新VAIO S11実機レポ。デザイン一新とUDカーボン復活で「VAIOらしさ」が戻ってきた
9月21日に新VAIO S Lineが発表されました。1年9ヵ月ぶりの後継機となる今回の製品は「VAIOらしさの復活」が大きなポイントとなっています。一足早く新VAIO S11を触る機会を得られたので、さっそくレビューしましょう。現行S11が登場したとき、当時はまだSIMフリーLTEモジュールを搭載するPCが少なかったこともあり、モバイルPCの今後の指針として注目を集めました。

テザリングやWi-Fiスポットを探すことなく、いつでもどこでもネットに接続できるという快適さは、一度利用すれば、もはやLTEなしのモバイルPCは考えられないぐらいです。

ただVAIO S11は、その前モデルあるソニー時代のVAIO Pro 11に比べてデザインの洗練さが少し欠けていました。重量も増えたため、モバイルPCとしての堅牢性やLTEモジュール内蔵はとても魅力的だったのですが、VAIOを所有するという優越感が少々薄らぐ感じでした。

かくいう筆者はVAIO Pro 11ユーザーであり、現行VAIO S11が出た当時も購入しようと思ったのですが、その点がどうも引っかかってしまったのと、当時は2年しか経っていなかったのでスルーしていました。

▲ブラックボディーがソニー時代の「VAIO Pro 11」、シルバーボディーが現行の「VAIO S11」、ブラウンボディーが新「VAIO S11」。VAIO S13というか、VAIO Pro 11に近いデザインに戻った

そんな筆者にとっても今回のVAIO S11の刷新は、とても魅力的に映りました。まず、天板にUDカーボンが復活しました。軽量でありながら堅牢性も高いということで、VAIO Pro 11のとき採用されたUDカーボンですが、S11では採用されませんでした。

今回採用したのは軽量性を取り戻すためとのこと。S13で採用しているマグネシウム合金の天板と同等の強度が得られ、より軽量としています。



▲新VAIO S11の天板。枠以外はUDカーボンだが、塗装により外観上はカーボンらしさはない

VAIO Pro 11のときは、天板全体がUDカーボンだったのですが、新VAIO S11は周りがポリカーボネートで内側だけUDカーボンになっています。液晶上部は、LTEとWi-Fiのアンテナが組み込まれているので、電波の受信感度を考えてポリカーボネートになっていますが、それと一体になっているデザインです。

ディスプレイを開くと、これまでパームレストとキーボード部分とで分かれていましたが、アルミを採用し一体化され、内部構造の見直しによりキーボードのたわみも少なくなっています。

また、ヒンジ部分が机に接触して持ち上がり、キータッチしやすい角度を生み出すチルトアップヒンジ構造は、現行S11より角度が付いているのがポイント。パームレスト部分も段差をより少なくすることで、手首や手のひらにかかるストレスを軽減。パームレストがアルミになったこととあわせて、よりキーが打ちやすくなっています。



▲左が新VAIO S11、右が現行のVAIO S11。パームレスト全体が1枚のアルミ板になったことで、印象が大きく変わった



▲微妙だが、チルトしたときの角度が変わり、より傾斜がついた



▲手前側はより低くなり机との段差がより小さくなったので、手のひらへの負担は軽減される

キータッチの際の打鍵音も、より低い音に振ることで、とても静かな印象になりました。剛性がアップしたことで打鍵感もよくなっています。

今回、ボディーカラーがブラック、シルバーのほか、新色のホワイトとブラウンが投入されています。ホワイトモデルはキートップもホワイトとなっていて、かなり印象も違います。

さらにキートップの下面位置を、従来はパームレストと同じ位置だったものを0.2mm下げています。これによりゴミが入りにくくし、キートップが外れる心配も少なくなっています。



▲キ―トップの下側は、アルミパームレストより0.2mm低い位置にすることで、ゴミの入り込みを少なくし、キートップが外れることを防いでいる



▲バックライトは従来通り装備。打鍵感は従来と変わらずより静かになった

キートップは従来どおりUV硬化塗装により摩耗耐久性と防汚性を向上させ、ブラックタイプのキートップは、さらにフッ素により皮脂によるテカリを抑えています。

ボディーカラーによってキートップの色も決められており、個別に選択できないのは残念なところです。写真で見ると、ホワイトのキートップも捨てがたいですね。また、USキーボードが選択できるようになったので、US配列好きな人にとっては嬉しいのではないでしょうか。



▲ホワイトボディーは、キートップもホワイトに。ただしブラックと違い塗装にフッ素は含まれていない



▲USキーボードが新たに選択可能に。USキーボード好きには朗報

喜ばしい改善点としては、タッチパッドが左右2ボタンを搭載したことです。現行S13は2ボタン搭載でしたが、S11は一体型でした。

ボタン一体型タッチパッドは、Macのように1ボタンタイプならまだしも、2ボタンだと正直扱いにくいと感じます。特にウィンドウの移動時など、ボタンがないと操作しづらいことも多く、筆者所有のVAIO Pro 11もボタンなし仕様だったので、Bluetoothマウスは必須だったため、ここは嬉しいところ。

また、ボタンのクリック音も現行モデルより小さくなり、キーボードと合わせて静音化が進んでいます。



▲やはり、クリックボタンは独立してあったほうが操作しやすい。現行S13の仕様に合わせたかたちだ

キーボードの右下には、指紋認証のセンサーが搭載されました。正確に言うと非搭載も選択できますが、本体色にホワイトとブラウンを選択したりUSキーボードを選択すると、必ず搭載となります。

センサーは指を滑らす方式ではなくスマートフォンなどと同様タッチ方式。Windows Helloに対応し、認識時間は1秒ほど。起動時のログインやロック状態からの解除など、パスワードを入力しなくてもいいのはうれしいですね。



▲タッチタイプのセンサーを採用。認識するまで1秒ぐらいかかる感じ



▲WIndows Helloに対応し、スマートフォンの指紋登録と同様、何度かタッチして登録する。素早くやりすぎるとダメで、ゆっくり繰り返すのがポイント

ディスプレイの仕様は現行S11と変更はありませんが、その上にあるカメラ部分は、マイクが左右2つ配置し、音の到達時間の差異で、暗騒音を低減する仕組みになりました。また、スピーカーも正面下に配置され、音の響き方も良くなっています。



▲低反射コートが施された液晶は、フルHD解像度。上部にあるカメラの左右にマイクが備わっている



▲底面手前の両サイドにスピーカーを配置。音の響き方が良くなった

インターフェースは、今回一長一短がありました。HDMIの搭載とUSB3.0端子が2つから3つになったことはプラス要因ですが、USB 3.1 Gen2対応のタイプC(兼Thunderbolt 3)端子がなくなってしまったのはマイナス要因です。

VAIOとしては、法人をターゲットにしたいため、法人に喜ばれる仕様に重点を置いています。このため、あまり法人では利用されないUSBタイプC端子を省いてしまったわけです。

この点に関しては筆者としてかなり残念で、個人向けだけでもいいので、USB3.1 Gen2の仕様は残してほしかったですね。

VGA端子をいまだに重宝がる日本の法人は、レガシー仕様に囚われすぎていて、デザインもあまり変えてほしくないという要望が多いとのこと。

Windows XPをギリギリまで使い続ける(いや、いまだ使い続けている企業も?)ほどですから、より快適になる環境を捨てて、これまでの使い勝手を踏襲したいなんて考えでは、働き方改革も進まないし、いい製品も生み出されないのでは、と思います。




▲上が右側面、下が左側面。USBタイプCがなくなり、HDMI端子を搭載。USB3.0端子も2つから3つへ増えた

今回お借りしたモデルは、開発機でCPUはCore i3-7100U(2.4GHz)、メモリーは4GB、ストレージは128GB SSDだったため、CPUやグラフィックのベンチマーク結果の掲載は控えますが、SSDはSATA接続ながらシーケンシャルリードが533MB/sとかんばっていました。

また、ベンチマークソフトを回してもファン音がうるさいことがありませんでした。現行S11は使っていると意外とファンの回転が上がって音が気になるので、ものすごく静かに感じます。ただ、底面は若干暖かくなりますが、膝上において作業しても問題ないレベルでしょう。

公称のバッテリー駆動時間は、現行S11が14〜15.2時間に対し、15時間〜16時間と少し伸ばしています。実際に、バッテリーベンチとしてはかなりキツいPCMark 8の「Home」で実行したところ、5時間15分という結果でした。画面輝度20%で、動画や簡易ゲーム、ウェブ閲覧、テレビ会議といった動作を延々と繰り返すベンチで、この結果はかなりいい部類でしょう。

ちなみに、同テストとCore i5-6200Uを搭載した現行S11で計測したところ、3時間4分でした。CPUやSSDなどの構成が違ったり、バッテリーの劣化も考慮したりすると対等には比較できませんが、よくなっているといえるでしょう。ただあくまで参考として留めておいてください。




▲上が新VAIO S11のPCMark8 Homeのバッテリーベンチ結果。下が現行VAIO S11。性能差とバッテリーの劣化を考えると、あくまで参考程度に

CPUは第7世代インテルCoreプロセッサーから選択可能で、ストレージは第3世代ハイスピードプロSSD(1TB/512MB)と第3世代ハイスピードSSD(256MB)が選択可能に。現行の第2世代ハイスピードSSDに比べてもシーケンシャルリードで約1.5倍以上速いもの。

また、メモリーは最大16GBが選択できることで、クリエイティブな作業でも余裕が生まれました。

SIMフリーLTEモジュールは、現行S11に比べ、対応周波数帯が大幅に増加。LTE通信はドコモもauもソフトバンクも利用できます。また、アンテナの配置も見直されており、電波感度も向上しています。

これはWi-Fiに関しても同様で、Wi-Fi接続しようとネットワークアクセスをクリックして受信するSSID一覧を表示してみると、現行S11では表示されないSSIDまで表示され、近所にはこんなに電波が飛んでいるんだと実感できました。

Speedtest.netで速度も計測しましたが、速度的には現行S11とさほど差は出ませんでした。ただ、MU-MIMOに対応したので、対応アクセスポイントなら複数同時に接続していても速度の低下が抑えられるようになりました。これはルーターも見直せということですね。



▲SIMスロットは、現行S11と違い蓋がついた



▲Speedtest.netにてWi-Fi接続で計測。時間帯やサーバーの混雑具合で結果は左右されるが、昼間の筆者宅の結果としてはいい部類

さらに、LTEモジュール内蔵モデルは、日本では初となるWindows 10のデータプラン対応SIM「Cellular Data for VAIO」が同梱されています。これは、フランスの通信会社が運用するSIMで、グローバルローミングサービスを利用したプリペイドタイプになります。

無料で1GB/月使えるため、LTEが利用できるモバイルPCのよさをすぐ体感できます。一度使ってみて便利だと感じたら、そのまま使い続けるのもいいし、別途SIMを購入するのもいいでしょう。

同梱のSIMは国内だけでなく海外でも使えるので、いざという時に利用するよう、カバンの中にでも入れておくのもアリです。なお、このSIMの使い勝手については、下記記事をご覧ください。

新VAIO Sに同梱される契約不要データSIM「Cellular Data for VAIO」を一足早く使ってみた

▲LTEモジュール内蔵モデルにはWindows 10 データプランに対応したSIM「Cellular Data for VAIO」がついてくる。1GB/月の無料トライアル付き

短期間ですが、新VAIO S11を使ってみて、VAIO Pro 11時代のような洗練されたデザインが復活し、カラバリも増えたことで「VAIOを持つ優越感」に浸れました。

USBタイプC端子の廃止は残念ですが、使い勝手のよさ、性能のアップを考えると、筆者もいよいよ新VAIO S11への乗り換え時期だと感じています。

この原稿を執筆している時点では、まだどういう仕様にするか悩んでいますが、CPUはもちろんCore i7-7500U、メモリーは8GB以上、SSDは第3世代ハイスピード以上を選択したいところ。ボディーカラーはブラウンとホワイトとでかなり悩みましたが、ブラウンにしようと思っています。

もちろん自腹購入ですので、製品が届いたらベンチマークを含めて改めてレビューしたいと思います。製品の予約はすでにVAIOストアなどで始まっていて、最短で9月29日到着になります。
※追記:S11のLTE搭載モデルのみ、最短到着日は10月27日です。



なお、本機と同時に発表された新VAIO S13とS15の仕様、そしてLTE搭載モデルに付属する契約不要で使えるデータSIMに関しての詳細は、以下の記事を参照ください。

速報:新VAIO Sシリーズ3機種発表。S13はSIMフリーLTE対応、S11ともに新デザインに。指紋認証も

新VAIO Sに同梱される契約不要データSIM「Cellular Data for VAIO」を一足早く使ってみた