70分、韓国チ・ソヨンのPKを止めるスーパープレーが飛び出し、84分に岩渕のゴールで先制。勝利への道筋は見えたかに思えたが……。 (C)Getty Images

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 0-0のまま迎えた70分、「滑ったところにボールがあった」(近賀ゆかり)不運なハンドで韓国にPKを献上し、日本は絶体絶命のピンチに立たされた。しかし、「絶対に止めてやる」と集中力のギアを上げたGK福元美穂がシュートコースを完全に読み切り、ドンピシャの横っ飛びでストップ。鳥肌ものの“神セーブ”に会場のボルテージが上がるとともに流れを掴んだ日本は、岩渕真奈のゴールで勝利に手を懸けたはずだった。
 
 ところが、先制点からわずか3分後に悪夢が起こる。87分、攻撃の圧力を高める韓国が右サイドからゴール前へクロス。福元はすかさず飛び出してキャッチに行ったが、DF熊谷紗希と交錯してボールを掴み損ね、こぼれ球を韓国のFWチョン・ソルビンにねじ込まれてしまった。
 
「飛び出した判断は間違っていなかったかなと。ただ、(最終ラインと)上手くコミュニケーションが取れていなかったというか。熊谷選手も良いポジションを取っていたので、自分が出ずに任せても良かったし、出たのならあそこで落としてはいけない。パンチングで逃げても良かったかなと思います」
 
 それまでPK以外に決定的なチャンスを与えていなかっただけに、なんとも悔やまれる失点。「誰がどうこうではなく、DF全体の責任」(有吉佐織)、「安定した環境でプレーさせてあげられなかった。選手よりも僕の反省」(佐々木監督)と周囲は守護神をかばったが、福元は試合後も自戒の言葉を続けた。
 
「ボールがないところでしっかりリスク管理をできていたし、DFと協力しながら上手く守れていたと思います。ただ、最後にああいう形で失点してしまって……。PKを止められたことは良かったですけど、勝利だけを目指していたので、失点も、勝てなかったことも悔しい」
 
 まさに「明」と「暗」を味わったとはいえ、最後方から「ボールをよく見て!」「(ラインを)上げろ! 上げろ!」と絶え間なく声を張り上げ、チームに安定感をもたらしていた事実は変わらない。韓国戦で引き分けに終わったことで、自力での五輪出場権獲得(2位以内)は消滅したものの、残り全勝すればまだ可能性は残されている。奇跡の3連勝には、五輪2回、ワールドカップ2回を経験してきた福元の力がきっと必要になるはずだ。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)