ワイングラスを回すことに意味はある?

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■グラスを回すのはちょっと照れくさい……

くるくる回して香りを嗅いでるワイン好きの人いますよね。あれ、どうも恥ずかしい気がして……。高級ワインならともかく、普段飲みワインで回すのはおかしいですよね?(42歳女性・教師)

クルクル回しては香りを嗅ぎ、粘性をチェックして小粋なひと言。そんな“いかにもワイン通”のイメージのせいか、グラスを回せば「あの人、調子に乗ってる!」という嘲笑がどこからともなく聞こえてくるような気がしてしまう、あぁワインこじらせ……。

しかし本来グラスを回すことにはちゃんと意味があるのです。「下に沈んでいる香りを浮き上がらせるためです。高めのワインが注がれる大きなグラスのほうが回しやすいけれど、安いワインでも味は変わりますよ」とは「コンラッド東京」ヘッドソムリエの森覚さんの弁。これ、言うなれば「味噌汁」理論。味噌汁は放っておけば味噌が沈み、上澄みはだしばかりになります。ワインも同様で、放っておけば沈んでしまう香りをグラスを回すことで上へ押し上げるワケ。

しかし渋谷のワインバー「アヒルストア」主人の齊藤輝彦さんは「グラスをじっと見つめながら回すのはワインの話しかしない人みたいでアレですね」、ワインショップ「カーヴドリラックス」代表の内藤邦夫さんに至っては「グラスを回すのは業界人かワインスノッブ(笑)。職業柄クセになってるんですが、レストランのホストテイスティングでは、そう思われたくないので必死にこらえています」とまで言い切ります。われわれの「グラス回しは恥ずかしい」の根底には「なんちゃってワイン業界人気取り」があるようです。

賛否両論あるものの、結局こういうことでしょう。回したければ回す。よっぽど古いワインでもない限り、確実に味や香りは開く。もちろん回さなくてもOK。

なお、味がわからないからとテイスティングを断る人がいるそうですが森さんはこう言います。「ぜひしてください。品質確認の意味もありますが、シャンパンや白ワインの場合は特に、提供温度をチェックしていただきたいんです。別に『いちごの香りがしますね』などと感想を言う必要はありませんよ」。

ホッと胸をなでおろした次第です。

■まだまだある! グラス問題

Q1. 乾杯のとき、グラスを合わせたらいけないの?

「イタリア人は“耳にも飲ませろ”と言ったもんです。軽快なチ〜ンという音もワインの楽しみのうち。気楽な店ではアリじゃないですか?」とはワインライター葉山考太郎さん。「コンラッド東京」ヘッドソムリエの森さんは、歴史的見地から「かつて王様同士の乾杯ではこぼれるくらいにグラスを合わせ、自分のグラスに相手のグラスのワインを入れることで“毒を盛っていない”ことを証明していました」と語ります。しかし毒殺の心配もなくなった平和な現代においては「割れることがあるので合わせないのが無難です」とのことです。

A. 割れることがあるので避ける人が多いです

Q2. グラスをよく割ってしまいます

ワインのプロたちはほぼ全員一致で「飲んだ後、妙にやる気を出して洗わない。酔っているときに洗うと絶対に割るから!」。ワインがこびりつかないようグラスに水を張るだけにして、翌朝に洗いましょう。鹿取さんが薦めるのは、最近種類も増えたリーデルの脚なしワイングラス。脚を折ったり、倒したりする心配がなく、食器洗浄機にも入り、収納場所もとらない。渋谷のワインバー「アヒルストア」主人の齊藤輝彦さんは、店でも使っているinaoのテイスティング用ワイングラスを推薦。強化ガラス製で大きさも値段も手頃だとか。

A. 酔いがさめた翌朝洗いましょう

Q3. 注いでもらうときはグラスを持たないほうがいいの?

ボトルを構えられるとつい、グラスを持ち上げたくなりますが、それはニッポンのお酌の話。「正式には、持たない。注ぎにくいからです。皇室マナーでは最初に置かれた場所からグラス位置も動かしません」と「コンラッド東京」ヘッドソムリエの森さん。しかしこれはあくまでも基本。ドイツワイン・ビール輸入販売「ヘレンベルガー・ホーフ」の山野高弘さん曰く「ワインイベントやホームパーティーでも頑なにテーブルに置く人がいますが、そんなときは持ってくれたほうが断然注ぎやすい」。臨機応変が肝要です。

A. レストランではそうです。でも臨機応変に!

Q4. グラスがきれいに洗えません

レストランのグラスはなぜピカピカなの……そのコツは温度と拭くタイミング。料理家の関岡さんは「45℃の湯で流して温かいうちに拭くこと」、平野さんは「布巾は東レの“トレシー”がいいです。仕上げ磨き用ですが、グラスが濡れているときからこれ一枚で拭いています」とのこと。「料理の脂がつかないよう、他の食器より先に洗う」とは葉山さん。森、齊藤両氏は「汚れが落ちやすいよう、水を入れておくのも忘れずに」。すぐに拭かずに放っておくと、水アカがつくのでご注意を!

A. 熱い湯で洗い、すぐに拭くこと

(文・西澤千央)