「東京大学合格高校ランキング」私立大と一部の国公立大は大学公表のデータ。合格者数を公表していない国公立大については高校発表のデータを使用、大学通信とサンデー毎日の共同調査。(協力/大学通信)

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■関東ローカル化が加速する東大の現実

今年の入試では、昨年のセンター試験平均点がダウンの反動で、今年はアップするとの受験生の期待は大きかった。しかし、ふたを開けてみると、5教科7科目の平均点は理系は15点前後上がったが、文系は数点しか上がらず、受験生にとって期待外れの結果となった。この影響と来年から数学と物理で新課程入試が始まる不安感から、今年の受験生は全体に弱気になり、安全志向の志望校選びとなった。

近年の入試のトレンドは現役志向、安全志向、地元志向だ。不況の影響もあって経済的な負担がない現役での進学を親は望み、受験生も無謀なチャレンジはせず、合格可能性の高い大学ばかりを受ける傾向が強い。さらに、少子化から親が子どもを手元においておきたい気持ちが強く、地元大学への進学を勧めていることも影響して地元志向が進んでいる。かつては東京の大学か地元の大学かの進学に迷う子どもに「車を買ってあげるから地元に残って」などという親の話があったが、今はそんな話はまったくない。受験生は東京の大学を受けずに、現役で地元の大学へ進学するのが普通になってきている。

東京大も同じだ。5年前に比べて関東地方からの合格者の割合が、47.3%から56%にアップしているのだ。地方の受験生は東京大の理系に進学するより、地元国公立大医学部を目指す傾向が強まっていることも、東京大の関東ローカル化に拍車をかけている。「特に優秀な女子受験生に、この傾向が顕著」と東京大関係者は話す。地方のトップ校の生徒が言う。

「東大の理系に進学しても大学院に進学するのが当たり前で、6年間大学に通うことになりますから、かかる学費や年限は医学部と同じです。大学卒業後を考えると、医師のほうが社会的にも金銭的にも評価が高いことに加え、iPS細胞の発見など科学的な進歩も大きく、病に苦しんでいる人を助ける職業でもあり医学部に魅力を感じます」

医師不足に悩む地方では、優秀な生徒に地元国立大医学部への進学を促進しているところもある。

このように東京大ですら、地方から受験生を集めるのが大変だ。今年の合格者を見ても、首都圏の一貫校が強い結果となった。高校別ランキングトップは33年連続で開成だった。合格者数は158人で、昨年より12人減。2位は筑波大付駒場と灘がともに104人で、この3校が3ケタの合格者数だった。以下、麻布、駒場東邦、聖光学院、桜蔭と続き、ここ3年ベスト10の顔ぶれは全く一緒だ。すべて中高一貫校で、一貫校のベスト10独占は21年連続になる。

学類別に見ると、開成は理科III類以外ですべてトップ、後期試験だけのランキングでもトップだった。理科III類は灘が12人、筑波大付駒場が11人、開成は3位の8人だった。さらに、現役合格者数は開成が104人で、唯一100人超を果たした。

■面倒見のいい駒場東邦、聖光学院が躍進

今年、躍進した学校を見ると、もっとも合格者が増えたのが駒場東邦で16人増の75人で、過去最高の合格者数となり初の70人台突入となった。栄光学園が15人増の67人、久留米大付設が14人増の38人。その他では表にはないが、早稲田(東京)が14人増の26人、甲陽学院(兵庫)が13人増の24人、岡山朝日(岡山)も13人増の23人などと伸びている。

駒場東邦だけでなく過去最高の合格者数となったのが聖光学院の71人、豊島岡女子学園の33人、表にはないが攻玉社(東京)の21人などだ。

駒場東邦や聖光学院はこのところ大きく合格者を増やしている。いずれも中学入試では偏差値の高い人気校だ。上位の一貫校は放任主義で生徒の自主性に任せているところが多い中、この2校は面倒見が良いことで知られ、保護者の人気が高い。

このような一貫校の伸びに対して、改革が進む公立校では、日比谷が昨年より8人増えて37人で公立トップの14位。昨年公立トップだった浦和・県立は13人減の33人にとどまった。中高一貫生が今年初めて卒業した千葉・県立は昨年より合格者が4人減って21人にとどまった。地元塾の講師がこう話す。

「県のトップ公立高が中高一貫校になった全国初のケースで、その分、期待も大きかったのですが、東大に合格した一貫生は3人にとどまったと見られ、意外に伸びなかったのが実感です。一貫校にしたから、すぐに大学合格実績が伸びるわけではありませんから、今後に期待したいところですが、うまく育てられなかったのも事実でしょう」

東京大の関東ローカル化が進めば、ますます首都圏の一貫校の実績が伸びると見られる。16年入学者から始まる東京大の推薦入試で、地方からの合格者が増える可能性はあるが、ランキングまでには影響を与えないと見られている。一貫校の強さはまだまだ続きそうだ。

(大学通信 安田賢治=文 宇佐見利明=撮影)