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資生堂、売上高・利益ともに過去最高のワケ

化粧品国内トップの資生堂が2017年12月期、売上高1兆円を初めて超えた。連結営業利益も前期比約2.2倍の804億円と利益も過去最高を更新している。

好調の要因を一言で言うならば、14年より社長に就任した魚谷雅彦氏の構造改革が実を結んだということになるだろう。地域ごとに権限を委譲し、厳格に予算を振り分ける「リージョン制」を導入。それぞれボトムアップ型の組織に立て直した。

そのうえで魚谷社長が着手したのが、「SHISEIDO」などのプレステージ(高価格帯ブランド)への投資拡大だ。直近3年で売上高を2270億円ほど上積みしたが、過半をプレステージ商品が占める。インバウンド需要の恩恵以上に業績への貢献度は大きい。

■SHISEIDOはロレアルやP&Gとグローバルで対等に戦える

海外事業も中国などアジアは好調だが、課題は欧米市場だ。米国では10年に買収したベアエッセンシャルが、のれん代などの減損損失を約1000億円計上。欧米事業でも16年にドルチェ&ガッバーナ(D&G)とフレグランス事業のライセンス契約を締結したが、前ライセンス保持者のP&Gがマーケティング投資を削減していた影響などを受け、市場シェアが低下している。

だが、ベアエッセンシャルについては本社の移転や直営店舗の閉鎖などで固定費を削減。同時にデジタルマーケティングを強化し、立て直しを進める。D&Gはブランド投資を復活させ、基幹コレクションの育成を進めている。いずれも19年にはその効果が出て上向いてくるとみている。

今後、資生堂がさらに飛躍するためには売り上げ500億円以上の大型ブランドの育成が必須だ。ロレアルやP&Gなどのグローバル企業は10以上保有する一方、資生堂は「SHISEIDO」など4つ程度。1000億円を超えるメガブランドも含め現状から複数追加していければ、グローバルで対等に戦えるポテンシャルは十分にあるだろう。

(SMBC日興証券 アナリスト 山中 志真 構成=衣谷 康 写真=iStock.com)