iPhoneはAppleが開発したスマートフォンであり、その初代モデルは2007年1月に発表されました。Appleが初代iPhoneを開発するために使用していたプロトタイプ基板が、テック系メディアのThe Vergeによって世界で初めて公開されています。

The first iPhone prototype: an exclusive look at Apple’s red M68 - The Verge

https://www.theverge.com/2019/3/19/18263844/apple-iphone-prototype-m68-original-development-board-red

今や全世界に多くのユーザーが存在しているiPhoneは、初期の開発期間には「M68」や「Purple 2」といったコードネームで呼ばれていました。さらに、実際に開発に取り組んでいたエンジニアの多くも、自身が開発しているデバイスの完成形がどのようになるのか知りませんでした。

iPhoneはApple内でも重要な機密として扱われており、発表前にiPhoneの完成形などがリークされるのをできるだけ防ぐため、実際のiPhoneとは全く違うプロトタイプ基板を用いて開発が行われていました。The VergeはRed M Sixtyと名乗る匿名の人物の手引きにより、実際に「M68」の開発に使われたプロトタイプ基板を写真に収めることに成功しています。

一見すると、iPhoneのプロトタイプ基板は古いPCのマザーボードのようにも見えます。基板の右下に設置されているのが実際に発表されたiPhoneのディスプレイであり、プロトタイプ基板が本当のiPhoneとは似ても似つかない、かなり大きめのサイズに広げられたものだとわかります。このプロトタイプ基板は主にソフトウェアエンジニアおよび通信部分を担当したエンジニア向けのものであり、iPhoneのディスプレイなしでエンジニアに提供されることも多かったため、これらのエンジニアらはiPhoneの完成形を知らなかったそうです。



個々の部品がどのような機能を持っているのかを説明した画像がこれ。iPhoneの開発に必要なさまざまなコンポーネントが搭載されており、実物のiPhoneディスプレイが存在していなくても、開発を行えるようになっています。



プロトタイプ基板にはMini-USBポートが2つ搭載されており、エンジニアがiPhoneのスクリーンを使うことなく、iPhone用のソフトウェアやアプリケーションをコーディングできるようになっています。また、LANポートや電話回線に使用するRJ11コネクターも付属しており、プロトタイプ基板にヘッドセットを接続して音声通話のテストができたそうです。



上部にはSIMカードスロットや、プロトタイプ基板に電源を供給するDCアダプターも搭載。



iPhoneの中心部ともいえるアプリケーションプロセッサーは、OSストレージ用のNANDカードとセットになっています。また、RCA端子およびコンポーネントビデオコネクターを使い、エンジニアはプロトタイプ基板に外部スクリーンを接続することもできたとのこと。



また、驚くべきことにプロトタイプ基板ではiPhone本体なしでも開発や動作確認を可能にするため、電源ボタンや音量調節ボタン、カメラ、ホームボタンまでが用意されています。



プロトタイプ基板にiPhoneディスプレイを接続した場合、実際に基板上の電源ボタンや音量調節ボタンを押すことでiPhone本体の操作ができました。実際にプロトタイプ基板の電源ボタンを長押しすると……



基板に接続されたiPhoneが起動しました。



記事作成時点では、AppleはiPhoneの開発時にこのような巨大なプロトタイプ基板を使うことはなくなっているそうです。しかし、今回公開されたプロトタイプ基板は、世界を席巻するスマートフォンの開発当初の様子を思い起こさせてくれるものとなっていました。