ムリなものはムリと言っちゃいましょう!

3月、年度替わりの季節ですね。僕がつとめる会社も3月が年度終わりということで、この時期はかまびすしく金の話をしています。やれ予算が未達成だの、やれ減収減益だの、やれ経常利益だの僕には何のことやらサッパリわかりません。ていうか興味がありません。会社は毎月決まった額を僕に振り込むだけの関係先であり、そこがいくら儲かろうが損しようが知ったことではないのです。

それだけに「予算必達」などのお触れが出回るとストレスも大きくなります。そもそも、11ヶ月やってきた結果として到達しそうにないものを、今月ちょっと頑張ったところでどうにもならないでしょう。ま、急なバカ当たりはあるかもしれませんよ。そりゃ可能性としてはゼロではないでしょう。

しかし、ホームランはバットを振らねば出ない。ただ、バットを振るにも限界というものはあります。今から急に新商品が投入できるわけでも、右手と左手で同時に仕事をしていつもの2倍の200万パワーが出るわけでも、いつもの2倍のジャンプでそれが2倍の400万パワーになるわけでも、いつもの3倍の回転を加えることでさらに3倍の1200万パワーになるわけでもないのです。

正直、この状況は昨年の4月にはわかっていたこと。「ムリやな」と。それをゴマかしてきたことで無駄にストレスが溜まり、11ヶ月ジワジワ怒られた感じになってしまいました。ムリなものはムリと早く表明してしまうことは、やる気がないわけでも、努力を止めたわけでもありません。ムリを知ることで、無理じゃない範囲がわかる。そこまでは行こうじゃないかという現実的な目標が見えてくる。そういうものです。

そのあたりの現実路線がお見事だったのは、なでしこJAPANを率いる佐々木則夫監督。さすが世界最優秀監督にも輝いた名将です。佐々木氏は12日に行なわれたアルガルベ杯決勝で、強敵ドイツに0-3の大敗を喫するもまったく動じません。その顔に浮かぶ「ま、せやろな」という落着き。氏はこの大敗をも想定に入れ、大会に臨んでいたに違いありません。僕はそのことを改めて大会初戦を振り返ることで感じたのです。

ということで、こういう上司の下でなら仕事もやりやすいと思いつつ、12日のフジテレビ中継による「アルガルベ杯決勝 日本VSドイツ戦」をチェックしていきましょう。


◆STAP細胞様、もし再現がムリそうなら告白はお早めにお願いします!

決勝の相手ドイツ。ここまでアイスランドを5-0、中国を1-0、ノルウェーを3-1と3連勝で勝ち上がってきた強敵です。日本との対戦成績は通算で日本の1勝1分10敗。その1勝も、2011年のワールドカップで丸山桂里奈さんの人生最高のバカ当たりであげたもの。うむ、こりゃ勝てそうにありません。

それでもベストメンバーで臨むという意気込みの日本は、前半を互角に展開。ドイツに押し込まれる時間も、DF熊谷がしっかりとワールドクラスの壁となり、攻撃を跳ね返します。クロスにシャシッチが飛び込む形でヒヤッとする場面はありましたが、日本はドイツの攻撃を前半ゼロで抑えます。

↓一方、日本にはこれはもうゴールだろという惜しい場面が!


川澄の裏抜け!

大儀見の突っ込み!

澤の人間ごとゴールに押し込む勢いの殺人的スライディング!

ライン超えたかは微妙だけど、ドイツの寝てる選手がガッチリ手で抑えてますやんwwww


ラグビーならノット・リリース・ザ・ボールの反則を取られるレベルでガッチリとボールを抱え込んだミッターク。僕が澤ならその手ごと蹴って押し込むところですが、さすが世界のなでしこ、そこは小さなことにはこだわりません。

そもそも今大会はアジアカップ兼ワールドカップ予選を控え、世界の強豪との真剣勝負の中で地力をあげていこうという「調整試合」。国内リーグが開幕していない時期でもあり、日本所属の選手の大半はプレシーズンマッチレベルのコンディション。準備万端の相手に対して、まして過去にもまともに勝っていない相手に対して、勝ち切れるような状態ではない。そんな中で目先の勝利を追いかけて判定にこだわったり、まして相手ごと蹴り込んでも仕方ありません。そこで1点取っても、そんなに変わらないのですから…!

↓そして日本は後半開始1分から15分間にたてつづけに3点を取られる!



1点目:アカン
2点目:アカン
3点目:アカン

うーん、日本の左サイドがスコスコやられてるな…。

もうこんだけやられると逆に気持ちいい!


ふぅー、危ない危ない。さっきの微妙な判定に「半万年の恨み」的な猛抗議をしていたら、ちょっとカッコ悪い感じになるところでした。1点どころじゃなくスコスコスコーンと3点取られ、もはやアレがハンドでも何でもどうでもよくなりました。1点ぐらい取ってても、一緒でした!

後半頭から澤さんを下げた影響か、サイドで簡単に1対1を作られ、普通に走って振り切られる場面が続出。もう少し途中で引っ掛けるなり、助けに行ったりできればよかったのでしょうが、体力的にも精神的にもここを踏ん張るにはもう一段上のコンディションが必要だったかもしれません。まぁ、ここで負けてもワールドカップで勝てば無問題。本番だけ勝てば、それで十分です。

↓佐々木監督も「いい勉強になりました」と余裕の表情!
佐々木:「いい勉強になりましたね」

佐々木:「ホントにね、基本的なことをしっかりできたものと、ちょっとミスが多かったものとの違いだと思いますし、コンディション自体もね、シーズン中のドイツと我々の日本の選手たちはシーズン中じゃないというフィジカル的な要素、このへんも反省しながらね、次につなげていきたいと思います」

佐々木:「(前半は)まだ全体的に動けたり、判断的な要素もボケなかったということがあって、できたんだと思いますけれども」

佐々木:「後半やはりね、少し動きも止まりつつ、その過程の中でミスも多くなって、ドイツの選手たちはそのあたりしっかりとやり切った中での3点という部分だったと思いますし」

佐々木:「この辺は反省の下に、次につなげていきたいと思いますし、日本のみなさんにも3失点、0-3というものを本当に応援していただいた方に申し訳ないですけれども、次頑張るんでよろしくお願いします」

コンディション不足!

シーズン日程の差!

いい勉強になりました(ニッコリ)!


おおっ、力強い。負けた感じがまるでしないコメントと、薄っすらと笑みさえ浮かべる佐々木監督を見て、僕もホッとひと安心。ワールドカップまでの道のりはしっかりと見えており、そこから逆算した順調なステップを刻んでいることが、監督の姿勢からはビンビン伝わってきます。

もちろん佐々木監督は負けたからこう言っているわけではありません。決算期に慌てて業績不振を弁解しているわけではないのです。あらかじめ「こんなもんやろ」と思っていればこその余裕。そのことは、初戦アメリカ戦後のコメントにハッキリ表れており、まったくブレるところはありません。

↓アメリカ戦後、佐々木監督は「ムリムリ」とすでに半分白旗出しながらの大会だった!
佐々木:「(失点シーンは)もう今日、山根はよくやりましたよ。ちょっとしたアクシデントはありましたけども、きょうだいてん(※原文ママ)はあると思いますね。よく頑張りました」

佐々木:「(試合展開については)今はムリムリ。もう今は何と言っても試合期じゃないので、精一杯今日は負けないように頑張れということと、実際にミスが多いということはもう少しゲーム勘が戻ってきてない。これからです。ご期待ください。すいません」

<参考動画:ちょっとしたアクシデント>


試合期じゃない!

ちょっとしたアクシデント!

今はムリムリ(ニッコリ)!


まるでブレていない凛とした姿勢。大会初日から一貫して「ムリ」という姿勢を保ち、かつ決勝までは勝ち上がってきたというきょうだいてん(※原文ママ)の成果。最終的に完敗を喫するにしても、このブレない姿勢があれば、完敗すらも想定内のような感じで、グッと信頼感も増すというもの。

僕の会社も「今年は日本の景気自体が悪いからウチの業績もダメだろう(ニッコリ)」「消費税が上がるから来年もダメだろう(ニッコリ)」「ずーっとダメだろう(ニッコリ)」くらいの余裕をもって、春先に予算達成を諦めてくれたらどんなにカッコよく決算を発表できることか。

できそうもない目標に向かって突進するよりも、できそうな目標に向かってノンビリ突進したい。名将・佐々木のように、ムリなものはムリと早めに株主・市場に宣言してほしい。3月に積まれた「努力目標」という謎の予算項目を眺めながら、僕はそんなことを思うのでした。


「今はムリムリ」の中で世界2位なら、本番は世界一も十分狙えそうですね!