「人道支援」という言葉をよく耳にするようになった。大ざっぱに言うと、「人道支援」は、紛争や自然災害で苦しむ人々に人道的配慮から食糧や医療を提供して助けること。“国家”がその国境と国民を守るという伝統的な「国家の安全保障」とは違い、最近は被害者である“人”に焦点をあて、それぞれが必要とする支援を与えようという動きがある。本シリーズでは、NGOなどの市民団体が活動の中心を担う「人道支援」にスポットを当て、その意味について考える。

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支援国としての日本

 2004年12月にインドネシア・スマトラ沖で起きた地震と津波の被災者の救援や、自衛隊のイラク派遣の際にも、「人道支援」という言葉が聞かれた。最近では、イスラエル軍の攻撃を受けているレバノン南部の人々への「人道支援」の必要性が声高に叫ばれており、外務省は8日、「人道支援に対する緊急無償資金協力」として200万米ドルを拠出したと発表した。

 戦後復興のために多額の借金を背負った日本は、90年に世界銀行に借款を完済し、純支援国となった。91年の湾岸戦争では、総計100億ドル以上の資金提供を行いながら人的貢献をせず、被支援国の“感謝リスト”から名前が漏れたことは記憶に新しい。その後、政府は「顔が見える」支援を目指して国際貢献に取り組み、海外で積極的に活動する市民団体も増えてきた。今や、日本は支援国として国際社会から認識されている。

支援の主体は“人”へ

 90年代のバブル崩壊とその後の長期不況や企業のリストラなどにより、一部の人たちが社会的価値観を変えた側面がある。「ボランティア活動」や「他人のため」に身を粉にするようになり、市民団体などの立場から積極的に世界の「人道支援」に動き始めた人びとがいる。

 70年代以降に日本に来たベトナム難民の支援から活動を開始した、人道支援NGOの草分けである「難民を助ける会」の堀江良彰事務局長は、人道支援に対する世論の高まりを実感として話した。「設立当時は同じような団体がほとんどなく、活動に対して批判的な人も多くいた。最近は、問い合わせも多いがライバルも多い」。

 “国が国民を支援する”時代から、“人が人を支援する”時代に移ったとも言えよう。「人道支援」はとはなにか。従事する人は何を求め、活動から何を得ているのか。“遠く”にいる人を「人道支援」することは、日本にいる我々にどういう意味があるか、考えてみたい。(つづく)

■特集:人道支援から平和を考える
(3)見えない効果を見せる(8/18)
(2)想像力を巡らせる(8/17)

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難民を助ける会