごもり消費に関連するアマゾン、ネットフリックスや、リモートワークで導入が進んだWeb会議システムのズーム・ビデオ・コミュニケーションズがあります。また、「ハンコを押すために出社するのか?」ということが話題にもなった電子署名のドキュサインも組み入れ銘柄の1つです。そして、オンラインの利用が高まるほどに需要が増大するサイバーセキュリティのクラウドストライクなど、これら企業は目に見えて業績が向上し、それにともなって株価も上昇しました。

 ――コロナを機にデジタルトランスフォーメーション(DX)といわれる大きな変化が起こっていることはわかります。ただ、テクノロジーセクターは軒並み株価が上昇し、これ以上の株高は難しいのではないでしょうか?

川元 確かに、急速に株価が上昇した銘柄には短期的な調整はあると思いますし、全てのテクノロジー企業が成長するものではないと思います。ティー・ロウ・プライスは、その中から長期的な成長が可能な企業を見極めることに努めています。

 現在の低成長、低金利、低インフレが続く世の中では、質の高い成長企業に人気が集中してしまうのは、ある程度仕方がないと思います。このため、テクノロジーセクターのPER(株価収益率)は相対的に高くなっています。しかし、割安株に投資するバリュー投資家として著名なウォーレン・バフェット氏ですらアマゾンやアップルに投資しています。新聞などでは今・来期の予想業績に基づいてPERを算出して「割高になったハイテク株投資はリスクが高い」などと記事が出ますが、バリュー投資家の立場でもPERには目をつぶってテクノロジー株式に投資せざるを得ない状況なのです。

 また、私たちは、PERだけで投資判断をしません。EV(企業価値)/EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前・その他償却前利益)倍率や、FCF(フリーキャッシュフロー)などを用い、個別企業を複数の指標や多面的な視点で徹底的に分析しています。私たちが見極めようとしているのは、成長の持続性や耐久力、成長の高さです。

 たとえば、アマゾンはPER約120倍ですが、電子小売の利益率が1ケタ台のところに、クラウド事業や電子広告など利益率30%を超える事業が拡大し、利益率の高い事業の事業構成比率が高まっています。その実態は、PERだけを見ていては適正な評価ができません。また、ネットフリックスもPER約80倍ですが、この会社は単純に動画をネット配信している会社ではありません。世界で1億9000万人という契約者のデータを解析し、そこから得られる視聴トレンドに基づいたオリジナルコンテンツを莫大な予算をかけて制作しています。これが競争優位性につながり、持続的な成長を可能にすると考えています。