ボビー・オロゴン●1973年、ナイジェリア生まれ。20年前、貿易商である父の手伝いで初来日。タレント転身はバラエティ番組の街頭インタビューがきっかけ。番組出演のほか、格闘技や映画監督などマルチに活躍。

写真拡大

■子どもの頃から世界経済を見ていた

移動時はもちろん、ロケや収録の合間にも、iPadの画面を覗いてはニヤニヤしたり、ボヤいたり。そこに表示されているのは、刻々と変わる世界の株・為替・商品先物の価格状況だ。

「投資は昔からやってるヨ。最初に相場の世界を教えてくれたのは、ナイジェリアで貿易商をやっているお父さん。ボクは子どもの頃から見込まれて、オフィスに連れていかれては『これはドコソコの国からいくらで買ってきたモノで、これからいくらで売るから、利益はいくらになる』ということを教えてもらっていました」

同じモノでも、その時々で買付価格は違っている。決済に使う通貨は米ドル、英ポンド、日本円。商品を安く買えても、通貨の調達価格が高ければ、そのぶん儲けは目減りする。

「こっちの国の景気がよくなるとあっちのモノが安くなって、あっちの国で紛争があるとこっちの通貨が高くなる。じゃあ、これからはこうなるんじゃないか、今度はあっちがああなるんじゃないか――、そういうのをパズルみたいに考えるのがチョー楽しかった!」

成長したボビー少年はナイジェリアの国立大学の経済学部を卒業、父親の貿易会社を手伝うことになった。しかし「これまでさんざん教えてやったんだから、恩返しするのは当然だ」と、給料はほとんどもらえなかったという。

「お父さんはチョー怖いから、口答えは絶対に許されない。本当は跡を継がせたかったのかもしれないけど、ボクは早く独立して自分のビジネスを始めたかった。でも、お金がぜんぜんないのにどうやって起業する. 投資しかないじゃん! それで少しずつ外貨預金したり、身近な株を買うようになった」

日本人は慎重で「ある程度の余裕資金ができてから始めよう」と思うからか、なかなか投資に踏み切れない。2014年10〜12月期の家計における金融資産の構成は「現金・預金」が52.5%、「保険・年金準備金」が26.4%であるのに対し、「株式・出資金」と「投資信託」は合わせて15%ほどだ(日本銀行調べ)。

「ボクは投資っていうのは収入が少ないときには少ないなりに、多くなったら多いなりにやるものだと思ってる。そうやって常に自分のお金を相場に置いておくことで、経済のことを本気で勉強するし、知識や経験も増えていく。大きな資金ができてからいきなり投資をスタートすると、失敗したときのダメージも大きくなるでしょ!?」

■マネーは世界を巡り投資はパズルに似る

子どもの頃から父の英才教育で生きた経済を学び、大学で経済学を修め、社会人になってからずっと株や為替に投資を続けているというボビー氏が長年培った「相場観」は独特だ。

「ボクは世界を4つのブロック(米国・欧州・日本・新興国)に分けて、投資マネーがこれからどこに向かおうとしているのかっていうのを見てるんデス。投資マネーはいつも世界のどこかにあって、より強いところに向かおうと行き先を探してる。それを追いかけるんじゃなく、先回りして仕込むのが、投資の醍醐味じゃないかなァ」

例えば昨年夏までは欧州がギリシャ問題で混乱する一方、米国経済は強かったので、投資マネーは欧州から米国へ流れた。ところが秋に入ると米国は量的緩和の終了が示唆され、かたや日本では消費増税の先送りが決まった。すると投資マネーが米国から日本へ向かい、そのまま日本株買いの流れになった。

「そうやって投資マネーは世界をぐるぐる回ってる。価格が上がりすぎたモノは売られるし、下がりすぎたモノは買われる。余っているモノは安くなるし、足りないモノは高くなる。マーケットにはいつもどこかに歪みがあって、そこにエネルギーが溜まっていく。それが一気に爆発すると……Boom! 大きなチャンスになるんデスヨ!」

----------

政治経済のニュースをチェック。米国・欧州・日本・新興国で経済が強いのはどこか、どの商品(株・通貨)が買われるかを予測する。新興国は豪州、中国、アフリカで資源価格とも関係する。どこにも向かえないときはGOLDが買われる。

----------

■アベノミクス御殿は牛5000頭分!?

人生最大のチャンスが到来したのが、2012年末からの「アベノミクス相場」だった。この時のエネルギーはスゴかった。何しろ「失われた20年」で溜まりに溜まったマグマが、政権交代と政策転換で一気に噴出したのだ。

この時とばかりに米国・欧州・新興国に分散させていた資金を「日経平均先物」に集中したボビー氏は、その利益で敷地面積200坪超の大豪邸を手に入れた!

「金額はナマナマしくなるから“牛5000頭分”ということでオネガイシマス。でも、言っとくけどあれは“ラッキーパンチ”じゃない。ずっとマーケットの中にいたからこそ、とれた相場。コツコツやってれば、必ずいいことがあるってことデス」

今後も投資は続けていくし、機会があればその魅力やオモシロさを伝えていきたいというが、気になることも。投資について言うと「日本はこれから人口が減るから」「経済は中国に抜かれるんでしょ」「国債発行残高が多すぎて財政破たんする」などネガティブな話題ばかりを気にする人が少なくないことだ。

「確かにそれは楽観できない事実だけれど、もっとイイところも見るべきじゃねーか!? こんなに技術力が高くて、どこへ行っても安全で、食いもんがウマくて、住みやすい国はないでしょ!? 世界のほかの国と比べてみろって。まだまだこれから、日本の未来は明るいデス!」

(渡辺一朗=文・構成 山本祐之、加藤昌人、工藤睦子、和田佳久=撮影)