見た目年齢51歳 by How-Old.net

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G20大阪サミットが開催された今週後半、まるで台風3号と示し合わせたかのようなタイミングで各国首脳が次々と来日し、慌ただしく去っていった。来年の大統領選で再選を目指すトランプ大統領は国内向けの事情や思惑があったのか、あるいは1ヶ月前に国賓として来日した時のポジティブな後遺症が残っていたのか、おとなしく行儀も良かったようだ。

僕の場合、アメリカの大統領というと真っ先に思い浮かぶのはやはりJFK、ジョン・F・ケネディ大統領だ。

ニューヨーク州オルバニーでの武者修行のため僕が渡米したのは1956年。当時の大統領は第二次世界大戦の英雄、ドワイト・アイゼンハワーだった。共和党が世界大戦を挟み20年ぶりに政権を奪還した立役者。アイゼンハワー大統領は僕がオルバニーで奴隷制度のような外科レジデント生活を始めてほどなく再選を果たした。

アメリカの場合、戦時下の特殊事情により例外的に4期目半ばでの死去まで大統領を務めたフランクリン・ルーズベルトを除くと大統領の任期は最長で2期8年。アイゼンハワー政権の2期目、特に後半は大統領よりも当時副大統領だったニクソンと民主党期待の若手ケネディ上院議員の選挙戦の方がレジデント仲間の間でも話題にのぼることが多かった。「見た目」の差が流れを大きく変えたと言われるテレビ討論など、熾烈な大統領選を経てケネディ大統領が誕生したのは1961年1月。アメリカでの僕の奴隷レジデント生活は5年目を迎えていた。

それからわずか2年10ヶ月後、ケネディ大統領はテキサス州ダラスで凶弾に倒れた。ラジオで臨時ニュースが流れた時、僕は手術室ではなく大学の実験室で数名の仲間たちと実験の処置をしていた。パレード中に頭部を狙撃された大統領がパークランド・メモリアル病院に搬送されたという速報。まだ重傷と報じていた段階だった。最近の言葉で表現するなら完全にフリーズ状態で呆然と立ちすくむ僕たちの耳にやがて入ったのは大統領が死去したという悲報。享年46歳。僕が32歳になる直前のことだった。

ケネディ大統領の功績としてまず挙がるのはいわゆるキューバ危機回避やアポロ計画など、米ソ冷戦下ならではのある意味ドラマチックな出来事が多いが、国内の人種差別改革という功績も忘れてはいけない。ケネディ政権が誕生した1961年当時、リンカーン大統領の奴隷解放宣言から100年近く経っていたにもかかわらず黒人に対しては特に南部の州で今では考えられないような差別が残っていた。多くの人々の心の中だけでなく自治体や公的機関における制度としても。

東洋人に対する差別や偏見もかなりあった時代だが、僕自身は幸い嫌な思いをしたことは一切なかった。当時はまだアメリカで医師は尊敬される職業だったため、僕は東洋人である前に、医師として扱われていたからかもしれない。ケネディの悲願でもあった公民権法は彼の死の翌年、1964年7月に前大統領の遺志を継いだリンドン・ジョンソン大統領が成立させた。僕が妻と2人息子たちを連れて8年ぶりに日本に帰国する1ヶ月あまり前のことだった。

話は飛ぶが、顔写真から年齢を判定をする「How-Old.net」というサイトをご存じだろうか。形成外科医である僕のライフワークの一つは「見た目のアンチエイジング」。以前から見た目の年齢を測定する機器はないのだろうかと思っていたところ、つい先日、マイクロソフトが数年前に立ち上げたこんなサイトがあると知人から教えて貰った。
https://www.how-old.net/

自分のスマートフォンやパソコンに保存している写真が流出したりしないだろうかと気にもなったが、ネット上にある著名人などの顔写真を検索して年齢判定することもできるというので早速試した。その時にまず試そうと思い浮かんだのがケネディ大統領だった。

大統領就任後の幾つかの写真で試してみたところ、その大半は40代前半の年齢でほぼ正しく判定されたが、中には51歳と出たものもあった。著名人の場合、撮影時期や生年月日などの関連情報までデータベース化されているのではとも疑っていたが、どうやらそれは無さそうだ。ただ、実用的で精度の高い見た目の年齢判定が可能になる日はまだかなり先なのかもしれない。

さて、冒頭で触れたトランプ大統領。彼の顔年齢はというと...

この大統領に関してそれを試す興味すらないというのが正直なところだ。

[執筆/編集長 塩谷信幸 北里大学名誉教授、DAA(アンチエイジング医師団)代表]

医師・専門家が監修「Aging Style」