小さな駄菓子店や電器店が生き残れる理由は?

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 消費増税やネット通販の普及による価格競争などで、大手家電量販店やスーパーマーケットが苦戦を強いられています。店舗によっては、キャッシュレス決済サービスを拡充したり、弁当や総菜などの持ち帰り商品を充実したりするなど対策を強化していますが、一方で、都市部では現在も地域に根差して営業を続ける電器店や駄菓子店があります。

 競争が激化する中で、なぜ生き残ることができるのでしょうか。経営コンサルタントの大庭真一郎さんに聞きました。

充実のフォローでリピートにつなげる

Q.首都圏では、地域の電器店や駄菓子店が今も営業を続けています。大手量販店でさえ苦戦する中、なぜ営業を続けることができるのでしょうか。

大庭さん「地域の電器店は、価格や品ぞろえについては大手量販店にかないません。同様に、地域の駄菓子店も商品の目新しさや利便性に関しては、大手スーパーやコンビニにはかないません。しかし、それでも生き残れるのは、ライバルとは異なる部分で勝負をしているからです。

例えば、地域の電器店はアフターフォローが充実しており、購入した家電の設定や古くなった家電の修理などの顧客サポートを積極的に行っています。そうすることで顧客との関係強化を図ることができ、リピート購入へとつながっています。

地域の駄菓子店に関しても、店に立ち寄る子どもたちが喜ぶような雑貨やカプセルトイを設置することで、駄菓子販売の薄利をカバーする収益源を確保するとともに、主な顧客である子どもたちとの関係強化を図っています。そうすることで、学校のイベントや地域の祭りの際、駄菓子などの商品を提供できる環境を生み出しています」

Q.それでは、地域の電器店や駄菓子店の強みとは。

大庭さん「最大の強みは小回りが利くこと、つまり、顧客との接点を自らつくりに行けることです。地域の電器店は定期的に購入者の家を訪問し、家電に関する相談に乗り、あるいはちょっとしたメンテナンスなどを行い、顧客との結びつきを強くすることで固定客化させることができます。

駄菓子店の場合も、来店する子どもたちとの関係強化を図ることで店が子どもたちのコミュニティーの場となり、商品販売の安定化や、学校のイベントや地域の祭りへの商品提供など関連需要を開拓することができます。これらの対応は大型店舗やチェーン店にとっては効率が悪く、まねをすることが難しいです」

Q.地域の電器店はどのような人が利用するのでしょうか。

大庭さん「地域の電器店の客層は高齢者が多いです。高齢者の『街の中心部の家電量販店に買いに行くことを苦労だと感じる』『ネットで家電を購入するという発想がない』『多少割高であっても購入後のサポートが充実していることを好む』などの特徴が、地域の電器店に対するニーズとマッチするからです。

また、地域の駄菓子店の主な顧客は地域の子どもたちですが、近年は街の中心部にある駄菓子店を中心として、昔を懐かしむ大人や、日本の文化を楽しむ外国人による購買も増えています」

Q.経営を続けている店もありますが、全体的には小型店舗は減少傾向にあると思います。小型電器店と駄菓子店の近年の傾向は。

大庭さん「小規模電器店や小規模菓子販売店も経営環境が厳しいようです。国が実施した商業統計調査によると、従業員数4人以下の電器店の全国事業所数は、2007年度は3万1211でしたが、2014年度は2万1665と31%減少しているほか、首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)における事業所数も、同じ期間に5458から3753へと31%減少しています。

また、従業員数4人以下の菓子販売店(製造小売りではない店)の全国事業所数も、1万5865から9942と37%減少しており、首都圏(同)における事業所数も、3185から2240と30%減少しています」

人口減少という脅威にどう向き合う?

Q.地域に根差した店をつくり上げていく上で重要なことは。

大庭さん「地域に根差した店をつくり上げるには、日常の活動の中心が地域である、高齢者や主婦たちに支持される店づくりを行う必要があります。そのために、大型店やチェーン店などが行っていない独自のサービスを提供することを通じ、地域に住む人たちの集客を増やしていく必要があります。

その上で、来店客に対してフレンドリーな接客を行い、口コミによる顧客の拡大を図ることが効果的ですし、それらの取り組みに加えて、地域のイベントに積極的に参加するなどして、地域の高齢者や主婦たちとの関係性を強化していくことで経営が安定します」

Q.近年は少子高齢化が進んでいます。電器店や駄菓子店も含め、今後、地域に根差した店が生き残る上での課題はありますか。

大庭さん「『地域に根差した経営を行うことで地元の人たちから愛される』というスタンスで営業し続けてきた地域密着店にとって、人口減少という環境変化は、今後の店の経営に極めて悪い影響を及ぼす脅威です。つまり、地域で暮らす人たちだけを相手にした商売を続けていると、いずれは衰退していくことが目に見えています。

そこで、地域の外にいる人たちにも店の存在を知ってもらい、商品やサービスを購入してもらうための仕掛けづくりを積極的に行う必要があります。

例えば、『他の店が扱わない独自の商品やサービスを提供し、SNSなどでアピールする』『他の事業者が販売する商品や提供するサービスとコラボレーションする』ことなどにより、自社商品やサービスの販売力を高めていくことが考えられます。さらに、顧客情報をシステム化し、個人のニーズを特定した上でタイムリーな案内を行うような対応も効果的です」