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関西医科大学、国立循環器病研究センター、京都大学、大阪工業大学、科学技術振興機構、日本医療研究開発機構は12月11日、再建する皮膚がなく治療が困難であった先天性巨大色素性母斑に対する世界初の新規皮膚再生治療を開始すると発表した。

同治療法による臨床研究は、関西医科大学 形成外科学講座 森本尚樹 講師、国立循環器病研究センター 山岡哲二 部長らの研究グループによるもの。

「色素性母斑」は、小さいものはほくろと呼ばれる茶色〜黒色のあざで、真皮の中に母斑細胞といわれる細胞が存在し、母斑細胞がメラニン色素を産生するために生じる。先天性巨大色素母斑は、産まれたときから存在し、成人で直径20cm以上になる色素性母斑のことを指し、放置すると悪性黒色腫が数%程度発生する。

巨大母斑の治療は、2、3回に分けて切除する分割切除術や、組織拡張器を皮下に埋入し、数カ月かけて皮膚を拡張させた皮膚を用いて再建を行う方法、患者の皮膚を採取し移植する植皮手術が行われるが、手術の身体的負担があったり、母斑切除部の長い傷跡や皮膚採取部位の傷跡ができたりするといった問題がある。

同研究では、母斑組織を2000気圧で10分間処理することで、皮膚の主要成分であるコラーゲンなどを損傷することなく自然のまま残し、母斑細胞などの細胞を完全に死滅させることに成功。腫瘍細胞のない真皮として患者に再移植することが可能となった。また、表皮は自家培養表皮を用いるため、患者自身の細胞と組織だけで皮膚を再建することができる。

同治療法は、母斑が大きくて手術をしていない患者や、何度も手術したが母斑が残存している患者でも比較的小さな侵襲で実施できるもので、今後は臨床研究への参加を希望する患者を募集する予定だという。

有効性が確認されれば、これまで大きな自家皮膚の犠牲を伴う治療しかなかった先天性巨大色素性母斑の治療が可能になるとともに、将来的には高圧による死滅処理方法が、皮膚悪性腫瘍やそのほかの組織の悪性腫瘍にも応用可能な組織再生方法となることが期待される。