パイロットと航空管制官との航空無線は、原則「英語」ですが、その英語は学校で習ったものとは違う、かつ辞書通りでもない、少々ユニークなものです。数字やアルファベットもそのまま発音されません。

数字やアルファベットも「そのまま」ではない

 飛行機を操縦するパイロットと、地上から飛行機の動きをコントロールする航空管制官との航空無線は、原則「英語」が使われているのは広く知られているところ。しかし、学校で習う一般的な英語と、飛行機と地上のやり取りで使われる英語は少々異なります。

 代表的なものとして挙げられるのは「はい」「いいえ」のやり取り。航空無線では原則「YES」「NO」は使いません。肯定、いわゆる「YES」のときは「Affirm(アファーム)」、否定「NO」のときは「Negative(ネガティブ)」という言葉を使います。


羽田空港の管制塔(2019年5月、伊藤真悟撮影)。

 その理由は、安全を確保すべく、聞き間違いを徹底的に防ぐため。「YES」「NO」では、やり取りの言葉としては短すぎ、聞き漏らしたりする可能性もあるとのことです。

 ちなみに辞書通りだと「Negative(ネガティブ)」の反対の言葉は「Affirmative(アファーマティブ)」ですが、語尾が似ていて聞き間違える可能性もあるため、肯定するときは、短い「Affirm」を用いるようになったといわれています。

 こういった私たちが知っているのと違うユニークな英語を使う工夫は、数字の読みについても見られます。「3」は「トゥリー」、「5」は「ファイフ」、「9」は「ナイナー」と読むそうです。

 この発音ルールは、航空無線特有の読み方「フォネティックコード」と呼ばれるもの。英語を母国語としない国の人が発音しやすいようつくられ、全世界で共通化されているそうです。

 なお「フォネティックコード」では、アルファベットの読み方も、一般的なものとは異なります。たとえば「A」は「アルファ」と発音され、交信で「A9」と言う際には、「アルファ、ナイナー」と発音します。