2月24日、WBCカナダ・チームのロースターに入っていたラッセル・マーティンが、出場しないことを決めた。mlb.comのトム・シンガーが報じた。

 理由は捕手以外のポジションを守らせてくれないからだという。マーティンは11月下旬に、遊撃手としてWBCに出たいという気持ちを明かしていた。こちらについては、ニューヨーク・タイムズ紙のデビッド・ウォルドスタインが書いている。

 マーティンがメジャーリーグで遊撃を守ったことはない。だが、プロ入り前のマーティンは内野手だった。オジー・スミスに憧れ、遊撃と三塁を守っていたという。プロ1年目にはルーキーリーグで41試合に出て、うち40試合で三塁、1試合で遊撃を守っている。捕手に転向したのは翌年の2003年からだ。

 マーティンはメジャーリーグでも、内野守備についたことがある。2011年には、三塁手に加えて二塁手としても出場している。過去2年間を過ごしたニューヨーク・ヤンキースでは、試合前の打撃練習にデレク・ジーターらとともに遊撃を守っていたこともある。

 ウォルドスタインの記事はこう締めくくられている。

――WBCで遊撃を守ることについて、所属球団が望まないのであれば(注:この時点のマーティンはFAだった)聞き入れる用意はあるとマーティンは語っているが、その心配はしていないという。彼は言う。「捕手よりも危険は少ないからね」

 だが、この記事の数日後に2年1700万ドルでマーティンと契約したピッツバーグ・パイレーツは、そうは思わなかったらしい。また、カナダ・チームも難色を示したという。

 こうして、マーティンの遊撃出場とともに、マーティンのWBC出場も消えた。

 日本であれば、きっと大問題になっていただろう。本職ではないポジションを守りたいと言い出すこともあり得ないだろうが、その希望が叶えられないから出場を辞退するなんて。

 あくまでマーティンの話であって、このことでメジャーリーガーのWBCに対する本気度を云々するつもりはない。だが、個人的には、遊撃を守るマーティンを見たかった。

 開幕前からこんなことを言ってはパイレーツに申し訳ないが、もし、21年連続シーズン負け越しが確定したら、その時には、マーティンを遊撃手として出場させてもらえないだろうか。