「親バカ青春白書」でユーチューバーのネゴロを好演する戸塚純貴
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 ムロツヨシ&永野芽郁共演のドラマ「親バカ青春白書」(日本テレビ系・日曜よる10時30分〜)で、「YouTuber」根来恭介(通称ネゴロ)を演じている戸塚純貴。これまでもバラエティー番組「痛快TVスカッとジャパン」の再現ショートドラマ「ダメ男撃退シリーズ」や、「花のち晴れ〜花男Next Season〜」など数々のドラマで負け役やフラれ役を演じてきた戸塚。「親バカ青春白書」では「フラれ動画」を投稿し続け、フォロワー20人しかいない弱小YouTuberから再生数100万回超えの人気YouTuberとなる大学生を演じている。いったいなぜ、こうも「フラれぶり」が輝くのか。「当代きってのフラれ王子」の魅力を考えたい。

 「親バカ青春白書」は、娘のさくら(永野芽郁)を溺愛するあまり41歳にして、同じ大学に入学してしまった作家・賀太郎(ムロツヨシ)が巻き起こす騒動を描くホームコメディー。登場人物が「イイ人」「天然」だらけで、ほのぼのしすぎる感があるが、戸塚演じる根来が登場すると空気が瞬時に変わり、不思議なワクワク感が生まれる。動画の再生数を稼ぐため、大学の同級生・寛子(今田美桜)のダンスを盗撮するなど悪行を繰り返していた根来は、賀太郎に「お前のモテなさ加減を動画でさらすんだよ! 恥をさらしてこそ、人生」とアドバイスされる。そこから、さくらが出場した学園祭のミスコンに乱入し、突然告白したり、次々に女性に告白・フラれ動画をアップしていく。鼻の穴を大きくふくらませ、目をひんむき、全身でうろたえ、悶えるキレキレの表情・動きは、まるで「行け!稲中卓球部」「ヒミズ」など古谷実の漫画のキャラクターのようだ。

 とはいえ、インパクト勝負の「顔芸」ではない。フラれぶり、負けぶりが妙に華麗で、目をひく華がある。舞台で観ると驚くほど小顔で、スラリとしている。それもそのはず、戸塚は2010年に行われた第23回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストの「理想の恋人賞」を受賞したことをきっかけに、芸能界入りした経歴の持ち主だ。「理想の恋人賞」受賞者が、後に様々な作品でフラれまくるというのも不思議な巡り合わせだが、「仮面ライダーウィザード」(2012)でも、正義感が強く、明るく元気なムードメーカーの「夢見る青年」をピュアに演じるなど、途中までは王道コースを歩んでいたはずだった。

 しかし、高くなっていた鼻を「へし折られた」と本人がインタビューで語っているのは、「仮面ライダーウィザード」終了後、20歳の頃。次に舞い込んだ仕事がエキストラだったことから原点に返り、作品との向き合い方などを見直すきっかけとなったようだ。

 そこから心機一転、お茶の間の注目度を高めるきっかけとなったのは、2014年以降、フジテレビのバラエティー番組「痛快TVスカッとジャパン」でのショートドラマに出演するようになったこと。視聴者から集ったエピソードを再現したショートドラマ「ダメ男撃退シリーズ」で、非常識な言動をとる最低な彼氏カズピコを演じ、さまざまなクズぶりと、成敗される際の気持ち良いほどの“敗れ具合”が話題に。そして、ほぼ同時期に、ゲスト出演した2014年放送の深夜ドラマ「アオイホノオ」(テレビ東京)で福田雄一と出会ったことが、彼の演技の幅を大きく広げるきっかけとなった。

 もともと福田雄一の「THE3名様」が好きだったという戸塚は、この出会いによって福田雄一に「他の俳優と同じことをしたって意味はない」「戸塚君は負け芝居ができる」と言われたことで、自身の「武器」を意識。その後、「私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな」(2014〜2015・LaLa TV)や「スーパーサラリーマン左江内氏」(2017・日本テレビ系)、「今日から俺は!!」(2018・日本テレビ系)など、福田組常連として活躍していく。

 なかでも当たり役だったのは、『銀魂』で演じた真選組の「地味キャラ」山崎退。もともと原作ファンだったという戸塚が、特に好きなキャラだったことから、出演が決まったときにも「俺は人気ナンバーワンになんてならなくていい、踏み台ナンバーワンになればいいんです」と、山崎の言葉を使ってコメントしたり、ドラマ「銀魂2」公式Twitterでは「山崎退監察レポート」と題して、撮影の裏側などを山崎退としてつぶやいたりと、“山崎”愛の深さを炸裂させた。そうした中、映画『銀魂2 掟は破るためにこそある』(2018)のキャスト発表時にはポスターに登場しているにもかかわらず、公式から発表を忘れられるという事態が話題に。これ自体が公式の「イジリ」だったのかもしれないが、それも含めて、存在そのものが山崎と一体化する奇跡まで見せたのだった。

 こうして振り返ってみると、「親バカ青春白書」の根来は、フラれて、負けて、イジられて輝く戸塚の魅力の一つの到達点なのだろう。ネット上では伊藤淳史に似ているという声もあるが、周囲からの千本ノック的ボールをことごとく心地よく受け止めていく“受けの負け芝居”としての魅力は、大泉洋にも近いものを感じる。

 そんな彼のさらに意外な面を見られるのは、代表作の一つである映画『ケアニン』シリーズだ。主人公の新人介護福祉士・大森圭として、認知症のおばあちゃんとのかかわりを通じて成長していくさまを、実に自然体で、優しく魅力的に演じている。

 フラットな適温の演技もこなす一方で、お調子者的な「陽のオーラ」と、地の底を這うようなどん底の「陰のオーラ」との両極を瞬時に行き来できる戸塚。彼の芝居から目が離せないのは、その見事な瞬発力で繰り出される落差が、さながら人生の縮図を見るようだからではないだろうか。(田幸和歌子)