「(まずは)出会い(から)系」アプリ?

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近年、男女の出会いを手段のみならず意識レベルから変えつつある「出会い系アプリ」。国内では単に気軽な出会いではなく「婚活」色を前面に押し出した「婚活アプリ」など、目的や対象ユーザー層に応じたさまざまなアプリが市場を急成長させている。

一方、国内より数年早く爆発的に利用者が増えた海外での主流は名実ともに「出会い系アプリ」と呼ぶべきものが多い。ほぼプロフィール写真だけを頼りに手軽で直感的に出会いの相手を取捨選択するような、見た目重視の即断即決タイプだ。最大の市場である米国の18歳から29歳の年齢層では出会い系アプリ利用者の割合が30%を超えたという調査報告もある。その米国で、外見重視を助長する出会い系アプリの利用が不健康なダイエットを助長していることを示唆する研究結果が摂食障害の学術専門誌に掲載された(Journal of Eating Disorders, vol. 7, article 16, 2019) 。

研究を行ったのはハーバード大学・公衆衛生大学院の研究チーム。SNSを含むマスメディアの影響により、顔や体形などの外見に関する理想や自分自身の外見に関する不満を抱く利用者が増えていることが他の研究から明らかになっているにもかかわらず、これまで出会い系アプリに限定して「UWCB」(Unhealthy Weight Control Behaviors)と呼ばれる不健康な体重管理行動との関連に関する研究が乏しいことに着目。2017年10月から12月にかけて同大学院の研究調査プログラムに参加する1,769人を対象としたオンライン調査を実施した(有効回答者数1,726人、うち男性628人、女性1,098人)。調査内容は過去30日以内の出会い系アプリの利用頻度と過去12ヶ月間に行ったUWCBとの関連性。評価対象となったUWCB種別は、自発的な嘔吐、下剤の使用、絶食、ダイエットピルの使用、筋肉増強サプリの使用、蛋白同化ステロイド剤の使用の6種類だ。

その結果、出会い系アプリ利用者は男女ともに利用しない人に比べてUWCBを行う割合が多いことに加え、アフリカ系、アジア系、ヒスパニック系などの有色人種の方が白人よりもUWCBを行う割合が多いことも明らかになった。研究チームは今回の研究結果により出会い系アプリの使用が確実にUWCBを含む健康への悪影響の原因となっているとまで結論付けることはできないとしつつも、写真に基づく外見を重視する出会い系アプリ利用がUWCBを助長している可能性が高まったとして、今後、調査対象者や調査項目の再検討も含む追加的な研究の実施が必要だとした。

日本の場合、いわゆる美容整形の国際統計では諸外国と比較すると圧倒的に顔を対象とした施術の割合が高い。仮に美容整形に限らず全般的に体形よりも顔を重視する傾向にあると考えた場合、出会い系アプリ利用とUWCBの関係に関しては比較的体形を重視する米国ほどの心配は不要かもしれない。とはいえ、2016年に156億円だった国内のオンライン恋活・婚活マッチングサービス市場は2017年に256億円、2018年には386億円となり、2019年は530億円を超える見込みという勢いで拡大している(マッチングエージェント調べ)。日本でも今回と同様の調査研究を行う意義はありそうだ。

【参考文献】
Dating app use and unhealthy weight control behaviors among a sample of U.S. adults: a cross-sectional study
PMID: 31164984
DOI: 10.1186/s40337-019-0244-4

マッチングエージェント、オンライン恋活・婚活マッチングサービスの国内市場調査を実施
https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=22697
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