仕事でインタビュー取材をし、後からその時の録音を聞き返すのですが、いつもガッカリしてます。何にって、自分の声に。イケてない声をしているよなぁ……と。

ただ、私の声は私だけのもの。世界に2つとありません。誇りを持ちたいし、これからも大事に使っていきたいです。

自分の“声”とメッセージで指輪をデザインする


今まで慣れ親しんできた声ですが、新たな活かし方が増えた模様。今年の4月より発売されている『Encode Ring(エンコードリング)』(税込12,960〜129,600円)は、“声でつくる指輪”です。



「声でつくる」とは、どういうことなのか? 例えば大切な人に対し、普段は言えないけれど実は知ってほしい想いってありますよね。直接伝えにくいメッセージを、『Encode Ring』の商品サイト に行き3秒以内に録音して吹き込みます。すると、その音声の波形が3Dプリンターを利してそのまま指輪のデザインになるのだそう。


相手に伝えたいメッセージを録音し、指輪に託すという考え方です。

何とも斬新な指輪の製作方法ですが、このような指輪を思い付いた経緯を知りたい。「EncodeRing株式会社」代表取締役の角村嘉信さんに、話を伺いました。
「当時、交際していた彼女にホワイトデーにお返しをしなきゃ……と特別なギフトを探していたんですが、いい物を見つけることができなかったんです。自分が伝えたい想いと他の人が伝えたい想いは違うのに、市販されている商品には元から同じ刻印(メッセージ)が使われていますからね」(角村さん)

もう一つ、伏線がある。角村さんは以前より音楽に興味があり、同時に“人の心”にも興味があったそう。「自分にしか無いもので何かができたらいい」というビジネス上の目的と自身の興味が結びつき、「声紋」へと辿り着いたのです。

終活にも使われている


ところで、購入者はどんなメッセージを吹き込んでいることが多いのでしょう?
「やはり多いのはプロポーズの言葉で、『愛してるよ』『必ず幸せにします』といったメッセージです。あとは『いつもありがとう』『ずっと一緒だよ』など、パートナーへ贈る言葉が多いですね」(角村さん)

他に目につくのは「終活」としての活用法。
「現在、亡くなった方の遺骨からリングを作るという試みがあるそうなんですが、そのような指輪を着けることに抵抗を感じる方もいるようです。その代わりではないですが、残された方へボイスメッセージを残し、その言葉をEncode Ringにする高齢者もいらっしゃいます」(角村さん)

また自作曲をニコ動のボカロで発表するクリエイターがその楽曲を録音してリングにしたり、好きな声優さんのセリフを吹き込んで指輪にして身に着けたり、思い思いの活用法が発明されているとのことです。

同じメッセージでも、人、体調、感情によって違う形になる


Encode Ringで最も重視されるべきは、「自分だけの声でつくる」という特徴でしょう。例えば、Aさんが発する「愛してるよ」とBさんが口にした「愛してるよ」では、出来上がりは全く違うデザインになるそうです。
「不思議なもので同じ人が同じメッセージを吹き込んだとしても、寝起きの状態であったり相手への気持ちが上下していると、デザインも変わってしまいます」(角村さん)
逆に言えば、同じ人が同じ体調と同じ気持ちで吹き込むと、ほぼ同じデザインの指輪が完成します。まさに、相手への想いそのものが形となって指輪に表れるわけです。
「刻印した“I love you”は誰が贈っても全く同じにメッセージですが、本当のところAさんとBさんとCさんの“I love you”はそれぞれ違います。でもEncode Ringにして贈れば、唯一無二のメッセージになるのです」(角村さん)

そんなEncode Ringの購入者ですが、言うまでもなく9割が男性です。パートナーへのメッセージとして贈る使用法が主なので、このデータ結果は必然でしょうか。
「当社としても、25〜35歳の男性をメインターゲットに想定しています」(角村さん)

もちろん、Encode Ringに対する反響は上々。このオリジナルなアイデアに驚きの声を上げる男女が多く「大切な人の声を身に着けられるなんて」と、好意的な反響が見受けられるようです。


パートナーへ感謝のメッセージを伝えたいけど口に出せない、シャイな日本人にぴったりの指輪だと言えるかもしれません。
(寺西ジャジューカ)