居酒屋の「お通しカット」はマナー違反にあたらないのか
居酒屋などでお酒類を注文すると、こちらが何も言わずとも出されてくる「お通し」。あなたはムダと感じますか、それとも、うれしいと感じるでしょうか。
お通しとはそもそも何のためにあり、これを“拒否”することはマナー違反や非常識にあたらないのか――。オトナンサー編集部では、和文化研究家で日本礼法教授の齊木由香さんに話を聞きました。
お通しには「つなぎの役割」がある
齊木さんによると、お通しとはそもそも、客が着席してから最初に出される少量の料理のことで、「先付」「突き出し」とも呼ばれます。お通しには本来、しっかりとした料理が出るまでのつなぎの役割と、酒肴としての意味合いがあり、「これから出てくるお料理への期待感を高めるものであることが求められます」。
また「よく来てくださいました」「ごゆっくりお寛ぎください」という、おもてなしの心を表す意味も。こうした観点から、お通しは、季節感のある旬の食材を使ったものや、その店のこだわりを示す一品であることが大切であると言われています。
ただし最近では、お通しを出す理由は店によってさまざまです。席料代わりに簡単な料理やスナックを出す店もあれば、本来の趣旨に即して手をかけた一品を出す店も。「明らかに価格に見合わない、『手抜き』とも思えるお通しを出すお店もあるようです」。
大手チェーンはカットを事前想定
それでは、「お通しカット」と言ってしまうのはマナー違反なのでしょうか。まず大手居酒屋チェーンの場合、「お通しはいりません」という要望に対応している店も少なからず存在し、こうした店では、お通しカットは事前に想定されている行為であるためマナー違反と考える必要はなさそうです。
小料理屋や一般の居酒屋の場合はどうでしょうか。齊木さんは「本来の趣旨に即して、よく考えられたお通しであれば、ぜひ楽しんでほしいですね」と話します。「お通しは店の看板」という板前さんも数多くいて、こうした店では季節の食材や看板料理などを踏まえてお通しを作り、注文への起爆剤としているため、「下手なものは出てきません」。
「自分から頼んだお料理でないことは事実ですが、お通しによって、そのお店のお客様に対する姿勢やお料理への考え方が伝わります。楽しみながら、十分に味わうのがベストでしょう」
お通し自体が“名物”になる事例も
ちなみに、お通しを、「会って最初に交わす握手」「名刺交換」などと考える板前さんもいるほどで、お店の特徴を表し、好印象を与えうる料理であることが良いお通しの条件だそう。たとえば、看板食材のカキを使った料理をお通しに出して、好評を得ているカキ料理店や、日本酒に合う「一汁八菜」をお通しとして出すうちに、お通しが名物になった居酒屋もあります。
客にとっての「納得性」を高める工夫も大切で、複数の小鉢料理の中から好みのものを選べる形式も人気があるといいます。
「元々はおもてなしの心にも由来する、日本固有の慣習である『お通し』。しかし、お店の考え方によっては、その質や価格に大きな違いが出てきています。お店として、お通しをどのように位置付けるのか、改めて考える時期なのかもしれません」
(オトナンサー編集部)
