2019年クラシック候補たち
第6回:ヴェロックス

 今年の3歳世代における”衝撃のデビュー戦”と言えば、この馬のレースを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。

 栗東トレセンの中内田充正厩舎に所属するヴェロックス(牡3歳/父ジャスタウェイ)の初陣である。


クラシックでの戴冠を狙うヴェロックス

 舞台は、昨夏の小倉競馬場。8月5日に行なわれた2歳新馬(小倉・芝1800m)である。ヴェロックスはここで、競馬ファンを唸らせる圧勝劇を披露したのだ。

 単勝1.9倍の断然人気に推された同馬は、すんなり先行すると、直線で一気に先頭へ。その後はムチを入れることなく、後続をみるみると突き放して、2着以下に8馬身もの差をつける勝利を飾った。

 この結果、一躍注目を集めると、次走のオープン特別・野路菊S(9月15日/阪神・芝1800m)では、単勝1.4倍という一段と分厚い支持を集めた。このオッズこそ、デビュー戦における衝撃度を表す評価だろう。

 だが、ヴェロックスはその人気に応えることができず、同レースでは2着に敗戦。逃げたカテドラルを捉え切れずに、半馬身の遅れをとった。

 そして、続くGIII東京スポーツ杯2歳S(11月17日/東京・芝1800m)でも人気を裏切ってしまう。強豪馬が集うなかで2番人気となったが、直線でたびたび他馬に接触されたこともあって、最後は外から伸びるも4着。勝ち馬とタイム差なしの接戦だったが、初戦のインパクトからして物足りなさが残った。

 こうして、デビュー戦の衝撃も徐々に薄れつつあったが、4戦目に挑んだ若駒S(1月19日/京都・芝2000m)では、過去2戦の汚名を返上する。好位につけてきっちり抜け出すと、後続の追撃も危なげなく振り切って快勝した。

 この勝利で、ヴェロックスは再びクラシックの有力候補に躍り出た。陣営も2戦目、3戦目の黒星はまったく気にすることなく、大舞台への期待は高まっているようだ。その様子を関西競馬専門紙のトラックマンが伝える。

「厩舎のスタッフによれば、2戦目は直前の調教があまりよくなくて、状態が今ひとつだったようです。また、3戦目は他馬に2度ぶつけられて、『体勢が大きく崩れた』とのこと。その影響が大きかったみたいですね。大跳びで、まだ体も緩いため、『一度体勢が崩れると、立て直すのに時間がかかる』とスタッフ。過去2戦の敗因ははっきりしており、陣営の評価は新馬のときから高いままです」

 さらに、デビュー戦のパフォーマンスを考えれば、「クラシックでの好走も十分意識できる」と、同トラックマンは続ける。

「デビュー戦のラスト600mを見ると、200mごとのラップタイムが11秒6、11秒3、11秒0と、ゴールへ向かって素晴らしい伸びを見せています。持ったままでラップが落ちないのは、相当な器。素材だけなら、間違いなくクラシックレベルです。

 ただ、若駒Sでも走りのフォームや折り合い面で『まだ子どもっぽいところがあった』とスタッフ。クラシックで勝ち負けに加わるには、本番までにどこまで改善できるかでしょうね」

 ヴェロックスはこのあと、オープン特別の若葉S(3月16日/阪神・芝2000m)を使ってクラシックに向かう。心身が成長し、デビュー戦で見せたあの能力を発揮できれば、大舞台で一発あってもおかしくない。

 小倉で鮮烈な走りを見せたヴェロックスは、クラシックでそれ以上の衝撃をファンに与えることができるのか。まずは若葉Sで圧巻のパフォーマンスを見せてくれることに期待したい。