JR三ノ宮駅から10分足らず。賑やかな飲食店街から少し離れた通りに表れる、「うんちいっぱい」と書かれた看板。お好み焼きのお店のようだが、その言葉にはどのような意図があるのだろうか。スタッフが初来店の私を「おかえりなさい」と迎えてくれた「創作料理 一隅」で、「うんち」への熱い想いについて尋ねてみた。

なぜ「うんち」なのか


「創作料理 一隅」の代表、中村淳子さん(以下、中村さん)は「うんちをちゃんとすること」が健康の原点だという。医学書で調べた結果、ガンなど深刻な病気の予防には、老廃物の排出、つまり「うんちを出す」が有効だと考えるようになったそうだ。


「うんちを出すには2種類の繊維が必要です。水溶性食物繊維が含まれた野菜を食べて血液をきれいにすることも大事。でも、それだけでは老廃物を出すことはできない。だから、水にとけない繊維、例えばニラ、きのこ類も取らなければいけません。一隅ではそれらの不溶性の食物繊維をとって、うんと踏ん張って出すバナナうんちを基本としてメニューを考案しています」。


中村さんの言葉の通り、一隅のお好み焼きにはたくさんの野菜が使われている。
「キャベツはお好み焼き一枚にだいたい半玉入っています。長芋は毎日、手ですっています(中村さん)」
また、ニンジンやこんにゃく、オクラなど一般的なお好み焼きには入っていないさまざまな野菜も盛り込まれている。種類・量ともにふんだんに野菜が使われ、まさしく「うんちを出す」ことに力を注いでいるのが伝わってくるお好み焼きとなっている。



素材へのこだわり


たくさんの野菜で食べごたえのある一隅のお好み焼き。しかし、油っぽさや塩辛さとは無縁で、野菜など食材本来の旨みを活かした味わいとなっている。食材や調理方法にも並々ならぬこだわりがあるのがうかがえる。関西ほど粉物の食文化がないという北海道、札幌市出身の中村さんは、お好み焼きを作るための材料などを大阪で調べているうちに、既製品ではなく厳選した国産の素材を使いたいと考えるようになったそうだ。


「既製品は使わないようにしました。油はオリーブ油、食べるゴマ油。ソースも手作りで、野菜も全部すって、みりんも入れないでね、野菜の甘みだけで、りんごも入りますので、ところが野菜をすって時間が経つと色が濁り、美味しくなさそうに見えてくるんです。そこでプルーンを入れることにしました。色も悪く見えないし、栄養もありますので(中村さん)」

お好み焼きの生地などに入れるダシも、市販のものは使用しない。羅臼昆布、長崎のうるめいわし、大分のドンコなどが原料の化学調味料無添加のものを、中村さんが考案し、九州の食品会社、井口食品(株)の協力を得て作っているそうだ。塩は夫婦で小規模生産している物を使用。調味料に対しても徹底したこだわりを見せている。


しかし、それらの無添加・手作りの素材で作った食べ物は保存が利かない。
「余ってしまったら、私たちで食べます。お店を出してばっかりの時は毎日食べていました。ありがたいことに最近本物志向の方が増えてきたので、そういうことはほとんどなくなりました」

また食材を厳選するだけではなく、今まで使用していた食材の変更も躊躇なく行っている。
お好み焼きを作り始めた当初は、小麦粉を使用していた一隅。しかし、ある時、中村さんは小麦粉を使った料理に含まれるグルテンが脳や腸に悪影響を及ぼすと本で読んだ直後、店では小麦粉を使わないことを決断。店内の小麦を処分した。ただし、うどん入りのメニューのみ、小麦粉を使用している。米粉のうどんを使うことも検討してみたのだが、お客さんに満足してもらえそうな味にはならなかったそうだ。



「うんち」そして「笑い」


病気の予防には、食物繊維をとり「うんちを出す」ことのほかに、もうひとつ大事なことがあるという。中村さんによると、それは「笑うこと」だそうだ。一隅スタッフの「おかえりなさい」で始まるお客さんとの和やかなやりとりも、健康維持の一環であるという。


そして、中村さんが手掛けたメニューの独創的なネーミングも、お客さんとの会話のきっかけになっている。「普通のネーミングではお客さんが許さなくなってきたんですよ」


ガンの原因となる細胞は私たちの身体の中で毎日作られていて、食事をどれだけ気をつけてもガンの原因となる添加物を摂取してしまうそう。ならば徹底して老廃物とともにガンを追い出し、体を守ろう。そんな強い意気込みに溢れる中村さんと一隅スタッフであった。
(谷町邦子)

【創作料理 一隅】
兵庫県神戸市中央区二宮町4-21-3 サンシャイン三宮二番館102号
電話:078-241-8511