昨年、大リーグ45年ぶりの三冠王に輝いたタイガースのミゲール・カブレラ内野手の勢いが止まらない。7月12日現在、打率が3割6分7厘、本塁打30本、打点95。本塁打では35本打っているオリオールズのクリス・デービス内野手に遅れを取っているものの2部門トップ。昨年のオールスター戦までは打率が1分7厘、本塁打が9本、打点が4と一部門もトップに立っていなかったが、後半戦大爆発して、すべてひっくりかえして逆転三冠王になった男だけに、今年もと期待がかかる。

対照的に、21世紀に入り「最も三冠王に近い男」と言われ続けたアルバート・プホルスの不振は深刻だ。カージナルスからフリーエージェントでア・リーグのエンゼルスに10年2億5400万ドルで移籍したのは昨年。ナ・リーグで首位打者1回、本塁打王2回、打点王1回獲得し6度の地区優勝、2度の世界一に導いた男が、ア・リーグでも大きな期待を受けていた。しかし、序盤の低迷が尾を引いてか、打率(・285)、本塁打(30)は自己最低、打点も12年間で下から3番目(105)。33歳になった今季はよりダウンして、2割5分2厘、15本塁打、57打点。低迷するエンゼルスの元凶として今季移籍したジュシュ・ハミルトン外野手とともにメディアやファンから厳しい視線を送られている。 そんなプホルスにとって、もう一つカブレラにトップの座を譲りそうなのが、現役選手としての通算打率だ。日本プロ野球では通算4000打数以上が基準となっているが、試合数の多い米大リーグでは5000打数以上でランキングを作る。2008年以降、プホルスが僅差で追うイチロー(ヤンキース)を抑えてトップをキープしていた。昨年末でプホルス3割2分5厘、イチロー3割2分2厘、トッド・ヘルトン(ロッキーズ)3割2分、カブレラは4位の3割1分8厘だった。カブレラは7日時点で3割2分1厘0毛。3割2分0厘9毛のプホルスを一時的に抜いた。だが、その後再びプホルスが抜き返し、12日現在はプホルスが3割2分1厘1毛、カブレラ3割2分1厘0毛、イチロー3割2分0厘6毛。ミクロの争いになっている。 日本プロ野球では1973、74年、読売ジャイアンツの王貞治、1985、86年にロッテオリオンズの落合博満ランディ・バースの3人が2年連続三冠王に輝いているが、長い歴史を誇る米大リーグでは1人もいないだけでなく、翌年2つのタイトルを獲得した選手もいない。通算打率争いに、夢の2年連続三冠王。去年に引き続き、カブレラの打棒がペナントレース同様に後半戦の注目。そして、プホルス、はたまたイチローが先輩の意地を見せるのだろうか楽しみである。