野村佑希も認めるクラッチヒッター・井上朋也(花咲徳栄)3年間で師匠を超える!

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 花咲徳栄は次々と逸材が出てくる。今度は1年生スラッガー・井上 朋也だ。生駒ボーイズ時代はボーイズ日本代表に選ばれ、世界大会を経験。花咲徳栄に進学すると、1年春は県大会・関東大会を合わせて3本塁打。そして夏の甲子園では9打数4安打を記録し、1年秋も県大会で3本塁打と驚異的な勝負強さを発揮している。ここまでは師匠を仰ぐ野村 佑希の1年生時と上回るパフォーマンスを見せているといっていいだろう。

 そんな井上のスラッガー人生はどのような形でスタートしたのか?また2019年度の意気込みを伺った。

いきなり発揮したスラッガーとしての才能井上朋也

 井上が野球を始めたのは小学校2年生から。始めたポジションは捕手。一番体が大きかったこと、そしてチームの中で、肩が強かったこともあり、捕手に任された。井上は捕手をメインに、投手、遊撃手を兼任。そして四條畷中に進むと、先輩のつながりもあり、生駒ボーイズに入部。まだこの時は高校野球ファンを驚かせるほどの長打力はなかった。

 中学1年生の時の本塁打は0本。そんな井上に転機が訪れたのは2年夏の合宿だった。

 「合宿の時にバッティングしたら、生駒ボーイズのグラウンドは98メートルありまして、結構大きかったんですけど、長打を打ちたいと思ったら、いきなりホームランになったんです。正直なぜ打てたかは分かりません(笑)」

 指導者に教わっていたことはタイミングをしっかりと合わせること、打つときにボールとの距離感をしっかりと取ることだった。つまり、ボールの軌道に合わせて、しっかりとトップを作り、スイングするだけ。それが現在の打撃フォームとなった。井上はその感覚がはまり、本塁打を量産した。

 そして中学3年にはボーイズの日本代表となり、2017世界少年野球大会に出場。メンバーには細川 凌平(智辯和歌山)、印出 太一(中京大中京)などそうそうたるメンバーのもとで、さらには優勝も経験した。井上にとっては貴重な経験となった。

 「とても良い経験でした。他国の選手と試合をする経験はなかなかないですし、ひとりひとり個人のレベルがいろいろだったので、少しでも気が抜けたら試合に出られなかったりするので、気が抜けなかったです。競争が厳しい強豪校行けば、こんな感じなのかなと思いました」

 そして進学先は甲子園優勝を決めた花咲徳栄に決めた。強打のイメージが井上に合っていたこと。また生駒ボーイズの監督が、花咲徳栄の岩井隆監督の東北福祉大時代の先輩だったことが決め手となった。実際入学すると、高校生投手の変化球の対応には苦しんだが、すぐに慣れ、4月の練習試合では初本塁打を記録した。

師匠・野村佑希の出会いバッティング練習中の井上朋也

 才能の高さを発揮した井上だが、井上にとって師匠と呼べる先輩に出会う。それが北海道日本ハムから2位指名を受けた野村 佑希(花咲徳栄)だった。

 「野村さんは長打力があって、すべて芯でとらえられるすごい打者でした。本当に優しいですし、僕にとって憧れで、すぐに師匠となりました」

 野村からはタイミングの取り方、アウトコースの打ち方などあらゆることを教えてもらったという井上。そして1年春にはすぐにレギュラーを獲得。県大会・所沢商戦で公式戦初本塁打を放つ。

 「打ったのはまっすぐです。入るとは思わなかったです。思った以上に打球が伸びていきましたね。本当にうれしい気持ちでした」

 喜びを見せた。そして準決勝のふじみ野戦でも本塁打を放つ。

 「打つ瞬間、ドライブしてしていまい、入らないかなと思っていたのですが、打球の行方を見ていたら、入ってました」

 そして関東大会・専大松戸戦では8回に反撃ムードを作る本塁打を放つ。打球はライト方向だった。

 「その時チームが負けていたので、とりあえず出ることだけを考えて、ストレートを思い切って振っていったら、ああいう結果になりました」

 井上のバッティングを見ると、初球からアウトになることを恐れず、フルスイングする傾向が見られる。それは打てる確率の高さを考えて、振っているようだ。

 「やはり、追い込まれてから打つより、追い込まれる前に打った方が確率も高いと思いますので、積極的に振るようにしています」

 また、井上の打撃について野村を含めて上級生たちが「勝負強い」という。その勝負強さはどこからきているのか。それはイメージすることだ。

 「ネクストバッターの時にチャンスが回ってきそうだったら、打ったらこんな感じになるだろうと、良いイメージは持ちます。

 でも1年の春は必死にやっていて、それを考える余裕はなかったです」と振り返る。井上朋也

 夏の大会前では「アウトコース」の打ち方を野村から学んだ。野村は軸足の股関節を意識して、スイングしているが、井上も野村の打法を倣った。

 「高校に入って体の使い方やそのコースを打つためにどう打てばいいのか、具体的に考えられるようになったと思います。それを考えることができるようになったにも岩井先生や、野村さんなど先輩たちのおかげだと思います」

 そして夏前の練習試合では横浜と練習試合を行い、2019年のドラフト候補に挙がる152キロ左腕・及川 雅貴から本塁打を放つ。

 「打ったのはスライダーです。2ストライクと追い込まれてたので、ちょっと浮いたのですが、反応で打つことができました。

 野球やってきて、及川さんは一番ボールが速いピッチャーでしたし、変化球も凄かったです。はっきりいって、打てる気はしなかったんですけど。こういう投手から打てたことは自信になりました」

 自信をつけて北埼玉大会に臨んだが、18打数6安打、打率.333と1年生にしては上々の結果だったが、井上自身、「春の時に比べてマークされていたので、厳しいコースが多くて、自分の技術ではあまり打てておらず、納得した内容ではなかったです」と満足はしていない。

 甲子園入りしても調子が上がらなかった。それでも鳴門戦の第1打席で二塁打。そして逆転適時二塁打を打つなど、花咲徳栄の4年連続初戦突破に貢献した。先輩たちと長く野球をやりたい。それが活躍を呼んだ。

 「甲子園初ヒットが出て、ちょっと気持ちが楽になりました。8回の打席を振り返ると、ネクストバッターサークルで自分が打つイメージをしていました。そして勝ち越し打を打ったのはスライダー。しっかりとくらいついて、打ち返すことができました。あの試合はずっと負けてたんで、やっと逆転したと、ほっとした気持ちになりました。先輩たちから 『ナイスバッティング!』と声をかけられて嬉しかったです」

 しかし続く2回戦の横浜戦では、最後の打者となってしまった。

 「ネクストバッターズサークルで良いイメージはしてたんですけど、ワンスリーからの真ん中の真っ直ぐを逃してしまったのが一番大きかったです。大事な場面で逃さないことが自分の課題だと感じました」

今度は夏の甲子園でホームランを打つ!井上朋也

 甲子園後、秋の県大会まで高校通算10本塁打の井上は9月23日の宮代戦で2本塁打を放ち、敗れた埼玉栄戦でも本塁打を放ち、高校通算13本塁打まで伸ばした。そのうち公式戦での本塁打が6本なのだから、恐るべし実戦の強さである。

 そんな井上が目指すのは野村 佑希が残した58本を超えることだ、― 野村さん「やはり野村さんを越したいです。繰り返しになりますが、野村さんは僕にとって憧れで、目標の存在でもあるので、野村さんみたいになれるようにしっかりやっていきたいです」

 野村も井上に対してかなりの期待をしている。

 「バッティングは凄くいいですけど、守備を見ても肩もいいし、すごくセンスがある選手。そういう力を大きい舞台で出し切るので、プレッシャーに強いというかメンタルが強くて、凄いと感じています。

 これからまた違った立場になると思うんですけど、最後はもっと大きい選手になって、井上が活躍するのを楽しみにしています」

 井上は打撃だけではなく、守備にも目を向けている。

 「やはり打つだけではなく、守備でもチームを助けられるような選手になりたいです。1年生で入ってたのは自分だけなので、やはり自分が一番に声をかけてやっていかなきゃいけないなと思います」

 この1年間、先輩たちに助けられ、そしてプレーに集中してもらえるよう気遣ってもらった。自分もそうしていきたいと思っている。

 「3年生の皆さんは、本当に優しかったです。1年生は自分ひとりで入ってたので、迷惑かけたこともあったんですけど、それでも我慢してくれて、気を遣って、ちょっとでも自分がやりやすい野球の環境を作ってくださっていたと思います。僕もそれを意識していきたい」

 目標は来夏、二度目の夏の甲子園出場を果たし、今年打つことができなかった甲子園のホームランだ。

 「来年も活躍して、1年だけではなかったなといわれるようにしたいです。そして甲子園でホームランを打って、野村さんに報告したいです!」

 そう、井上伝説はまだまだ序章である。2019年、2020年と井上はどんな活躍を我々に見せてくれるだろうか。

取材=河嶋 宗一