プチ整形→→グラン整形?

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ひと昔前まで日陰の存在だった美容整形。最近は芸能人、一般人を問わず、自分の美容整形経験をメディアやSNSでカミングアウトしたりビフォー・アフター写真まで公開するケースが増えている。カミングアウトしたことが話題になるのは比較的大がかかりな美容外科手術を行った場合が多いが、外科手術を伴わない、いわゆる「プチ整形」が美容整形の裾野を広げるとともに、美容整形を日なたの存在にした。

この「美容整形」という名称、実は正式な診療科名ではないことをご存じだろうか。

まず、「プチ整形」は比較的手軽に行うことのできる美容医療施術に対して使われる俗称。日本に同名で2つある「日本美容外科学会」のうち「JSAS」(Japan Society of Aesthetic Surgery)という略称の方の学会ウェブサイトには、「プチ整形とは、メスを使わずヒアルロン酸またはボツリヌス・トキシン(ボトックス)を注入・注射することで、輪郭を修整したりシワを改善する処置を指します」という記述があるが、あまたある美容クリニックのウェブサイトではレーザーによる脱毛やしみ治療もプチ整形に含めているものも多い。メスを使わない、あるいは「非外科的」な施術としている点はだいたい共通しているが明確な定義は無いようだ。

もう一方の「日本美容外科学会」、略称「JSAPS」(Japan Society of Aesthetic Plastic Surgery)や、日本美容皮膚科学会のウェブサイトにはプチ整形に関する記述がない。これは「プチ整形」の定義以前の話として、「整形」という語が使われていることに関係しているのかもしれない。「整形」の本家、日本整形外科学会のウェブサイトには以下の記述がある。

整形外科と美容外科
――「美容整形」も「整形外科」なのでしょうか?

「美容外科」は形成外科の一分野で、いわゆる「美容整形」の手術を行います。
容姿を整えることが目的で、代表的な手術には、二重まぶたなど眼瞼の手術、鼻を高くする隆鼻術、顔面の首にたるみをとるフェイスリフト、腹部や臀部の余分な脂肪を取る脂肪吸引、乳房の形を整える手術、レーザーであざを消す手術等があります。
その他、最近プチ整形といわれるコラーゲン、ヒアルロン酸などの注入も美容外科で行われています。

美容外科を行う医療機関で「○○整形外科」と看板を出すこともあり、一部の患者さんに誤解されますが、「整形外科」は骨、関節、筋肉、神経など運動をつかさどる運動器の機能障害を治療する分野です。

(日本整形外科学会公式ウェブサイト『よくある質問 整形外科と美容外科』より)
https://www.joa.or.jp/public/about/cosmetic_surgery.html

近年は医療広告規制が厳しくなったこともあり、美容医療の診療科名に「整形」の文字が入ることはなくなり「美容外科」または「美容皮膚科」に集約されている。とはいえ、もともと形成外科の一分野として発展した現在の美容外科が1978年に正式な診療科(標榜科)として認められる遥か前から「美容整形」という俗称で広く浸透したという歴史もあり、メディアも含め一般的には今も「美容整形」の方が馴染みのある名称となっている。このため多くの美容クリニックではネット検索効果のためにもウェブサイトには「美容整形」という単語を散りばめ続けることにもなっている。

一度定着してしまった名称を変えることにはネット時代ならではの難しさがあるようだ。

医師・専門家が監修「Aging Style」