子どもの学習場所は「子ども部屋」であるべきか否か

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 リビングやダイニングで子どもを勉強させる「リビング学習」は、すでに広く世に知られている。個室の子ども部屋を与える時期や与え方についての情報も、しばしば各種メディアで目にする。

 子ども部屋と学習場所の関係については、子どもの年齢や学習の種類(宿題なのか、試験勉強なのか)によって、話が変わってくる。

 結論から言えば、小学生の普段の学習については、個室の子ども部屋でなくてもよい。

■個室では集中できない

 10歳程度までの子どもにとっては、個室で一人で学習するよりも、家族のいる場所でコミュニケーションをとりながら学習するほうが効率的と言われる。この年頃の子どもは、個室ではかえって集中できないからだ。

 親が見守る中でならば、落ち着いて、安心して学習に取り組める。また、疑問点などがあったらすぐに親に質問できる。これにより、親にとっても、我が子の思考のパターンや、どこにつまずいているのか等が把握できる。逆に、できたところをすかさず適切に褒めれば、子どものやる気はさらにアップする。

■実際に子どもたちはどこで勉強しているのか

 『10歳までの子育ての教科書』(アスコム)の中で、四十万靖氏が次のようなことを紹介している。子どもが有名中学に合格した約200軒の家庭を取材したところ、子ども部屋で勉強している子どもは少なかった。子ども自身にとって居心地のよい場所で学習することが大切なのだ――。

 そう言えば、筆者の高校時代、学年で最も成績優秀だった級友は「わたしはいつも、居間のこたつで勉強している」と話していた。彼女はその後、高名な医科大学にストレート合格した。それを知ったとき、“勉強ができる”ためには必ずしも個室で集中できる環境が必要なわけではないのだなと思った。

 やや古い資料だが、2014年の東京ガス都市生活研究所による都市研究レポート「子どもの勉強実態と親の意識」に、子どもたちの多くは子ども部屋以外で勉強しているというデータが出ている。普段の学習は、小学生の約8割、中学生でも約半数がリビングで行っているという。

 尤も、同レポートでは、受験勉強や定期試験の勉強といった「試験勉強」に限れば、子ども部屋での学習の割合が増えることも書いている。

■「リビング学習」の本質とは

 現代の子どもたちの多くは、子ども部屋以外の場所で学習している。これは、親世代が「リビング学習」のメリットについての情報に触れる機会が多いからとも考えられる。

 子は親の姿を鏡として育つ。したがって、親はなるべく自室にこもらず、リビングで仕事をしたり、本や新聞を読んだり、調べ物をしたりする姿を子どもに見せたほうがよい。ときには、夫婦や親子で、さまざまなことについて真剣に議論するのもいいだろう。

 リビングが自然と、親にとっても子にとっても知的活動の場となっていることが重要なのだ。

 おそらく、「リビング学習」の本質はそこにある。

※参考資料○『10歳までの子育ての教科書 「子育てのやり直し」はできません』アスコム編(アスコム)○家のコトで役立つ 東京ガスくらし情報サイト『ウチコト』「【実態調査:子どもの勉強場所】小学生・中学生・高校生はどこで勉強してる?」 https://tg-uchi.jp/topics/5082