ー年収1,000万円では、都心で豊かな暮らしを求めることはできない。

結婚後も都心暮らしを視野に据える賢い女性なら、肌感覚として誰もが知っていること。

現実的には年収2,000万円以上あれば...そう考えつつ、年収3,000万円と聞けば浮き足立つ女がいる。

国税庁の「民間給与実態統計調査」から推計すると、年収3,000万以上を稼ぎだすのは、約500人に1人以下。人口の0.2%程度。

そんな経済的に恵まれた男性の妻の座を獲得したのは、一体どんな女たちなのだろうか。

その婚活戦略や結婚後の実態をお届けする。

これまでに、年収1,000万では暮らせないと嘆く真美、同期が偶然御曹司だった麻衣、慶應幼稚舎出身のエリート夫を特別枠で手に入れた典子、夫の年収を搾取する愛子などを紹介した。今週は?




【今週の年収3,000万の夫を持つ妻】

名前:彩乃(29歳)
夫の職業:食品メーカー勤務(33歳)
夫の年収:3,150万
結婚前の職業:運輸会社勤務
住まい:目黒


私学女子校出身者にしか分からぬ独特の世界


彩乃の実家は、大手運輸会社を営んでいる。創業者は彩乃の曾祖父にあたり、グループ内に関連会社もいくつか持つ一家の本家だ。

母から貰ったというエルメスのバーキン( 25cmのエトープ)と、アンティークと思われるカルティエのタンクがよく似合う彩乃は、黒髪のロングヘアーをなびかせて登場した。

幼稚園から東洋英和女学院に通い、一切の受験経験もなく、エスカレーター式で大学まで上がった彼女。

俗世から隔離されたような狭いコミュニティー内で生きてきた、私学の女子校出身者が放つ特有のオーラとゆったりした所作が印象的だ。

「生まれた時から今のような環境なので...正直、他の暮らしは良く分かりません。」

普通の人が言うと嫌味にも聞こえるが、彩乃は全く悪気なく言い放つ。仲の良い女友達もほぼ全員が幼稚園から一緒、本人だけでなく、周囲も含めて昔から“苦労”という言葉とは無縁の生活を送ってきた。

彩乃の口癖は、昔からこうだ。

「父が与えてくれていた以上の暮らしをさせてくれる人でないと、私は結婚できない。」

そんな彩乃の夫・進一郎も同じような家系、そして環境で育ってきた。彼らの出会いは至って単純である。

二人は“許嫁”だったのだ。


このご時世に未だ存在していた許嫁システム。その裏事情とは?


良家には良家がお似合い


夫・進一郎の実家は食品メーカーを営んでおり、こちらも代々続く優良企業である。

元々彩乃の父と進一郎の父は交流が深く、“子供ができたら結婚させよう”と冗談半分で口約束を交わしていた。

しかし大人になるにつれ、娘の幸せを危惧した彩乃の父は、この口約束を徐々に真剣なものと捉え始める。進一郎の父も、一族の名に恥じぬ嫁を迎えたいと強く願っており、親同士の利害関係は一致した。




「初めてこの約束を聞いたのは18歳の時でした。その時は私も他にお付き合いさせて頂いている男性が別におりましたし、ただの冗談だと思っていたのですが。」

進一郎も彩乃も、別々で学生時代を謳歌していた。

進一郎にいたっては、私学の内部生という学部内での揺るぎない立ち位置に、端正な顔立ち。そこに一流企業のご子息というタイトルまで保持しており、付き合いのあった女性は数えきれぬほど。

まさかこの約束が現実のものになるとは、当事者二人は思ってもいなかった。

「大学を卒業し、それぞれが親の会社に入りました。そして24歳の時に両親に話があると呼び出され、私の結婚相手は既に決まっているから、と告げられました。」

この時の彩乃の衝撃は言うまでもない。

当時24歳だった彩乃は社会人になり、出会いも急増した。当初は反発していた彩乃だったが、結局、親のような暮らしをさせてくれる男性はなかなか現れなかった。

そして何より、両家の結婚には双方の会社の利益も関連しており、徐々に断れない状況に陥ってくる。

「最後の決め手は、父の一言でした。“自分が注いできた以上の愛情を注いでくれる人、彩乃を本当に幸せにできると託せる人は、進一郎くんしかいないから”と。」

彩乃の父親は、娘が不憫な生活を送ることが許せなかった。

自分が手塩にかけて育ててきた愛娘に、同じような生活を送らせてくれる人を結婚相手として選ぶのは当然のこと。

幸い彩乃には5歳年上の兄がおり、家業は兄が継いでくれる。

そして二人は両親に推し進められるように、彩乃が26歳、進一郎が30歳の時に籍を入れた。

二人の結婚式は、進一郎の家の習わしに従い、帝国ホテルで盛大に行われた。参列者には財界や政界の大御所の姿もあったそうだ。


許嫁との結婚生活、良家が抱える遺産相続の問題とは?


意外と楽しい、許嫁との結婚生活


入籍後は目黒にある、進一郎の実家が所持していた土地を形式上購入し、一軒家を構えた。

両家が保持する不動産などを考えると、今後は固定資産税に加え相続税が大きな問題となってくるため、両家の親は対策に追われているそうだ。

「財産は法人化して管理していると聞いたことはありますが、私の理解の範疇を超えていて...全て進一郎さんに任せています。」

実家の会社の株の分配なども、彩乃はノータッチで全て夫まかせである。

そして彩乃夫婦に子供はいないが、彩乃の両親は相続税対策として“孫への教育資金の一括贈与制度”を利用し、1,500万円を孫に与えるのだと今から意気込んでいる。

「私たちよりも、親の方がこの結婚に満足そうですね。大恋愛を経ての結婚ではないですが...結婚生活は、意外に楽しいものですよ。」

現在彩乃は働いておらず、家で進一郎の帰りを待ちながら、専業主婦業に勤しんでいるそうだ。

昼間は東洋英和女学院時代の女友達とホテルでアフタヌーンティーをし、フラワーアレンジメント教室に通い、週に2回は実家に帰り母親と談笑。

結婚前に彩乃の両親が与えてくれていた生活と、何ら変わらぬ優雅な生活を謳歌している。




合った釜(夫)に似寄った蓋(妻)


「結婚とは、赤の他人同士が暮らすもの。そう言いますが、二人とも育ってきた環境が似ているせいか、そこまでのストレスもありません。」

些細なことだが、旅行に行く際に選ぶホテルや、車を購入する際に選ぶブランド(ジャガー)、車種も同じだ。

そして進一郎の目黒にある実家にも頻繁に顔を出すように心がけており、両家は良好な関係を築いている。

「一人暮らしも経験せずにそのまま嫁いだので、東京の家賃事情も光熱費も詳しくなくて...日々勉強中です。」

父親が与えてくれていた生活レベルを落とすことなく、現在の夫婦生活を楽しんでいる彩乃。

東京で生きて行く厳しさを、彩乃は今後も知ることなく暮らしていくのだろう。

▶NEXT:4月11日 火曜更新予定
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Vol.1:”年収1,000万ゴール”説の嘘。それっぽっちじゃ都心で暮らせない
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