過去最大の営業赤字に陥った大塚家具。大塚久美子社長は「当社の強みが一般の方々に届いていない」と語った(撮影:今井康一、写真は2017年11月に撮影)

「『ニトリやイケアみたいに低価格でいくのでは』『会員制はなくなるからサービスもなくなるのでは』という俗説が広まった。当社の強みがほとんど一般の方々に届いていない」。東京・有明の大塚家具本社で開かれた決算説明会の場で、大塚久美子社長は悔しさをかみしめるように語った。

2月8日に発表された同社の2017年12月期決算は、売上高410億円(前期比11.3%減)、営業損益51億円の赤字(前期は45億円の赤字)と、過去最大の営業赤字に転落。5億円の営業黒字を想定していた期初計画はおろか、2017年7月に下方修正した43億円の営業赤字という計画すらも下回る結果となった。

店舗売上高は6カ月連続で前年割れ

創業者である父・勝久氏との経営権をめぐる委任状争奪戦(プロクシーファイト)から3年。久美子社長は勝久氏が築き上げた会員制のビジネスモデルを撤廃し、オープンな店づくりや店舗小型化への変革を進めている。ただ現在の業績を見るかぎり、まったく成果を上げられていない状況にある。

店舗売上高は低迷が続き、2017年8月以降は6カ月連続で前年同月割れ。新宿や銀座といった繁華街の店舗売り上げは小幅減にとどまったが、有明や大阪南港のショールームに代表される大型店の客数は減少が著しかった。

これら大型店は、結婚やマイホーム購入などライフステージごとの家具のまとめ買い需要で成長した、同社の事業戦略に沿って作られたもの。だが、嫁入り道具でたんすや鏡台を取りそろえるような習慣は薄れ、今や新婚夫婦でも新たに購入するのはベッドくらい。ライフスタイルの変化やEC(ネット通販)の浸透とともに、店舗でまとめ買いをする客は減少していった。その結果、多数の商品を陳列する大型店は閑散とし、運営コストばかりがかさむ状況に陥っている。


大塚久美子社長は「ブランドイメージがここ数年、揺れ動いている」と語る(撮影:尾形文繁)

消費者のニーズと店舗構造のズレを埋めきれなかったことに加え、久美子社長が業績悪化の要因に挙げたのがブランドイメージの問題だ。低価格の自社企画商品を展開するニトリやイケアと異なり、大塚家具は客の要望を聞きながら、幅広いブランドや価格帯の中で最適の商品を提案することを強みとする。

「あの(お家騒動の)過程の中で、大塚家具が低価格に行く、サービスがなくなる、という憶測が流れた。誤解が引き続き定着していて、正確な認識にしていかないといけない」(久美子社長)

年間100億円弱の賃料を圧縮

2018年12月期は、売上高456億円、営業利益2億円と黒字転換を見込むが、会社の立て直しには厳しい道のりが待ち受けている。黒字回復の切り札に掲げるのがコスト削減だ。


2017年11月に大塚家具はTKPとの資本業務提携に踏み切った(撮影:今井康一)

特に大きいのが賃借料の圧縮。郊外大型路面店を軸に店舗を展開するニトリなどとは対照的に、大塚家具は都心の一等地や、郊外でも駅前などの便利な立地に多数店舗を構える。それだけに同社が支払う賃借料は年間94億円(2017年12月期)に及び、経営を大きく圧迫していた。

こうした高コスト体質から脱却するため、家主との交渉により大型店の面積縮小を進めている。2017年12月期に店舗規模の適正化に伴う損失を引当金として計上したこともあり、2018年の賃借料は78億円にまで圧縮できる見込みだ。

中には、賃貸借の契約期間が終わるまで賃料を下げられない物件もある。そこでカギを握るのが、2017年11月に発表した貸会議室を運営するティーケーピー(TKP)との資本業務提携。新宿や仙台の店舗では、販売フロアの縮小で空いたスペースをTKPとの合同イベントホールとして活用することが決まり、大塚家具が負担する賃料を多少軽減する効果が期待できる。

さらに、会社側が強調するのが法人営業の強化だ。2020年の東京五輪に向けて建設ラッシュが続くホテルからは引き合いが強く、受注残も積み上がっているという。少子高齢化で新築住宅の供給が弱含みする中、久美子社長は、高齢者施設やサービス付きマンションを含め、将来的には法人経由での事業を拡大する可能性についても言及した。

コスト削減も、いずれ限界

とはいえ、現状でホテルや企業応接室など法人を対象としたコントラクト部門の売り上げは全体の5%にすぎない。通常の店舗販売と比べ利幅も薄いため、利益貢献はごくわずかだ。前年割れが続く店舗の売り上げの成長戦略を描けないかぎり、大塚家具の立て直しは厳しさを増す。


大塚家具は店舗の成長戦略をどう描くのか(編集部撮影)

実際、2018年12月期の会社側の計画でも、ECなどを除いた既存店舗の売り上げは若干減を見込んでいる。賃借料や人件費をはじめとしたコスト削減効果も、いずれ限界が訪れる。

「大きな事業構造を変えていくときには一定の時間がかかる。途中で中断するのがいちばんまずい。それが実際に起きてしまったのが(父娘で経営権を争った)3年前。最後までやり遂げることが重要だ」。久美子社長は、自らが進める改革の方向性は間違っていないと自分自身に言い聞かせるように、そう強調した。

3年前に115億円あった現預金は18億円にまで減少し、まさに瀬戸際に立たされている大塚家具。成長できる店舗の将来像を明確に打ち出せない中、危機をどう乗り切るのか。改革の成否を判断するための時間はほとんど残されていない。