16カ月連続のプラス成長で、さらなる成長に向け各社の能力増強は進む(オークマの「DS2」)

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 工作機械の2017年度の受注高が過去最高の1兆7800億円に達した。日本工作機械工業会が10日まとめた17年度受注高(速報値)は、前年度比38・1%増の1兆7803億2800万円。過去最高だった07年度(1兆5939億円)を大きく上回った。記録的な足元の設備需要と中長期の市場拡大を見据え、各社は生産能力拡大や販売体制拡充を急ぐ。ただ米中の貿易制裁措置や年初来の不安定な為替や株価の動きは設備投資熱に冷や水を浴びせかねない。

 工作機械受注は単月1000億円のラインが好不調を分ける目安とされる。17年度は月平均が1480億円を上回ることからも、市況の活発さを見てとれる。3月単月は前年同月比28・1%増の1828億4900万円で、16カ月連続のプラス成長が続いた。

 3月単月の外需は前年同月比18・9%増の1073億2200万円と16カ月連続プラス、内需は同44・0%増の755億2700万円と14カ月連続プラス。内需は26年6カ月ぶりに700億円台になった。

 10日、日刊工業新聞社がまとめた工作機械主要7社の17年度受注は、前年度比26・6%増の4754億6700万円だった。このうち牧野フライス製作所、ツガミが過去最高額に手が届いた。

 この他の2社も過去2番目の記録を更新するという好況ぶりだ。年度を通じて自動車、航空機、半導体、一般機械と幅広い業種で中小、大手企業の投資がともに進んだ結果だ。

 一方、先行きを見通すとマイナス材料もちらつき始めた。年明けから株価や為替の動向が安定感を欠く。日工会による会員を対象にした景気動向指数(DI)調査(3月調査)は、2四半期連続で低下した。水準は高いものの、勢いはやや落ち着く見通しだ。

 また、米国が中国に対し、米通商法301条に基づく制裁を発動しようとし、中国が対抗措置をとるなど、米中の貿易摩擦が現実味を帯びてきた。経済指標や国際情勢が不安定化すれば、設備投資をためらう様子見ムードが広がる傾向がある。

 最大規模の工場を中国に構えるツガミの西嶋尚生社長は、「将来的な影響については様子をみていきたい」とまずは事態を見守る。

 ただ、両国の対抗措置が表面化している3月も、オークマや牧野フライス製作所が単月最高の受注額をたたき出しており、まだ暗い影は落としていない。為替についても「現在の水準であれば問題ない」(オークマ)とみる。

 年内の市況は「このままの調子が続く」(同)、「3月までの傾向に変化はなく、現在の状況が続きそうだ」(牧野フライス製作所)と前向きな見通しが目立つ。

 工作機械産業は山の後に谷があり、これを数年ごとに繰り返す「シクリカル産業」の典型だ。今の極めて強い設備需要は、いつかは落ちるというのが一般的な見方だ。

 しかし、25年ころには「受注高が2兆円になっている」(森雅彦DMG森精機社長)と、過去最高の現在からさらに市場が拡大するとの見通しが業界では支配的だ。