赤ちょうちんにのれん、そして食欲をそそる、あの煙。そんな「焼き鳥屋」を愛する人は多いことでしょう。しかし、漢字で書く「焼き鳥」と平仮名の「やきとり」にはどのような違いがあるのか、説明できる人は少数かもしれません。

 夜の酒場に映える赤ちょうちんにのれん、そして食欲をそそってやまない、あの白煙。玄関をくぐった先では、昔かたぎの大将が炭火を使って1本ずつ丁寧に焼き上げ、常連はグラスを傾けながら、その完成を待つ――。

 日本人が大好きな「焼き鳥屋」の典型的な風景ですね。しかし、この焼き鳥、注意深く見ると、漢字で「焼き鳥」と表記する場合と平仮名で「やきとり」と書く場合の2パターンがあることに気づきます。

「焼き鳥」と「やきとり」にはどのような違いがあり、その理由は何なのか――。焼き鳥をこよなく愛するオトナンサー編集部の記者が、フードジャーナリストのはんつ遠藤さんに取材しました。

「やきとり」は、より包括的な言葉

 遠藤さんによると、漢字で書く「焼き鳥」はあくまで「鳥肉(内臓含む)を串に刺して焼いた料理」ですが、平仮名の「やきとり」は鳥肉以外にも、牛や豚、馬などの肉(内臓含む)を串に刺して焼いた料理で「焼き鳥」よりも包括的な言葉。辞書も「やきとり」をそのように定義しています。

 そもそも鳥肉は大正時代まで、食肉の中で最も高価な肉でした。その後もブロイラーが登場する昭和30年代まで鳥肉は全国的に高く、「焼き鳥」は庶民には“高嶺の花”だったといいます。

 そんな中、終戦直後の昭和20年代に室蘭(北海道)や東松山(埼玉)、久留米(福岡)などの地域から、鳥肉ではなく豚肉を使ったものを「やきとり」とするよう、求める声が上がったのが「やきとり」の始まりだそう。「終戦後の貧しい時代、『やきとり』は屋台などで売られていました」(遠藤さん)。

お店の人は違いを意識していない?

 つまり何を材料に使ってもいい「やきとり」ですが、遠藤さんによると、全国には以下のような珍しい「やきとり」があります。

・エゾシカ肉を使った「阿寒やきとり丼」(北海道・釧路)

・馬肉(福岡・久留米ほか)

・ししゃも(福岡・久留米、福岡・博多ほか)

・豚カシラ(埼玉・東松山)

・豚バラ(北海道・函館、東海地方)

 ししゃもまであるとは…驚きですね。

 ちなみに焼き鳥屋さんは実際に、「焼き鳥」と「やきとり」の区別を意識して店名などをつけているのでしょうか。遠藤さんによると、答えは「ノー」。そうした“ルール”が存在するわけではなく、「焼き鳥屋」で鳥肉以外が出されることも、「やきとり屋」で鳥肉しか出されないこともあるようです。

 遠藤さんは「お店を選ぶ際に重要なのは、『焼き鳥』と『やきとり』の区別ではなく、『博多〜』『久留米〜』といった地名でしょう」と話しています。

(オトナンサー編集部)