ブロックチェーンスマホ「FINNEY」日本上陸、スライド式コールドウォレットで仮想通貨を保管
Sirin Labsは、ブロックチェーンスマホ「FINNEY」を日本で発売しました。価格は999ドル(約11万円)。同社のオンラインショップで販売を開始したほか、1月30日〜31日に開催される「ジャパンブロックチェーンカンファレンス2019」にて対面販売も行います。今後、Amazon.co.jpでの販売や、東京にて店舗販売も行うとしています。

■高度なセキュリティーで暗号資産を守る


「FINNEY」は、ビットコインなどの仮想通貨(暗号資産)を保管するための「コールドウォレット」を備えたスマートフォン。Google Playが使える一般的なAndroidスマートフォンとしての機能に加え、ブロックチェーン技術を利用するWebアプリ「DApps」をセキュリティーの高い環境で利用できるとしています。

AndroidベースのOS自体にセキュリティー保護のための仕掛けが施されているほか、物理的に独立した「コールドウォレット」を搭載。コールドウォレット領域の制御はAndroid OSとは独立したOSが担うことで、キーボードや画面のハッキングに対する耐性を担保しているといいます。

コールドウォレットでは仮想通貨などの保管や、ブロックチェーンを扱うためのパスコードを入力する機能を持ち、通常時はオフラインで動作します。本体上部をスライドした際に、コールドウォレットが有線で接続され、オンライン状態になります。



■セキュアスマホ「Solarin」の技術を応用


FINNEYを開発したSirin Labsは、スイスとイスラエルに拠点を置く企業。2016年には軍事レベルのサイバーセキュリティー技術を取り入れスマートフォン「Solarin」を約150万円で発売した実績を持ちます。Sirin Labsの創業者で共同CEOのMoshe Hogeg氏はSolarinについて「セキュリティーレベルが高すぎて、ロシア政府から販売を停止させられたほどだった」と紹介しました。

▲Sirin LabsのMoshe Hogeg氏

高いセキュリティー技術を土台として「ブロックチェーンをより手軽に扱えるデバイス」として開発されたのが「FINNEY」だ、とHogeg氏は説明します。

ブロックチェーン技術は、取引の記録を多くのコンピューターによる計算の結果(データベース)として残す技術。代表的な応用例として仮想通貨(暗号資産)がありますが、技術としては未だに未発達な面があり、多くの人が利用できるほどの成熟度はありません。

Hogeg氏はその状況を「今のブロックチェーンは投機的な利用とマネーロンダリングにしか使われていない」と厳しく指摘しつつ「FINNEYによって、ブロックチェーンが多くの人が使える技術になる」とアピールします。

ブロックチェーンの分かりやすい利用例としてHogeg氏が紹介したのが、アプリ間で残高を移行するというもの。たとえば「アプリAで1万円を課金し、500円を使って残りの9500円を別のアプリBへ送金する」といった使い方が、FINNEYに内蔵されたトークン(仮想通貨)間の変換機能を使えばシームレスに行えるとしています。

▲ウォレットのアドレスをQRコードで表示。Androidの共有機能を使ってメッセンジャーアプリなどで送ることもできます

また、FINNEYの「エデュケーションセンター」というアプリでは、DAppsの動画広告を視聴することで、仮想通貨を得られるという広告モデルも搭載しています。

Sirin Labsでは、将来的にはコールドウォレット内の仮想通貨を日本円や米ドルに変換して、そのまま決済する機能の導入も見据えており、開発を行っています。

なお、仮想通貨を保管する専用領域を備えたスマートフォンとしては、HTCの「EXODUS 1」が発売されています。この競合機種との違いについて、Hogeg氏は、「HTCの製品はAndroidに専用の保管領域を用意したもので、ホットウォレットと言える。FINNEYではコールドウォレットを搭載し、その制御もAndroidから切り離されたOSで行っているため、キーボードの入力や画面の盗撮といったハッキングに強い」としています。

■ハイエンドスマホ相当のスペック


FINNEYは2019年当初のスマートフォンとしては、上位機種に相当するスペックを備えています。ディスプレイは6インチの縦長・ノッチ付きで、解像度は1080×2160ドットとなっています。




チップセットはクアルコムのSnapdragon 845で、メモリー(RAM)は6GBを搭載。ストレージは128GBで、2TBまでのmicroSDカードを利用可能。バッテリー容量は3280mAhとなっています。メインカメラは12メガピクセルで、インカメラは8メガピクセルを搭載。

通信はLTEのカテゴリー12(下り最大600Mbps)で、23のLTEバンドをサポート。国内の3キャリアでの動作を確認済としています。いわゆる「技適マーク」は端末の設定から表示できます。独自OS「SIRIN OS」はAndroid 8.1がベースとなっており、Google PlayのアプリやGoogleが提供するサービスも利用できます。

デバイスの製造は台湾・鴻海グループのFoxconnが担当。Sirin LabsはコールドウォレットとSIRIN OSの開発を行っているとのことです。

▲セキュリティーレポート機能や暗号化通信技術を取り入れたメール、通話アプリも搭載しています

▲背面カメラの下に指紋センサーを搭載



【お詫びと訂正:2019/1/30:11:03】

初出時、機種名に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。