「RIZIN」公式HPより

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 エメリヤーエンコ・ヒョードル、桜庭和志、高田延彦、そしてPRIDE……やけに懐かしい名前が飛び交っている。噂されていた総合格闘技イベント<RIZIN FIGHTING WORLD GRAND-PRIX2015>の開催が発表され(注1)、伝説のPRIDEの復活だ! と、ある種の人たち(注2)が色めき立っている。

 PRIDEの始まりは1997年。伝説の柔術家一族のヒクソン・グレイシーとプロレスラー高田延彦を闘わせる舞台として、だった。以後ヴァンダレイ・シウバやミルコ・クロコップ、吉田秀彦ら人気選手を擁して人気を博し、立ち技のK-1や米国のUFC(注3)と並んで、世界的格闘技イベントへ成長していった。そして2003年大晦日には、民放三局がほぼ同時に格闘技大会を中継。「NHK紅白歌合戦」を向こうに回して、格闘技ブームは頂点に達した。

 2006年、そんなPRIDEに突然、悪夢が訪れた。フジテレビがDSE(PRIDE運営会社)との契約を解除。中継番組の放送を取り止めにすると発表したのだ。原因は様々に取沙汰されたが、一部週刊誌ではDSEと裏社会の結びつきが指摘されていた。翌年、PRIDEは海外の興行会社に身売りされ、榊原信行DSE代表は7年間の競業禁止を言い渡された。つまり、

「(身売りから)7年は格闘技ビジネスに関わるなよ!」

 とクギを刺された。今回のRIZINも中心に居るのは榊原代表。要するに<7年間の禁>が解けたことで、同代表が動き出したわけだ。

懐メロにすがる? フジテレビ

「(PRIDEの反省を生かして)コンプライアンス室を作って、警察庁や検察庁OBの方にも入って頂きます」

 今回こそはクリーンに「格闘技復興」に全力を尽くすと、榊原代表は言う。現在、発表されているのはヒョードルの復帰参戦と、桜庭和志vs青木信也などだが……。

「現在の総合格闘技は、米国のUFCが世界最高峰の舞台として独走中。PRIDE末期から負けが続いていた桜庭、半引退状態だったヒョ-ドルなど、今のところRIZINは昔の名前に頼った編成です」(スポーツ紙バトル担当記者)

 とはいえフジテレビによる中継が決まっているのだから、スタートとしては恵まれている。「9年前、あれだけ無慈悲にPRIDEを切り捨てたくせに」と思ってしまうが、当時のKプロデューサーの復権などもあり、「格闘技中継大人気の夢よ、再び」となった模様だ。

 フジテレビは、なかなか浮上のきっかけを掴めない。今夏も連続ドラマ『HEAT』が打ち切られ、昼の情報番組『直撃LIVE!グッデイ』は記録的な低視聴率を残した。こういう苦境に、良かった頃をなぞるクセがフジテレビにはある。

『料理の鉄人』(1993)→『アイアンシェフ』(2012)
『ショムニ』(1998)→『ショムニ2013』(2013)
『抱きしめたい』(1989)→『抱きしめたいForever』(2013)
……などなど。

 今回の『PRIDE』(2000年)→『RIZIN』(2015)を含め、「過去の人気番組の焼き直し」を堂々とやってくるのだ。

『抱きしめたいforever』では、ダブル浅野(温子とゆう子)の若作りに「痛々しい」などと失礼な評も出た。桜庭とヒョードルには、今でも若い……いや強いところを見せてもらいたい。

(注1)RIZIN開催…12月29日、31日。さいたまスーパーアリーナにて。
(注2)ある種の人たち…格闘技全盛時にいい思いをし、プロレスをバカにしまくったような人たち。
(注3)UFC…THE ULTIMATE FIGHTING CHAMPIONSHIP

著者プロフィール

コンテンツプロデューサー

田中ねぃ

東京都出身。早大卒後、新潮社入社。『週刊新潮』『FOCUS』を経て、現在『コミック&プロデュース事業部』部長。本業以外にプロレス、アニメ、アイドル、特撮、TV、映画などサブカルチャーに造詣が深い。Daily News Onlineではニュースとカルチャーを絡めたコラムを連載中。愛称は田中‟ダスティ”ねぃ