攻撃の絶対軸であるイニエスタ。その存在感は絶大なだけに……。写真:徳原隆元

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 神戸の開幕戦は横浜FCを相手に1-1のドロー。シュート数で相手よりも10本上回り(14対4)、ポゼッション率65%以上でゲームを支配した点では課題はない。だが、これだけ圧倒しながら1ゴール。開幕戦で見えた課題を強いて挙げるなら、引いて守備ブロックを固める相手からどうやってゴールを量産するか、ではないだろうか。

 ACLグループリーグ第1節のジョホール戦でも、横浜FC戦と同じように相手に引いて守られた。だが、その試合では5得点を挙げて快勝している。違いは、横浜FCの下平隆宏監督が「後半は割り切った」と述べたように、守備を固めてカウンターを狙うというサッカーに完全にシフトした点にある。

 おそらく横浜FCのように“割り切る”チームは今後も出てくると予想される。その際、開幕戦のようにアンドレス・イニエスタへの依存が強すぎると、なかなか結果に結びつかないことも出てきそうだ。

 リーグ中断前の2月25日。いぶきの森球技場では、開幕戦のスタメン組はリカバリー中心、それ以外は通常練習を行なった。イニエスタ不在の中で興味深かったのが、ある制限を設けた5対5。FWに縦パスが入ると、3秒カウント後にDF側が守備を開始する。狙いは、縦パスが入った後のバリエーションを増やすこと、そしてスピーディに攻めること。シャドーに入った小川慶治朗はこう説明する。

「引いて守られた時、FWに当てた後のコンビネーションがないと崩せない。開幕戦では、イニエスタが3、4人をかわして攻撃の幅を広げてチャンスを作っていたけれど、逆に言うと彼頼みになってしまっていたとも言える。もっと違う形も作らないといけないですし、そこのコンビネーションを意識して今日は練習をしていました」
 
 実際、その練習で1トップに入ったドウグラスとも、意見を交わしたと小川は続ける。

「ボールを大事にしたいのは分かるけれど、ゴール前なのでワンツーやフリックなどで速い展開をしないと崩せないとドウグラスは話していました。ドリブルで強引に行くのも有効ですけど、それだけでは対策も練られる。いろんなバリエーションがないと厳しい。ボール保持は大事ですけど、それだけでは点が入らないのも開幕戦では分かったと思います」

 横浜FC戦では、イニエスタからのパスではなく、セルジ・サンペールのスルーパスから古橋亨梧の同点ゴールが生まれている。それを考えれば、必ずしもイニエスタなしで得点する形がまったくないわけでない。だがイニエスタからの崩しがなければ、ゴール量産が難しいのも事実。

 今のままで神戸は強い。だが、あえて中断期間にトライすべきことがあるなら、“脱・イニエスタ”だ。

取材・文●白井邦彦(フリーライター)