FF化によって広い室内空間やコスパは高まったものの……

 今や大半の自動車が採用している前輪駆動方式。しかし、1980年代前半まではまだまだ前輪駆動方式に懐疑的な部分もあり、本格的に前輪駆動方式に移行したのは90年代に入ってからだった。フラットで広い室内空間や、コンポーネンツをフロントに集約できるためコストにも優れるというメリットはあるものの、操る楽しみを考えると後輪駆動のままが良かった……と思えてしまう、そんな車種をピックアップしてみよう。

1)トヨタ・カローラレビン/スプリンタートレノ

 5世代目のカローラ/スプリンターのスポーティグレードであるレビン/トレノ。AE86(ハチロク)の愛称でも有名な、言わずと知れた人気車種である。

 最後のFRモデルということもあって当時から人気の高い車種であったが、すでにレビン/トレノ以外のモデルは5世代目の時点でFF化されており、レビン/トレノは旧型の4世代目のコンポーネントを使用したモデルであった。

 当時のトヨタはまだ前輪駆動化に慎重であり、一気にすべてのモデルをFF化せずに市場の反応を見て徐々に入れ替える方式をとっていたのだ。そのため、同時期に販売されていたカリーナも4代目のFFモデルと並行して3代目のFRモデルを併売していたのだ。

2)日産エルグランド

 キングオブミニバンとして高級ミニバン界の頂点に君臨していたエルグランド。2010年まで販売されていた2代目モデルは、全車にV6エンジンを搭載し、後輪を駆動するFRレイアウト(4WDもあり)だった。さすがにMTの設定はなかったが、マニュアルモード付5速ATとV6のフィーリング、そして素直なFRらしいハンドリングは、スポーツカーからの乗り換え組にも歓迎されていた。

 しかし、2010年に登場した3代目は打って変わってFFとなってしまった。FFになったことでフロアを低くでき、全高を抑えながらも先代以上の室内空間を実現していたのだが、威風堂々としたルックスが好みだったユーザーからは共感が得られず、トヨタ・アルファード/ヴェルファイアに大きく水を開けられる結果となってしまった。

3)三菱ランサー

 ランサーといえばランサーエボリューション、ランサーエボリューションと言えばラリーというくらいイメージが固まっているといっても過言ではないが、当然ランエボ登場以前のランサーもラリーに参戦し活躍を見せていた。

 そんなランエボ以前のランサーで印象的なのはやはり2世代目ランサー(ランサーEX)に設定されたランサーターボ(通称ランタボ)だろう。とくにインタークーラー付きとなったモデルでは1.8リッターながら160馬力を発生する当時としてはかなりのじゃじゃ馬だった。

 しかし、82年に登場した前輪駆動方式のランサーであるランサーフィオーレに吸収され、後輪駆動のランサーはこの代で終焉を迎えることとなった。