【連載:映画で分かる女の本音】〜その人が苦手な理由を考えるといい女になれる!?〜 映画『嫌な女』
この人とは気が合いそう、友だちになりたいなぁ。でもこの人はちょっと苦手かも……。
誰にでも好きな人、嫌いな人はいて、それはごく当たり前のことですが、『嫌な女』という何とも強烈なタイトルの映画を観てふと思ったのは、好き嫌いがあるのは仕方ないことだとしても、なぜ嫌いなのか、なぜ苦手なのか、その理由について深く考えたことはあまりなかったかもしれない、ということでした。
「嫌」という感情の背景にはいろいろな要因があります。心理学上でのひとつの考え方としては、本当は自分が欲しているのに手に入らない、だからそれを持っている人に対して「嫌」という感情を抱いてしまうことがあるそうです。
簡単に言ってしまえば、嫉妬。自分の持ち合わせていないものを持っている人を羨ましいと思う感情がマイナスに働いてしまう、ということですよね。
プラスに受け止められたら「私も彼女のようになりたいからこうしてみよう、ああしてみよう! 」となりますが、マイナスだと「なんであの人ばっかり」「なんで、なんで、なんで……」となってしまう。
と考えると、好きと嫌いの境目って、とても曖昧です。また、こんなふうにはなりたくないと自分が否定していること、悪いと思っていること、それをやってしまっている人に対する「嫌」という感情もある。今回の映画は前者、嫉妬のパターンが強い気がします。
この映画の主人公は弁護士の徹子(吉田羊)と詐欺師の夏子(木村佳乃)。
同い年の従妹ですが、徹子は幼い頃のある出来事がきっかけで夏子のことが苦手になってしまう。
そして大人になったある日、徹子のもとに夏子がやってきて、気づくと彼女の弁護をしてしまっている。
夏子のことは苦手だけれど、それ以上に自由奔放な夏子に振りまわされている自分が嫌で仕方ない、という感じです。
夏子は結婚詐欺師なので、徹子からも観客からも“嫌な女”=“悪い女”に映ります。
しかし、彼女に騙された男たちの話を聞いていくと、みんな夏子のことが大好きであることが分かってくる。
騙されたと知った後も「好き」なんです。じゃあ、どうして男たちは夏子を訴えるの? という理由を徹子と一緒に追いかけていくのがこの映画の面白さでもあって。
そこに徹子が夏子のことを苦手だと思う理由も隠されています。
超真面目な弁護士だけど人づきあいが下手な徹子、詐欺師でトラブルメーカーだけど憎めない夏子。
性格も生き方も異なる2人の女を通して見えてくるのは、できれば見たくない女の本音の数々。
でも、その本音を知ることで、嫌な女とは何なのかを知ることで、いい女になれる──かもしれません。
『嫌な女」』
(C)2016『嫌な女』製作委員会
6月25日(土) 全国ロードショー