静岡大学などが開発した植物活性剤「サーモザイム」が、地球温暖化に伴う高温障害の回避に幅広い作物で効果があると分かってきた。同剤は野草のタケニグサから抽出した成分のサンギナリンを含み、高温に強くなるタンパク質(HSP)の生成を促す。販売する土壌改良資材メーカーの富士見工業などは、作物の葉や栽培土壌に散布するだけで、稲の白未熟粒や胴割れ米の減少、野菜はしおれや徒長の防止、花で香りの減少が抑えられると確認した。

 サンギナリンは植物が作るアルカロイドの一種。同大農学部の原正和教授が、タケニグサから同成分を抽出し、植物に散布すると高温に強くなることを発見した。植物に散布して1時間程度でHSPを増やす効果があると確認。HSPは熱で壊れたタンパク質を修復する力がある。

 富士見工業は、栃木県でタケニグサ約2ヘクタールを栽培委託し秋に収穫、サンギナリンをアルコールで抽出して製品化する。発売は2014年。1000〜1200倍に水で薄めて散布する。

 これまでに社内試験とユーザーの現地試験などで、多様な効果が明らかになった。

 水稲は未熟粒と胴割れ米が半分以下になったり、20%増収したりした例がある。食味値も向上した。野菜ではキュウリやレタスはしおれず、キャベツ苗は徒長しなかった。高温に伴う生理障害を回避した例もあった。バラは徒長が抑えられ、切り花本数に直結する枝の発生数が増えた。高温で薄くなる香りが高まる効果もあった。

 同社有機資源開発研究所の金田雄二所長は「水稲では育苗時の散布で苗の徒長防止や倒伏防止が期待できる。野菜もがっちりとした苗ができ、増収と品質アップがほぼ確認できた」と話す。問い合わせは同社、(電)054(282)2351。 

<ことば> タケニグサ 

 ケシ科タケニグサ属。山や野原のどこにでも生えている多年生の雑草。茎や葉裏は白っぽく、成長すると葉は長さ30センチ程度、中が空洞の茎は高さ2メートル程度になる。夏、茎の先端部に小さな花がたくさん咲き、秋、種が実る。茎を切るとサンギナリンを含む茶色の液が出る。サンギナリンは種に多く含む。