--本書では数々の「アイヌ利権」について触れられています。問題と思われるのはどんな部分でしょうか?

 砂澤 本書では北海道アイヌ協会による修学資金貸付制度の悪用、職業訓練事業の不正利用、住宅購入資金の不正受給、アイヌ文化振興事業費の不適切会計などの実態を紹介しました。アイヌ利権問題の本質は、そもそもアイヌ民族というものがいまだ学術的に定義されていないにもかかわらず、アイヌ協会など特定の団体がアイヌと認めれば誰でもアイヌになり『アイヌ生活支援政策』を受けることができるという点にあります。私は税金で生活をしている彼らのことを「アイヌ屋」と呼んでいます(笑)。しかし、アイヌ屋たちだけではこれほど大きな力にはなり得なかったでしょう。すなわち『触らぬアイヌにたたりなし』で、アイヌ協会の言いなりに税金を垂れ流している行政機関と、選挙のためにアイヌ利権を利用する一部政治家、そして、協会の言い分ばかりを書き立てて、誤ったアイヌ像を広めるマスコミの存在が、彼らを増長させたのです。

 --具体的に「アイヌ差別」を強く感じる部分はどんなところですか?

 砂澤 私自身が子供の頃、人前で「アッ! イヌだ」とからかわれたエピソードなどを本書で紹介しましたが、今思えば差別というより「デブ、チビ」といった子供のいじめの理由の一つにすぎなかったのだと思います。現在では差別されることはありません。むしろ、「アイヌ差別をなくせ!」と言いながら「アイヌは差別されてきた」という歴史教育や啓発運動により、差別が『再生産』されていくことの方が問題だと思っています。

 --北海道は「左翼的思想」が強い土地柄だと言います。なぜでしょうか?

 砂澤 北海道には明治初期、戊辰戦争で敗れて領地を失った幕府軍や、官軍にありながらも冷遇を受けた者たちなどが入植しました。彼らの反骨精神は開拓の原動力となりましたが、一方で反体制的な気風も残りました。そのため、労働組合が強く、北海道における新聞購読シェアの4割を占める北海道新聞は、戦後に労働組合に乗っ取られて以来、現在に至るまで左翼的な論調です。さらに、1960〜70年代の学生運動が下火になると、活動家らが本州から追われるように北海道や沖縄に流れ込んできました。彼ら『新左翼』のうち、教員になった者は北教組に入り、国旗・国歌に反対し続け、子どもたちを政治活動に巻き込み『教育の政治的中立』を犯してきたのです。
(聞き手/程原ケン)

砂澤陣(すなざわ じん)
1963年生まれ。彫刻家砂澤ビッキの長男。幼少の頃より木と彫刻刀に親しむ。ブログ「後進民族アイヌ」でアイヌ利権とアイヌ史研究の偏向性の問題を告発し続けている。