「もし、憧れの歌手から楽曲制作を依頼されたら……」妄想をCDにしたシンガーソングライター

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カラオケに行くと、自分の中で“定番曲”が生まれます。いつも歌う、自分の十八番。キーとかテンポとか曲調とか、妙にしっくりくる。「まるで、自分のために作られたような曲だな」と……。

明らかに藤○○や松○○○が歌いそうな楽曲が並ぶ


作曲家という職業があります。歌手から楽曲制作を依頼され、その人のために曲を生み出す。あくまで「歌手から作曲家に曲を発注」→「作曲家が歌手のために楽曲を制作」という手順を踏むはずです。

しかし、その手順をすっ飛ばして大物ミュージシャンのために楽曲を制作している(?)人がいる模様。シンガーソングライターの町あかりさんがリリースした『あかりの恩返し』(税抜2,315円)は「もし、憧れの歌手の皆様から楽曲依頼を受けたら……」というテーマで作られた14曲が収録されているのです。

この作品の収録曲を聴いてみると、たしかにどこかの誰かを想起させる曲調が並んでました。明らかにテ○○・○○のように妖艶なアジアンテイストが溢れていたり、小○○○○みたいに曲も歌詞もアイドルっぽくはっちゃけてたり、藤○○みたいに情念が渦巻いていたり、三○○○みたいに楽しくさせる音頭だったり、松○○○がいかにも歌いそうなスイートなポップスだったり……。

非常に面白いのだけど、なぜこのようなコンセプトでアルバム1枚を作ったのか?
「もともと曲をつくるとき、私は第三者として『歌手・町あかりさんに曲を書く』みたいな感覚になっているんです。これをいろんな歌手の方にあてて作ったら、今まで書いたことのないようなテーマの曲が書けるんじゃないかなあ? と思ったのがきっかけでした」(町さん)

もちろん、この作品で歌を歌っているのは町あかりさんご本人。でも、中には明らかに“憧れの歌手”みたいな歌い方に聴こえる曲がある。6曲目の「いい子にしてたらこうなった」なんて、明らかにち○○○○○のようなスケール感を想起させるものなぁ! やはりそれぞれの楽曲で、それぞれの“憧れの歌手”の歌い方を意識して歌入れしているんでしょうか?
「意識している曲もあります。“○○さんごっこ”という感じで、ちょっぴり真似っこして遊びながらレコーディングした曲もあります。ですが、具体的な歌い方というよりむしろ、その人の気持ちになりきって、その人になって歌入れをした曲が多いです(笑)」(町さん)

「憧れの歌手の皆様」のファンの方にも聴いてもらいたい!


ところで。このアルバムに登場する「憧れの歌手の皆様」は、昭和歌謡の大物が多いです。何しろ、町さんは“影響を受けたアーティスト”に沢田研二や岩崎宏美を挙げているのだから。
では、町さんは『あかりの恩返し』を特にどんな人に聴いてもらいたいと考えているのでしょうか。“憧れの歌手”のことを好きなリスナー? それとも“憧れの歌手”をよく知らない若い方々?
「両方ですね。それぞれの歌手の方の要素を色んな形で紛れ込ませているので、その歌手を好きなファンの方には『おっ、ここの歌いまわしに聖子を入れたか!』とか『キャンディーズにこんな歌は無いけどこの歌詞は確かに合うかも』とか、宝探しみたいに楽しんでもらえると嬉しいです(笑)。それぞれの歌手を知らない若い方には、単純に町あかり作品として聴いてもらえるだけで嬉しいです」(町あかりさん)

ちなみにこのコンセプト、以下のような方々にも刺激を与えていたようです。
「自分でも曲を作るというファンの方から『好きな歌手に自作の曲を歌ってもらえたら……という妄想をたまにするけど、それを実際にやってCDにした人が本当にいてビックリした』というメールをいただきました(笑)」(町あかりさん)

いつもより無責任に曲を作れた


「憧れの歌手のために曲を書き下ろす」という妄想のもと曲を書いた今回、「他人に書いただけで私が歌うわけじゃないから」なんてテンションになれたと町さんは話します。いい意味で無責任になれ、いつもより自由に曲を作れたらしい。
「でも、結局は私が歌っているので、歌入れの時に苦労させられた曲もあります(笑)。また、今回はスター歌手の皆様からパワーをいただけたような感覚がありました。この妄想によって、スッとテーマが浮かんだり。そういう点では、自分のために作るのとは違う楽しさがありました」(町あかりさん)

今回のような妄想をもとにした曲作りを、町さんは今後も続けていくと言います。
「『○○さんのイメージで書きました』と明言はしないかもしれませんが、今後も勝手に色んな方のイメージを使って曲を書くことはあると思います。お題が与えられると、がんばって面白い答えを出そうとする大喜利的な精神が自分にあるみたいで(笑)。今回、自分でも思いもよらないテーマの曲ができましたし、作っていてとても楽しかったです」(町あかりさん)

実はこのアルバムに収録されている曲「嫌われたくない」は、現在『開運! なんでも鑑定団』(テレビ東京系)のテーマソングになっているそう。聴けばわかると思うのですが、いかにもテ○○・○○が歌いそうな曲調になってます。
(寺西ジャジューカ)