インドカレー屋で流れる謎BGMだけ収めたCDで、カレーがメチャメチャおいしくなった

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人間には「五感」があります。中でも、秋は「味覚」に注目したい。食欲の秋においしいものをたべたら至福。
しかし、同時に他の感覚も満たされたならば最強だと思いませんか?

どこのインドカレー屋でも似たような曲がかかってる


9月21日にリリースされた、あるCDアルバムが好事家の中で話題になっています。タイトルは『インドカレー屋のBGM デラックス』(税抜1,852円)。


このCDに触れる前に、10年前のある作品に触れないわけにはいけません。『インドカレー屋のBGM デラックス』を制作したビクターエンタテインメントの川口法博さんに話を伺いました。
「私はインドカレーが大好きなんですが、どこのインドカレー屋に行っても似たような音楽が流れているんですね。気になって気になって仕方なかったので調べてみると、『ボリウッドミュージック』だということを突き止めました」(川口さん)

ボリウッドミュージックとは、インドの映画音楽を指すそう。インドの娯楽は映画中心なので、いわば“インドのJ-POP”と呼べるかもしれません。
「でも、ああいう音楽を入手しようとしてもなかなか難しかったんです。タワレコなどワールドミュージックを置いてある店舗でしか購入できなかったし、それ以前にボリウッドミュージックに行き当たらない人がほとんどだと思います」(川口さん)

結果、2005年に発売されたのはボリウッドミュージックを網羅した一枚『インドカレー屋のBGM』(税抜2,190円)でした。「自分と同じようにあの音楽が気になってる人がいるんじゃないか?」、そんな川口さんの思いが込められた一作です。


「『ボリウッドミュージック全集』ではなく『インドカレー屋のBGM』というタイトルにしたのは、あの音楽が気になっている方々に届いてほしいという思いからです」(川口さん)
結果、発売から10年をかけジワジワと売上を伸ばし、現在までの販売数は約2万枚に到達したとのこと。

しかもこの作品、大槻ケンヂ氏と宮沢章夫氏が「人は何故インドカレーが好きなのか?」を語り合った特別ロング対談も付属されています。
「大槻さんは筋肉少女帯で『日本印度化計画』という曲を発表しています。また、このアルバムのジャケットを担当したデザイナーから『大槻さんの対談相手は宮沢章夫さんしかいない』と助言を受け、2人の顔合わせが実現しました」(川口さん)
対談場所は、銀座の名店「ナイルレストラン」。BGMに一切触れず、“変なカレー屋”を語り合う形で2人の邂逅は進んでいったようですが、その辺りのアバウトさもインドです。

この10年、インドカレー屋のBGMは欧米風になった


その後、この作品はシリーズ化。インド歌謡を歌い上げる女性ヴォーカルばかり集めた「WOMAN」だったり、意識してディープな音源を収録した「激辛編」、そしてシタールとタブラによるインスト曲ばかりを収めた「ライス抜き」など5枚が発表されています。

そして2016年、ついに『インドカレー屋のBGM デラックス』が完成! ここで、一つの質問を投げかけました。この10年間、インドカレー屋のBGMに傾向の変化は起こらなかったのでしょうか? だって、J-POPだって10年前と今を聴き比べると隔世の感があるもの。
「この10年の間で、欧米風になった気がします。ハウス調だったり、サビが英語だったり。もちろん、そういう曲は今回は外しています。インド独特の音階なのに、サビで唐突に“I love you”とか出てくると、いきなり現実に戻された気になってしまうんですね。それは、興ざめなので」(川口さん)

このCDをかけながらカレーを食べると何倍もおいしくなる


ところでこのCDは、どういうシチュエーションで聴いてほしいと考えていますか?
「音楽自体のクオリティが高いので、好きなように聴いてほしいですね。ただ、ご自宅でインドカレーを食べる際に流すと、カレーが何倍もおいしくなります」(川口さん)

それは、試してみたい! というわけで、近所でインドカレー(レトルト)を買い、作って、食べて、同時にこのCDを流してみたいと思います!

再生すると、明らかに我が家のステレオからは流れたことのない曲調がスピーカーから放出されました。そして、眼前にはカレーが。

完全に「これを食べるしかないだろう」というテンションへと、私は変貌していきます。

いざ食べ始めると、なんということでしょう。“場”と“食”のこんなベストマッチ空間、記者は体験したことがないかもしれない。耳から通じる音が脳を経由して、舌に伝わります(逆でも可)。満足度、うなぎのぼり!
そういう意味で、カレーは「インドカレー」以外不可でしょう。


きっと、おそば屋さんが作るカレーとかはそぐわないはず。気をつけていただきたいポイントです。

インド人女性が「やらせた方がいい」と、謎の日本語を


また、今回の『インドカレー屋のBGM デラックス』からは、新たな試みがスタートしています。特製「空耳日本語歌詞カード」が全曲分収録されました。

「収録曲は200以上の候補曲から絞って選定したのですが、その中にはどう聴いても日本語だとしか思えない曲が多かったんです。だから“空耳にしちゃえ!”と(笑)」(川口さん)
その一部は、以下はYouTube動画として公開されているよう。
ヘロヘロした軽快なミュージックに合わせ、明らかに「我々どうだろう?」とインド人が連呼していたり、女性ヴォーカルが艶やかな声で「やらせた方がいい ちょっといい事」「サブの整形はどう?」と歌い上げたり、なんでしょうかこれは。

さあ、そろそろまとめます。川口さんに聞いてみたい。インドカレー屋のBGMの魅力って、なんですか?
「独特の音階や節回し、女性ヴォーカルがヘロヘロだったり、たくさんありますね。一番は、決して日本人だと思いつかない展開です。私はインドカレー屋でカレーを食べながら“家でも聴きたい!”と思いました」(川口さん)

家で聴きたい! カレーを食べながら聴くと、なお良し!! 「味覚」を入り口に、「聴覚」を満足させる素敵な音楽と出会うことができました。
(寺西ジャジューカ)