清水戦ではトップ下で起用された清武。新たな攻撃オプションが見られた。写真:川本 学

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 中断期間を経て2週間ぶりのリーグ戦に臨んだC大阪。15節の清水戦では、開始早々に先手を取られ、ビハインドを負った戦いとなったことで、「ゲームプランが崩れてしまった」(丸橋祐介)。
 
 さらに、失点後にやってきたファーストチャンスで杉本健勇のシュートが清水GKの六反勇治に阻まれると、その後も、敵陣に相手を押し込んでいたとはいえ、ゴール前を固める清水の壁を崩しきれない。
 
 試合終了間際、フリーキックの流れから、相手のハンドによりPKを得て、怪我から復帰した清武弘嗣の3試合ぶりとなるゴールで同点に追い付くことはできた。だが、相手の倍以上となる16本のシュートを放ち、12本のCKを活かしきれなかったのも事実だ。
 
「0-0の状態でチャンスを多く作れば、決めるチャンスは(もっと)多いもの。失点したのは完全に集中していなかったからだと思うし、もう二度とこういうことがないようにしたい」
 柿谷曜一朗は今季のC大阪が得意とする先手必勝の戦いができなかったことを悔いた。
 
 それでも、0-1で迎えた後半、目立ったのはユン・ジョンファン監督の積極的な采配。「どうしても勝負をつけたかった」と、後半開始から、ボランチの木本恭生に代えて、負傷明けの清武弘嗣を「自分が一番したいポジション」という本職のトップ下に据える。
 
 清武はその起用に応え、後半45分だけで7キロ以上の走行距離を記録したように、ボールのあるところに常に顔を出して、チームにリズムを生み出し、攻撃を活性化。これまではチームの軸とするサイド攻撃へのこだわりがあり、清武もサイドハーフとしての活躍を求められていたが、水沼宏太、柿谷曜一朗といった年代の近い攻撃陣との併用で好連係も生まれ、新たなオプションも増えた。
 終盤には藤本康太をセンターバックに加え、システムを4バックから3バックに変更。山口蛍がアンカー気味のポジションを担い、攻撃にさらに厚みを増した。そういった場合、カウンターを受けるリスクも伴うが、GKキム・ジンヒョンが広範囲に出てカバーリングするなど、相手に決定的な場面は作らせない。
 
「いつもどおりの感じで攻めていたし、逆に清水のほうがハーフウェイラインからこっちには攻めてこられない感じで、引いちゃっていた」と、藤本もいうように、違和感なくシステム変更して、攻勢をかけることができていたようだ。
 
 それも、「キヨくんが後半からトップ下に入って、流動的に動いてくれたので、違和感なくできていたと思うし、(柿谷)曜一朗くんも後半もっと前にパワーを使えたと思う」と丸橋も言うように、“トップ下の清武”効果という側面もあるだろう。
 
 序盤戦では山村のマルチな起用、守備固めの5バックなど、ディフェンスを重視した策で勝点を重ねてきた『ユン・セレッソ』。相手からのマークも徐々にきつくなり始め、清水のような戦いを仕掛けて来るチームも出てくるだろう。それでも、ここに来て攻撃面のオプションを増やしつつあるだけに、攻守両面での臨機応変な戦いぶりに注目したい。
 
取材・文:前田敏勝(フリーライター)