押しも押されもしないヴェルディ不動の軸、内田。アンカー起用でその重責はさらに強まった。(C)TOKYO VERDY

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[J2リーグ29節]東京V2-1長崎/8月20日/味スタ
 
 守備陣のとんでもない連携ミスで失点するなど、お世辞にも盤石の戦いぶりとは言えなかった。だが、チームがふたたび上昇気流に乗り始めたのは間違いない。
 
 J2リーグ・29節のV・ファーレン長崎戦を2-1でモノにした東京ヴェルディ。これで3連勝(8月は4戦負けなし)となり、昇格プレーオフ圏内ぎりぎりの6位を維持している。なぜ彼らは再浮上できたのか。効果をもたらしたのが、ひとつの“変革”だ。
 
 7月は2分け3敗と散々だった。開幕当初の勢いはどこへやら、拠り所としていた組織的な守備がまるではまらず、攻撃も行き当たりばったりの印象が強い。対戦が2巡目に入ると、相手チームも緻密なスカウティングを施す。引き寄せてカウンターを狙えば点が取れる、リトリートすれば攻撃は停滞する、サイドアタックに怖さはない、などなど。ヴェルディはすっかり与しやすい相手となっていたのだ。安定しない内容が続き、一時は11位まで順位を落とした。
 
 大きな変化を加えたのは、26節のロアッソ熊本戦からだ。基本システムとしてプレシーズンからその質向上に邁進してきた3-4-3を捨て、時折試験的に導入していた4-3-3への転換に舵を切った。
 
 ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督は「新しい形に変えるのに最適なタイミングだった。形の変化は、選手たちにフレッシュな感覚を持たせ、学びの姿勢をも喚起できる。効果的なチェンジになったね」と話し、指揮官の右腕であるコーチのイバン・パランカは「問題点をあらためて総点検した。攻撃も守備もより前がかりに行くための変化であり、選手個々の特性を引き出せるようになった」と、力を込める。イバン・コーチはバルセロナの下部組織とヨハン・クライフ氏から4-3-3の真髄を学んだ指導者。「ついにこの時が来た」と叫びたい気分だろう。
 
 そんななか、新たな役割を得て、チーム内での重要度をさらに高めた選手がいる。アンカーに指名された内田達也だ。春にガンバ大阪から期限付き移籍でやってきた25歳のボランチは、いまやヴェルディにもっとも欠かせないキーマンとなっている。
 
 内田はこの変化をどう捉えているのだろうか。
 
「きわめてオーソドックスな4-3-3です。前の3-4-3は最初こそ守備が機能して結果も出てましたけど、徐々にバランスが悪くなった。とくにプレスのところ。前は1トップと2シャドーで、その2シャドーがウイングの位置まで張り出して守備をしなきゃいけなかった。かなりの負荷がかかってて、それによってチーム全体の機能性も高まってこなかった。それがいまはウイングがそこは普通に見て、中央のところはインサイドハーフが対応する。いたってシンプルで普通。でもそこの違いがすごく大きい」
 
 では、具体的にどこがどう改善されたのか。
 
「3-4-3の守備は、良くも悪くも後ろが5枚。隙間がないんだけど、どうしても重たくなる。それでも監督は前からプレッシャーを掛けたい。それでさっき話したようにシャドーの守備の量がすごく多くなって、出る、締めるのところがまるではまらない。それがいまはコウタ(渡辺皓太)とカジくん(梶川諒太)のインサイドハーフがすごく効いてて、攻守で持ち味を発揮してる。一人ひとりが誰を捕まえるのかがはっきりしてて、プレスの質がかなり改善されたんですよ」
 
 以前は守備の局面で、1対2での対応を強いられた。そうなるとひとりでふたりを見ながら「切る対応」しかできない。内田は「相手の頭が良かったら、ドリブルで仕掛けられてピンチになってた」と振り返り、「それがいまはけっこう同数で対応できるようになって、球際の勝負になるシーンが増えたんです。前はひとに当たりたくても当たれなかったところで、コウタなんかは良さが出てますよね。ボールに対して迷わずアタックしていけるようになったのがすごく大きい」と説明する。