GKとして緊急登板した奈良は好セーブも披露。必死にゴールを守った。(C)SOCCER DIGEST

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[J1リーグ12節]川崎0-2浦和/5月2日/等々力
 
 事件は浦和に2点をリードされて迎えた70分に起きた。後方からの浮き球のパスに浦和のFWアンドリュー・ナバウトが抜け出すと、絶体絶命のピンチを阻もうと川崎の守護神チョン・ソンリョンがペナルティエリアを飛び出して果敢にスライディングを試みた。しかし、ふたりは激しく交錯。このプレーでチョン・ソンリョンにはレッドカードが提示された。
 
 さらに川崎は3つの交代枠を使い切っていたため、新たなGKを投入することができず。「なかなか経験のない状況。こういう時どうするかはなにも決まっていなかった」と谷口彰悟が振り返ったように、非常事態に見舞われたのだ。そこでGKの代役を務めたのがCBの奈良竜樹だった。
 
「3人の交代枠を使っていたので、(車屋)紳太郎くんがベンチのところに(ユニホームを)取りにいって、紳太郎くんがやるんだろうなと思ったら、僕に渡された。指さされて、『はい』と。ただ僕はソンリョンさんを退場にしてしまったことのほうを考えていたので、その時の感情はあまり覚えてないです」
 
 奈良はGKとしての緊急登板が決まった時の想いをそう振り返る。一方の谷口ら守備陣は「とにかくシュートを打たせないように」と考えながら、「こうなったらしょうがないと。割り切ってリスクをかけて攻めようと話していた」とも説明する。
 
 当の奈良も「他の選手がコースを切ってくれた」と、周囲と連係しながら浦和の数本のシュートをセーブし、攻撃時には高いポジションを取ってパス回しに参加するなど、臨機応変な動きを見せた。
 
 結局、10人での戦いを強いられたチームは最後まで浦和の守備網を崩すことはできなかったが、「10人になってからも前を向き続けたことは次につながると思います」と奈良は次戦に目を向ける。
 
 ハプニングに見舞われ、リーグ4連勝を逃した川崎だが、試合中のようにしっかり切り替えることができるか。5月5日にはFC東京との“多摩川クラシコ”が待っている。
 
取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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