日本代表のトップ下と言えば香川だったが、本人はインサイドハーフでのプレーに強い興味を示した。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 意外だった。てっきり「もちろん、トップ下のほうが……」といった趣旨の答えが返ってくるかと想定していたが、予想は外れた。
 
 4-3-3を基本布陣とするハリルジャパンで、中盤3枚の編成は「トップ下+2ボランチ」か「2枚のインサイドハーフ+アンカー」の2パターンある。最近は後者がメインになりつつあるが、先のニュージーランド戦では前者の形でスタートした。
 
 トップ下に収まったのは香川真司だった。日本代表では慣れ親しんだポジション。過去にインサイドハーフで起用された試合もあるが、「トップ下・香川」のほうがはるかに多い。背番号10にとってトップ下は、いわば主戦場であり、聖域だ。
 
 それだけに、インサイドハーフを2枚並べる現在の風潮を、香川自身はどう感じているのかは気になるところだが、むしろ歓迎しているようだった。
 
「正直、僕はインサイドハーフのほうがよりフィットするのではないかという感覚があります。もちろん監督が決めることですけど、インサイドハーフでも試していければ」
 
 そう考えるのは、「そっちのほうが攻守にバランスが取れる」から。3トップとの連係でも、ふたりのインサイドハーフのほうが「後ろからフォローできる」とイメージする。
 
 また、プレーに関与する回数が多くなるのも、インサイドハーフに惹かれる理由だ。
 
「インサイドハーフのほうが、ボールに触れる機会が増えると思います。今のサッカーは、トップ下はより3トップに近い位置を取らないといけない。自分のリズムという意味では、インサイドハーフのほうが(リズムを)掴みやすい」
 
「トップ下・香川」ではなく、「インサイドハーフ・香川」。ドルトムントではインサイドハーフが定位置なだけに、自然な流れでもある。
 
 そのドルトムントで、香川がインサイドハーフでコンビを組むことが多いのが、ゴンサロ・カストロだ。SBでのプレー経験があるだけに、攻撃だけでなく守備でも頼りになり、ボールを前に運ぶ力にも優れている。
 
 日本代表で言えば、井手口陽介のようなタイプか。攻守両面でタフに振る舞い、献身的な働きでチームを下支えする。インサイドハーフに意欲を示す香川にとって、クラブで普段から一緒にプレーしているカストロのような選手が代表にもいるのは幸運だ。

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 もっとも、インサイドハーフで誰とコンビを組むにしても、香川自身のスタンスは変わらない。
 
「ドルトムントでもそうですけど、誰とでもやらないといけない。誰とやっても、自分の良さを出せる選手でないと上には行けない。それは痛感しているので。特に代表に来ている選手はそれぞれ特長がある。それをお互いに生かし合いながらやれればいい」
 
 それでも、やはりインサイドハーフのパートナーは井手口が最良の選択になるかと思われるが、台頭著しい21歳の若獅子について、香川は次のように語っている。
 
「すごくアグレッシブで、前にも行ける選手。この前のオーストラリア戦も凄かった。もっと試合を重ねていければ、よりお互いを分かり合えると思います」
 
 インサイドハーフの候補者は、香川や井手口のほか、山口蛍や小林祐希、柴崎岳がいる。トップ下と比べてライバルは多い印象だが、熾烈な定位置争いは覚悟のうえだ。
 
「今さら、誰がいるとか関係ないですし、自分は自分のプレーをすればいいだけ。そうやって勝ち残っていく世界なので」
 
 表情はやや険しかったが、その言葉からは強い決意が感じられた。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)