家電量販店が、仁義なきサバイバル戦争に突入する。
 特需をあおった「家電エコポイント制度」と「地上デジタル放送への完全移行」が終了したのに伴い、各社は大幅な減収減益で悲鳴を上げているのだ。結果「食うか、食われるか。生存競争が熾烈を極め、再編の大嵐が吹き荒れる」と関係者は顔を曇らせている。

 数字は非情である。昨年9月中間期に、各社は揃って過去最高益を更新した。ところが、このほど出揃った同4〜12月決算の売上高は、前年同期比でヤマダ電機14%減、エディオン15%減、ケーズホールディングス6%減、コジマ16%減…と惨憺たる内容。経常利益も一転して大幅減益が相次いでおり、地デジ移行が昨年7月だったことを勘案すると、8月以降はまさに“土砂降り”の様相だったことが窺える。
 深刻なのは、これが今後とも続きそうなことだ。
 昨年の国内家電販売市場は特需の先取り効果があったにもかかわらず、業界推定で前年比1割減の約8兆5000億円だった。テレビはもちろん、冷蔵庫やデジタルカメラなども大きな落ち込みを見せた。
 2012年の市場規模は「前年比5%程度縮小する」との見方が有力だが、日本政策投資銀行のように「4兆5000億円規模」と極めてシビアな数字を算出しているケースもある。どの道、昨年前半まで快進撃を続け、わが世の春を謳歌してきた家電量販店各社が、厳しい現実に直面している図式に変わりはない。

 それを象徴するのが、どうにも止まらなくなってきた薄型テレビの価格破壊だ。
 「東京都心部の店舗では2月に入って40型の大画面で実勢価格3万円台の機種が登場している。1インチ当り1000円を切っており、実に5年前の4分の1の水準まで下落している。地デジ以降後に需要がガタ減りし、そうまでしなければ見向きもされなくなってきたということ。パナソニック、ソニーなどが、テレビ事業の大不振で大赤字を垂れ流すわけです」(経済記者)

 とはいえ、記録的な赤字決算で悲鳴を上げる家電メーカーにとって、ヤマダ電機などに代表される家電量販店の卓越した販売力は魅力である。たとえ少々買い叩かれたところで、在庫を一掃できれば収益に寄与するし、蜜月関係を継続すれば何かと好都合だ。経済記者が続ける。
 「家電量販店にせよ家電メーカーにせよ、大半は3月決算です。ということは期末決算を目前にして双方の利害が一致する。だから家電メーカーは少しでも数字を上げようと量販店に猛アタックすれば、その足元を見透かした量販店は極力買い叩こうとする。一方、量販店もライバルの動向に神経質となり、対抗値下げは当たり前。結果、家電メーカーから散々買い叩いて仕入れた商品の叩き売りに走る。この3月は、史上空前の大安売りが期待できると思います」