提供:週刊実話

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 水分の“不足”も“過多”も避けるのが、暑い季節の上手な水分補給だ。汗などで水分が体外へ排出されているのに、摂取を怠れば脳梗塞や心筋梗塞など危険な病状に陥る。さらに水分の摂り方を誤れば、体への負担が増える。

 喉の渇きから一気に水分を飲み込むと、腎臓で処理しきれずに水分が血中に流れ、低ナトリウム血症を起こして、意識を失うことがある。そのためバランスよく摂らなければならないのだ。

 次第に気温が上がり、時には夏日を思わせる日もあるこの時期。少し体を動かしただけでも汗ばみ、喉の渇きで冷たい水が美味しくなり始める頃だ。

 水分補給の重要性を予防医学の専門家、内浦尚之医学博士はこう説明する。

 「水は大事です。喉の渇いている時に水分を摂らないと、人の体は動きにくくなり、酸素や栄養素を細胞へ届ける働きも鈍くなります。通常、摂取された水分は、血液の混ざった毛細血管を通り脳に運ばれます。その水分が不足すると血液の粘性が増し、流れが悪くなり、詰まりやすくなる上、そこから脳梗塞などへ繋がる可能性も出てきます。病気に罹りにくい健康な体をつくるには、水分補給は欠かせないのです」

 散歩でも、ウオーキングでも、喉が渇いたと思ったら、ためらわずに必ず水分を補給することだ。

 前出の内浦氏が、さらにこう語る
「水分は慌ててガブ飲みはしないほうがよいでしょう。よく1日に約1.5〜2㍑の水を摂るべきという話を聞きますが、仮に2㍑の4分の1の500ミリ㍑しか飲まなくても、そう心配はいりません。どういうことかと言いますと、腎臓が体内の水分量をコントロールしてくれるからです。水分が不足すれば腎臓が尿を減らし、体内の水分をキープする。確かに量は体重の4%程度なので、体重50キロであれば2㍑となりますが、実際には一般的に食事から1日0.8〜1㍑の水分を摂取しているため、意識して飲む水の量は1㍑前後が目安。喉が渇いていなければ無理に飲む必要はないのです」

 ただし、「一度に飲む量は注意が必要」という。
「腎臓の尿の処理速度は、毎分16ミリ㍑が限界。そこへ炎天下で仕事をしている人などは水分を摂りすぎて、体内の電解質(ナトリウムとカリウム)のバランスが崩れてしまい、低ナトリウム血症を起こして意識を失ってしまうことがあるのです」(内浦氏)

 しかし、前述したようにいくら喉が渇いているからといって、一気に水分を飲み込むと、腎臓で処理しきれない水が血中に流れ、ナトリウム濃度が低下してしまうのだ。健康ライターの深見幸成氏はこう語る。

 「こうした状態を放置すると、頭痛や食欲不振の症状などが表れ、重度の場合は痙攣や昏睡状態に陥ることもあります。加えて、水分の摂りすぎは、花粉症などのアレルギー症やアトピー性皮膚炎を悪化させることも分かっています。また、摂取する場合、水分の温度は冷たすぎず熱すぎない程度のものが好ましい。それも一気にガブ飲みするのではなく、少しずつ飲むこと。冷たい水は体を冷やすし、腹痛や頭痛、めまいを引き起こすこともあります。やはり常温か白湯がいいとされます。5〜10度の水道水ぐらいが無難でしょう」

 ここで、もう1つ重要なことは、寝る前と起床時の水分は健康の源といわれ、非常に大切だということだ。

 人は寝ている間に、コップ1杯から2杯分の汗をかく。しかもその間、当然ながら水分は補給されない。その状態が、脳梗塞などを引き起こす原因ともなる。また、起床時の水分補給は、消化管を刺激して排便を促し、便秘解消にも繋がるという。

 ちなみに寝ている間、体内では昼間に働いていた臓器や筋肉などを休めたり、肌の修復などが行われているが、水分が不足すると栄養が各所へ運ばれにくくなり、良質な睡眠とは言えない状態になる。