パネリストとして参加した(左から)ミシェル・フリードマンさん、ウーヴェ・シュメルター東京ドイツ文化センター所長、ダニー・ヴェレテ監督。(撮影:佐谷恭)

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"ドイツのユダヤ人"をテーマにしたシンポジウム「今日のドイツにおけるユダヤ系住民の生活」が28−29日、東京都港区の東京ドイツ文化センターで開かれた。ドイツとイスラエルの映画監督による映画がそれぞれ上映され、ホロコースト(ナチスドイツによるユダヤ人大量虐殺)と戦後の和解などについて、パネルディスカッションで活発な議論が行われた。

 両国の国交成立から41年、ホロコーストが起こった第2次世界大戦から60年以上が過ぎ、お互いに疑念や警戒心を持ちながらも、オープンな対話ができる時代にようやくなってきたとして、東京ドイツ文化センター、イスラエル大使館が共同で開催した。

 ナチスドイツの独裁者ヒトラーの時代以降初めての本格的なユダヤ映画として歴史的な意義を持つという『何でもツッカー』(ドイツ、ダニー・レヴィー監督)と、イスラエルの戦後世代のドイツ訪問をテーマに、トラウマと和解を描いた『メタリック・ブルース』(イスラエルなど、ダニー・ヴェレテ監督)の上映をもとに、両国の"現在"の姿が紹介された。

 パネルディスカッションで、ヴェレテ監督は「ドイツ人は生まれながら罪悪感を持ち、ユダヤ人は過去の疑念が消せず、60年経った今、両国民ともが被害者になっている。歴史は忘れてはならないが、苦しみ続けることを止めなければ」と述べた。映画制作の初日に、イスラエル側とドイツ側が疑いの目で見つめあっていたときに、急に雨が降り出し、一緒に片付ける過程ではりつめた空気が氷解したというエピソードも紹介した。

 元ドイツ・ユダヤ人中央評議会委員長代理で、テレビ番組司会者と弁護士などとして活躍するミシェル・フリードマンさんは「ホロコーストはナチスだけに責任があるのではなく、他国や時代背景により起こったものであり、戦後のドイツが人権を尊重する国であると両国が認めることで、関係は改善に向かった。人間は調和を求めており、問題を見据えることができれば調和を得ることもできる」と力説した。また、歴史教育について、「罪悪感を教えるのではなく、世界的に今でも繰り返されている差別や虐殺を止める材料としてあるべき」と話した。【了】