精密機械のようなショットの秘密とは?(撮影:米山聡明)

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今季活躍した注目選手のスイングから強さの要因を探る“Playback LPGATour2017”。第41回は「PRGRレディス」でツアー通算25勝目を挙げた全美貞(韓国)。コンスタントに勝利を積み上げられる全のスイングを、上田桃子らを指導するプロコーチの辻村明志氏が解説する。
【連続写真】フットワークを使わないのが特徴の全美貞のスイング!
今年、ツアー通算25勝目を飾った全美貞さんです。12年に賞金女王に輝いた実力者ですが、35歳になってもまだまだ元気ですね。スイングを見ると、とにかくベタ足にして、スイング中にフットワークをあまり使わないのが特徴です。いい意味で足が暴れていませんが、それだけ上体の動きに執着しているように感じます。身長が175センチと高い割に飛ばし屋ではないのも、足の動きをあまり使っていないからでしょう。
スイング中に体が傾かないことを意識しているように見えますが、インパクト後は左に振り切る意識も感じられます。絶対にクラブをボールの下から入れたくない気持ちが強いうえに、左サイドに振り抜きたい意識があるせいか、ダウンスイングでの胸の開きが早いように思います。右腰の位置が高く見えるのも、その影響でしょう。クラブヘッドを少し外回りさせながら、早めに出そうという動きもありますね。
バックスイングでクラブを上げた軌道よりも外からクラブを下ろしていますし、ダウンスイングで右肩を前に出すタイミングも早いので、本人的には軽いアウトサイドインの軌道を意識しているのでしょう。足の粘りがあるので、スライスではなくストレートに近いフェードを打っています。左腕とクラブの角度をつくっているので、クラブフェースを被せ気味に下ろしてきてもボールがつかまり過ぎることはありません。フェースを被せることとアウトサイドインの軌道が相殺されるので、ストレートに近い球筋なのでしょう。もしもダウンスイングで手首のコックを解くのが早いと、スライスになります。基本的に、アウトサイドインの軌道でスイングするからといって、必ずしもスライスが出るとは限りません。ボールのとらえ方やフェースの向き、手首の角度をどう維持するかによって変わります。
美貞さんのスイングでは、左サイドへの振り抜きがいいところですが、全体的には、軸が傾かない、ベタ足、コンパクトの3つがキーワードになります。上体を起こし、ヘソにグリップエンドを当てた状態で体を回しているようにクラブを振っているイメージです。

解説・辻村明志(つじむら・はるゆき)/1975年9月27日生まれ、福岡県出身。ツアープレーヤーとしてチャレンジツアー最高位2位などの成績を残し、2001年のアジアツアーQTでは3位に入り、翌年のアジアツアーにフル参戦した。転身後はツアー帯同コーチとして上田桃子、藤崎莉歩、小祝さくらなどを指導。上田の出場試合に帯同、様々な女子プロのスイングの特徴を分析し、コーチングに活かしている。プロゴルファーの辻村明須香は実妹。ツアー会場の愛称は“おにぃ”。
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